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第49話 透真サイド<秘密裏の決行>
三好さんが就職できたとゆりさんに伝えると、彼女はしばらく絶句していた。
言葉が出なかったのだろうか。
「三好さんがゆずちゃんに会いたいそうです。お会いになったらいいじゃないですか。
新しい仕事先では、無料の寮としてマンションを用意してくれるそうです。
ぜひ引っ越しを手伝ってあげてください」
「……でも、父が何と言うか……」
「分かりました。あとで連絡します。
多分、弁護士を用意できると思うので、今は実印をバッグに入れて待っていてください。
準備が整い次第こちらから呼び出しますので、すぐに動けるようにしておいてください」
「はい、分かりました。本当にありがとうございました。うれしいです」
電話を切ると、すぐに父へ事の次第を説明した。
「ほう、瓢箪から駒だな」
父はふっと笑った。
「それで、法的に整えるために口の堅い弁護士を一人貸してください。
まず向こうの女性と子供の父親との婚姻届を出してもらいます。
翌日、俺は達也と入籍したいんです」
「急ぐ理由は、彼が先日仕事中に狙われたからです。
麻酔薬を嗅がされて、今は一時的に記憶を失い、後遺症で臥せっています。
その犯人が叔父かどうかの確証はありませんが、
また何かされるのではないかというタイムラグが怖いのです。
良いでしょうか?」
「……そうか、気の毒にな。分かった、弁護士を送る。どこに行かせればいい?」
「赤坂の浅田タワー九階に、アニメプラスという音楽事務所があります。
そこに直行させてください。事務所の社長や理事に報告しなければなりませんので」
「うん、分かった。相手の親御さんには事前に電話くらいはしておけよ」
「はい、ありがとうございます、父さん」
電話を切ったあと、ゆりさんに10時に実印を持ってアニメプラスへ来るよう連絡した。
うまくいくかどうかは不安だが、今はやるしかない。
俺は代理店との打ち合わせという名目で午前中の予定を空け、もちろん柳瀬部長には協力要請のメールを送っておいた。
理事へ事前の電話を入れてから、
アニメプラスの事務所へ向かった。社長室に通される。
「どうされましたか?」
社長に問いかけられ、僕は切り出した。
「いよいよ決行の時が来ました。
父に頼んで、弁護士をこちらへ寄こしてもらう手はずを整えました。
申し訳ないのですが、少し場所を貸していただけませんか?
まずは彼女と三好さんの婚姻届を提出してもらうつもりです。
昨日、三好さんには話しておきました。
今日、ここへ十時に来てくれるはずです。
そして明日は、私と達也の婚姻届を出したいのですが、いいでしょうか?」
「は? もうですか?」と社長が驚く。
「そうです。すみませんが、達也の事件は叔父が指示したものかもしれないのです。
このままだと次は何をされるか分かりません。
ましてや、もし女性側が既に結婚していたと知れば、
今度は達也に被害が及ぶのではないかと危惧しています」
「うわあ……達也も大変だな」と理事が顔を曇らせる。
「はい。父からも了解を得ました。
あとは三好さんたちに今日、入籍してもらうだけです」
「分りました。どうぞ会議室をお使い下さい。
話がまとまったら立ち会うので呼んでください」と桐生社長が言ってくれた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
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