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第48話 夏輝サイド<面接と実技>

 松永副社長が推薦してくれた、イラストレーターの三好雄二さんが来てくれた。 副社長のお薦めだから、変な人は来ないだろうと思っていたが、 実際は真面目そうで、恐縮しきっている控えめな人だった。 シャイなのかな。 「初めまして。三好雄二と申します。この度はお時間をいただきありがとうございます。 どうぞよろしくお願いします」 「こちらこそ宜しくお願いします。理事の浅田夏輝です。こちらはアニメプラスの桐生社長です」 律義に松永副社長も同席し、うちのスタッフの藤堂さんや、アニメ・ゲーム関連のスタッフも揃った。 どんな実力なんだろうと、皆が興味津々の様子だ。 履歴書に目を通す。 「M美大を出られたんですねえ。最初からイラストがご希望だったんですか?」と桐生さんが尋ねる。 「いえ、恥ずかしながら、元々は画家を目指していました。 しかし、数年で生活できないことに気づいて……イラストに変更しました」 「イラストでどんなことを実現したいんですか?」 「……仕事として取り組んでいるので、相手が望むことを最大限に形にできたらいいと思っています。仕事に自分の考えを押しつけていいのかどうか……正直、そこまでは分かりません」 「最近注目しているデザインや技術、または表現手法はありますか?」 これは俺の質問だが、どれだけアンテナを張っているかを聞きたかった。 彼はしばらく考えてから口を開いた。 「はい。私はもともと画家を目指しており、古典的な絵画の構成や光の捉え方を学んできました。 現在はその『絵画的な奥深さ』を、現代のデジタルイラストのトレンドと融合させることに注力しています。 ただ綺麗に描くのではなく、見る人の視線を誘導し、物語を感じさせるライティング技術を取り入れることで、SNS等でも一目で手を止めてもらえるような『説得力のある一枚』を目指しています。 私の画家としての学びを、今の時代に求められるスピーディーな制作現場でも活かし、貴社の作品に他にはない深みを加えられたらうれしく思います」 「ほう……それは中々楽しみですね」 「では実技テストに移ります。このプリントに課題があります。 あなたの自由な解釈でいいのでやってみてください。制限時間は1時間です」 全員で部屋を退出する。 1時間じゃ難しいんじゃないの、と俺は思ったが、桐生さんは「当然でしょう?」と余裕だった。 課題(制限時間60分) 『古びた書斎』という設定で、そこに『魔法の杖』が置かれている様子を、三好さんの考える『物語を感じさせる光の演出』でラフスケッチすること。 実技試験には、最新のペンタブレットと制作ソフトがセットアップされたPCが用意されていた。 彼はしばらく思案していたが、やがてペンを手に取った。 どんどん描かれていく過程を、モニター越しにそれとなく見ていた。 やがて「出来ました」の声がかかり、少し席を外してもらって皆で検討に入る。 「桐生さん、どうですか?」と熱心に見ている彼に声を掛けた。 「彼は、修正(消しては描き直す)をほとんどしませんでしたね。 まるで頭の中にある完璧な構図を、そのまま転写していくような速さでしたよ」 「あ、そうそう、それに彼って色塗りの手際がすごく良かったですよね?」と藤堂さん。 「うん。それに絵画的な質感があったんだよね。何層にも色を重ねていて。 これは誰もやってないやり方だね」と俺。 「桐生さん。どうしますか?」 「そりゃあ、良いんじゃないですか? どんどん彼のやり方で新風を吹き込んでもらいますよ」 それで、三好さんを呼び戻した。 「では、桐生社長から結果を発表します」桐生さんがニヤリと笑った。 「はい。厳正なる審査の結果……採用です」 「ええーっ! 本当ですか!? 私、本当に正社員になれるんですか……ありがとうございます。本当に信じられないです。感謝でいっぱいです!」 両手を頬に当てて、喜びが爆発していた。彼は感極まって涙ぐんでいる。 そんな彼を皆が微笑んで見つめていた。 「では契約についてお話ししましょう。良いですか?」 言葉にならないようで、彼はただ大きく頷いた。 「三好さん、本当におめでとう。僕もすごくうれしいです」 松永副社長が心底喜んで、彼と固く握手を交わしていた。 これで双方とも、ようやく結婚ができますね。

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