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第42話 透真サイド<質疑応答>
司会者「では続きまして、質疑応答に入らせていただきます。
約15分間を予定しております。それではどうぞ」
会場では一斉に手が挙がった。
約40名のマスコミ関係者やカメラマンが、ギラついた眼差しで我々を見つめている。
某テレビ局の記者が手を挙げた。
「なぜ、撮影スタジオ名を公表しないのですか?」
(……他人事だと思って)
桐生社長は表情を崩さず、冷静に答えた。
「現在、警察の捜査が進行中でございます。
捜査の進捗に影響を与えないため、現段階での場所の特定は控えさせていただきます。
しかし、管理責任の所在については警察とともに徹底的な調査を行っております」
続いて別のTV局レポーターが叫ぶ。
「薬物の種類や出所については分かっているんですか?」
桐生社長は即座に切り返す。
「その点につきましても、警察の捜査結果を待っている段階です。
決して許されることではないため、厳正な処分を望んでおります」
某女性週刊誌の記者が食い下がる。
「達也さんはいつ仕事に戻れるんですか?」
今度は浅田理事がマイクを手に取った。
「現在は医師の指導のもと、心身の安静を最優先にしております。
記憶の回復を含め早期の復帰を目指しております。
しかしながら、焦らせることなく彼が万全の状態でステージに立てるよう、事務所としても全力でサポートしていく所存です」
某芸能新聞社「達也さんを狙った個人的な恨みではないのですか?」
(絶対これを聞くやつがいると思っていた!)
桐生社長は毅然と言い切った。
「そのような事実があるかどうかを含め、警察に全ての情報を託しております。
特定の誰かを疑うようなことはせず、客観的な事実に基づいた捜査の結果を待ちます」
最後に某スポーツ紙の記者が、挑発的な口調で問うた。
「車会社のイメージをダウンさせようということは、考えられないんですか?」
(頭に血が上った。会場だって空気が凍りついた)
桐生社長は目を細め、威圧感さえ漂う声音で応じた。
「吉沢はあくまで犯罪の被害者です。
スポンサーを巻き込んで事件性を煽るような憶測は、慎んでいただきたい。
捜査の進展を待つ――それ以外の回答はございません」
桐生社長が司会者に軽く頷く。
司会者「では最後に、桐生社長よりご挨拶がございます」
桐生「本日はお集まりいただきましてありがとうございました。
今後も皆様に素晴らしいエンターテインメントを届けられるよう、まずは吉沢達也の回復に努めます。
どうぞ温かく見守っていただけますように、よろしくお願いいたします」
司会者「ではこれにて記者会見を終了いたします。皆様、どうもありがとうございました」
*
会見後、アニメプラスの会議室へ戻った。
「皆さん、お疲れさまでした」と桐生社長。
「こちらこそ、理事も桐生社長も立派でした。
助かりました。本当にありがとうございます」と俺が頭を下げる。
「いや~、緊張しましたねえ。
でも、達也さんも本当に大事にされてますねえ」と柳瀬部長が安堵の表情を見せた。
ふ、と笑みがこぼれる。
スタッフが淹れてくれたアイスコーヒーが、火照った喉を冷やした。
「それで、警察の方は何と言っているのですか?」
柳瀬部長の問いに、理事が答える。
「薬剤の成分が特定できない限り、入手経路の割り出しは難しいとのことです。
結果が出るまでには2週間から3週間かかると言われました。
ですが、こうして公式に記者会見を開いたことで、犯人側は相当焦っているはずです」
「まあ、その間に何人かに対して捜査の網は回るでしょう。期待したいところです」と俺。
実は、柳瀬部長が同席している手前、詳細は伏せていたことがある。
俺は社内で失脚を狙っている叔父の存在と、
婚約を強引に推し進める銀行頭取の存在を警察に伝えていた。
特に叔父に関しては、過去の会計不正の数々も証拠として提出済みだ。
桐生社長は、かつてヴォクシブが過酷な労働を強いられ、裁判沙汰になった過去を持つ者として、引き取ったアニメプラスに根深い恨みを持つオリオンミュージックの黒田社長が、今回の事件の黒幕として最も怪しいと見ている。
テレビ局の廊下で対峙した際の黒田の言動も、すべて警察に伝えてあった。
「なるほど……確かにそいつが一番怪しいですね」
刑事の言葉に、俺は深く頷く。
さらに、強引な婚約の件についても、銀行頭取が叔父と裏で結託していないか、
興信所で徹底的に調べている最中であることを明かした。
「結構、混み入った案件になりそうですね。
とにかく我々の方でも徹底的に捜査しますので、お任せください」
刑事の力強い言葉に、今はただ彼らを信じて待つしかないと、自分に言い聞かせた。
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