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第50話 透真サイド<法務部の弁護士>
十時前、三好さんが到着し、続いてゆりさんもやってきた。
会議室で顔を合わせた二人。
ゆりさんの目に、じわりと涙が溢れる。
「お久しぶりです。来てくれてありがとう」
三好さんはゆりさんの手を取った。
静かな再会だった。
「ゆずは葉山の幼稚園に行っているので、今日は連れて来られなかったの」
「いいよ。あとで会えればいいから」
そこへ、父に頼んでいた弁護士が到着した。
「初めまして。法務部長で弁護士の加藤と申します。
どうぞよろしくお願いします」
俺は加藤部長に、その場にいる皆を紹介した。
「私がお役に立てることがありますか?」と加藤さんが尋ねる。
「父から聞いていらっしゃいますか?」と俺。
「まあ、大筋は伺っていますが、
詳細はご本人から聞いてくれとのことでした」
「実はこちらの二人の婚姻届を、至急提出していただきたいのです。
秘密裏に行動する必要があります。
そして明日には、私と婚約者である彼が入籍するための婚姻届も、
提出しなければなりません。父には承諾を得ています」
「ほう、なるほど。特にどなたから隠したい案件でしょうか?」
「察しはつくかと思いますが、叔父です。
それから、取引先銀行の頭取ですね。
二人は私に政略結婚を強要しました。
しかも頭取は、ゆりさんに子供がいることを隠して結婚すればいい、と吹き込んだそうです。
すべて叔父が仕組んだことでした」
「なるほど。三好さんはこれまで、どのような状況だったのですか?」
「結婚を申し込みに行った際、収入が少ないと反対され、諦めてしまいました。
イラストレーターなのですが、なかなか芽が出ず苦戦していたのです。
それから数年経ちますが、松永さんがゆりさんと子供の話を教えてくれて、仕事まで紹介してくださったのです。これでようやく生活の目処が立ちます」と三好さん。
「ほう、こう言っては失礼かもしれませんが、うまく進みましたね」
加藤さんがニヤリと笑った。
「お陰様で。理事にも桐生社長にも大変お世話になりました」
「では、先に婚姻届を記入してもらいましょうか。
証人はどなたになさいますか?」と加藤さん。
理事と桐生社長が手を挙げてくれた。
「はい、用紙を用意しました。先にお二人とも記入をお願いします」
四人で書類を整え、準備ができた。
「では、提出に行ってまいります。
お二人も一緒に行っていただけますか?」と加藤さん。
「はい」
「それでは、私の車で送迎します。
途中で邪魔が入るといけませんから。
三好さんとゆりさんは先導車に乗ってください。
私は加藤さんと後続車に乗ります」と理事
「理事、本当にありがとうございます。感謝します。
桐生社長もありがとうございます」
ありがたくて、言葉が見つからない……。
俺は一旦部屋に戻り、達也と過ごした。
「どうしたの? 今日は仕事しなくて良かったの?」
「今日は運命の日だからね。今、婚約者の女性が子供の父親と役所へ向かっているんだ。
父に成り行きを話したら、会社から弁護士を送ってくれた。
正式に彼らの婚姻届が受理されたら、明日、俺たちの婚姻届を出すよ。
だから、達也を育ててくれた人と、事前に話しておいた方がいいと思って」
「ああ、そうだね。ありがとう……でも、どうしようかな」
達也はしばらく考えていた。
「どうしたの? 何か差し障りがあるの?」
「あのね、できれば言いたくないんだ」
「どうして? 理由を聞かせて」
「あまり俺のことに関心がないみたいなんだ。
向こうも子供が二人いて大変だし……だから、あえて知らせなくていいと思う」
「そうか……達也がそう言うなら、そうするよ。でも、あとで揉めない?」
「ううん、たぶん気づかないと思う。
荷物だって全部この部屋に運んでくれたしね」
「でも、入籍したら明日中には広まってしまうよ。
会社としても発表するし、アニメプラスのHPにも掲載される。
車のCMに出ているんだから、ご家族が知らないはずはないと思うけれど、それでもいいの?」
「うーん……じゃあ、俺から電話だけしておくよ。明日の夜でいいよね?」
「その辺は達也に任せるよ。でも、俺から挨拶をした方がいいなら、いつでも言ってほしい」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
なんか、引っかかる。
すぐ調べようと思った。
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