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第33話 達也サイド<マネージャーの衝撃>
翌朝、佐々木さんが迎えに来てくれた。
事務所に呼ばれたそうだ。
ああ、あの件か……。
そう思うだけで、心が潰れそうになった。
場所は社長室。理事も同席している。
「達也ね、副社長から聞いている?」
理事の問いに、俺はただ頷くことしかできない。
「え? 理事、何の話ですか?」
佐々木マネージャーが怪訝そうな声を上げる。
理事が昨日の副社長との経緯をすべて話すと、
マネージャーは愕然として言葉を失った。
申し訳なくて、顔を上げることができない。
俺はマネージャーを裏切ったのだ。
「達也、今の話は本当なの?」
「はい……本当に、申し訳ありません」
マネージャーは椅子からひっくり返らんばかりに驚いていた。
「ちょっと信じられません。だって、まだ数回しか会っていないはずですよ!」
「あのね、最初に動画を見た時に直感したんだって。
それで実際に会った時に、匂いで運命だと分かったらしいよ。
ただ、達也は緊張で匂いに気づかなかったらしいんだけど、
帰りの車で気づいてもらえた、というのが副社長の話だった」
桐生社長がそう説明すると、マネージャーは呆然とした声で言った。
「……たったそれだけの事ですか?」
そうだよね。誰だってそう思うに決まっている。
マネージャーはまじまじと俺の顔を見た。
「匂いって、そんなに分かるものなの?」
「俺も最初は気づかなかったし、副社長の顔すら見られなくて……。
でも、本社の帰りの車中で、
『倒れていたんだから横になりなさい』って言われて、
頭を膝に乗せてくれたんです。その時に、匂いで分かりました」
チラッと理事と社長を見ると、二人とも深いため息をついて天を仰いでいた。
「はぁ……って感じだよね。
でも運命だって向こうが言うんだから、こっちはお手上げだよ。
オメガバースの遺伝子を持っている人の感覚なんて、
俺たちには分かりようがないしね」
社長はそう切り出すと、表情を改めた。
「そういうわけで、佐々木さん。もうすぐCMが流れます。
万が一、副社長の強敵と言われている叔父さんがスキャンダルを仕掛けてきたとしても、副社長の配慮のおかげで最大限の防備は固めました。だからそんなに心配しなくていい」
その時、社長の携帯が鳴った。
通話を終えた社長が、口元を緩める。
「それと副社長が達也にSPを2名つけたそうです。
移動も警備会社の車に変更になるし、24時間体制の警護だね。
万が一のことを考えてのことらしい。達也も愛されてるね」
「えっ、私もその車に乗っていいんですか?」
「はい、二人で乗ってください。
マネージャーが一人だけだと死角ができるらしく、結局は警護2名体制になったそうです」
「はぁ……」
マネージャーは完全に呆然としていた。
「歴史始まって以来ですよね……」
桐生社長はニヤリと笑い、マネージャーをからかっている。
俺はこれから、一体どうなってしまうんだろう。
考えてもしょうがない。
なるようになるさ。
「それと達也。新曲を5曲注文している。
そのうちの2曲は早くも完成したよ。
森戸由貴さんと木内真亜子さんのコンビだから、期待してていい。
トレーナーにも渡してあるから、早速練習を開始してください。
CMが放映されると一気に人気が出ると思うから、MV撮影も控えているし、演奏会でも歌うことになる。しっかり頼むよ」
「はい、分かりました。頑張ります」
俺は神妙にそう答えた。
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