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第41話 透真サイド<記者会見>
北原先生の話では、達也の記憶障害は、ショックによる一時的な記憶喪失か、
あるいは使用された麻酔薬による後遺症のどちらかだそうだ。
一般人が麻酔薬を手に入れられるはずがない。
あるいは、海外製の質の悪い輸入品であれば、重篤な後遺症もあり得るという。
それを聞いた時は、絶望的な気持ちになった。
その後、理事や桐生社長が診察室に入室してくれた。
北原先生と相談の上、診断書を作成して警察へ捜査依頼を出し、血液検査をすることになった。
麻酔薬の成分を特定できれば、そこから輸入ルートや入手先を突き止め、犯人を特定できる可能性がある。
すぐさま達也を連れて警察へ行き、被害届と診断書を提出した。
警察での血液検査結果が出るまで二週間から三週間かかるという。
捜査をしてもらえることになっただけでも、一歩前進だ。
理事と桐生社長はテレビ局に対し、局名を伏せた上で記者会見を行う旨を伝えたそうだ。
局側は困惑していたらしいが、致し方ない。
これはれっきとした犯罪なのだから。
そして翌日の十一時。
浅田タワーのイベントホールで記者会見が開かれることになった。
出席者は桐生社長、浅田理事、俺、そして代理店の柳瀬部長。
事務所が手配したマスコミ関係者は、主要なメディアのほとんどが顔を揃えていた。
恐らく、うちの会社が大手スポンサーだからだろう。
発売されたばかりの高級新車の顔である達也が、
事件に巻き込まれたとなれば、注目度も高い。
会見では、桐生社長が毅然と発表を始めた。
*
「本日はご多忙の折、お集まりいただき誠にありがとうございます。
吉沢達也の所属事務所、代表の桐生でございます。
皆様に、弊社のタレントである吉沢達也に関する重大なご報告がございます。
昨日、都内の撮影スタジオにおきまして、吉沢達也が撮影の合間に、第三者から有害な薬剤を吸引させられるという悪質な被害に遭いました。
本人は現在、この事件の影響による一時的な記憶障害と体調不良を訴えており、専門医の指導のもと、懸命な治療と静養を続けております。
現在、この件につきましては警察に被害届を提出し、捜査が開始されております。
本事案は、断じて許されない犯罪行為であり、弊社としては断固とした姿勢で真相究明に臨む所存です。
なお、詳細な場所や状況につきましては、
現在捜査中のため公表を差し控えさせていただきますが、
撮影スタジオという管理された空間において、このような事態が発生したことについては、
大変遺憾に思っております。
本日同席しておりますスポンサー様をはじめ、
関係各所の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、
心よりお詫び申し上げます。
吉沢は現在、心身の回復を最優先としております。
皆様におかれましては、本人のプライバシーならびに静養環境の確保に、
ご理解とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます」
内心、拍手喝采だった。
桐生社長の見事な言葉には揺るぎない覚悟が宿っていた。
だが、安堵したのも束の間、
この後には十五分間の質疑応答が待ち構えていた。
それが、何よりも怖かった。
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