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第51話 透真サイド<興信所の結果>
その後、俺はまたアニメプラスの事務所へ向かった。
「桐生さん、お願いがあるのですが、達也の前の住所は分かりますか?
その家の方の名前も分かると助かるんですが」
「はい。最初の履歴書を見れば分かりますよ。ちょっと待ってください」
桐生さんは履歴書をコピーしてくれた。
「一体、どうしたんですか?」
「達也に、育ての親に電話して挨拶をしたいと言ったら、しなくていいと言うんです。
向こうが自分に関心を持っていないからだそうで……。
でも、おかしいですよね。何か事情があるはずです。
後でトラブルになっても困るので、調べておこうと思いまして」
「ああ、それは調べた方がいいですね。
達也の事件はテレビのニュースでも取り上げられていますから、知らないはずはないでしょう。
何か訳があるのでしょうね」
俺は興信所に電話をかけ、至急の調査を依頼した。
なんだか気が重い。
明日、このまま婚姻届を出して良いものだろうか。
俺の行動が、結果的に達也に厄介事を招かないだろうか。
そうこうするうちに、弁護士と三好さん達が戻ってきた。
「ご結婚、おめでとうございます」
真っ先に声をかけると、二人はとても嬉しそうな表情を浮かべた。
「本当に皆さんにはお世話になりました。ありがとうございました」
三好さんが深々と頭を下げる。
「では、婚姻届の受理証明書はありますか?
すぐに扶養家族や福利厚生の手続きをしますよ」
理事がそう言って、彼らを別室へと案内した。
「では副社長、明日の話をしましょうか」と加藤弁護士。
「はい。では達也を連れてくるので、少々待っていてください」
佐々木マネージャーに電話を入れ、
車椅子で達也を連れてきてもらうよう頼んだ。
ほどなくして、達也が部屋に現れた。
「紹介します。婚約者の達也です」
「初めまして、吉沢達也です。副社長には大変お世話になっています」
「具合はどうですか? 明日、婚姻届を出しますからね。用紙に記入をお願いします」
俺と達也が交互に署名していく。
理事と桐生さんが、再び証人になってくれた。
「では桐生社長、念のためにこの用紙は、こちらの事務所の金庫で預かっておいていただけますか?
私は持ち帰らない方が安全でしょう」
加藤弁護士の機転に感謝する。
桐生さんは快く引き受けてくれた。
その後、弁護士は会社へ戻り、俺は興信所の報告を待った。
そして夕刻、興信所から連絡が入った。
「……実はですね、あまり良くない状況のようです。
近隣の方の話では、叔母さんは途中で離婚してシングルマザーになったそうです。
自分にも二人の子供がおり、達也さんが負担だったのでしょう。
達也さんは十三歳の時から高校卒業まで、新聞配達をしていたそうです。
時間は放課後から20時までと、あとは土日や夏休みも夕刊配達や日中のチラシ折りを続けていたそうです」
「え……十三歳からですか?」
衝撃だった。まだ子供じゃないか。
俺はすぐに弁護士を呼び戻した。
叔母は夕方には帰宅しているとのことで、弁護士と一緒に直接話をすることにした。
行くまでに銀行で現金を下ろし、持参の封筒へ入れた。
「一体、どうしたのですか?」と加藤弁護士が尋ねる。
「実は達也が、結婚のことを育ての叔母さんに伝えたがらないんです。
不審に思って調べさせたら、叔母さんはシングルマザーとして苦労していて、
達也も十三歳から六年間も放課後や、土日や夏休みなど20時まで夕刊の配達やチラシ折りをしていたことが分かりました。
……叔母さんは自分に関心がないと言ってましたが、いずれ世間に広まれば知るところとなります。それなら、今のうちにお金を渡してけじめをつけておきたいんです」
「なるほど、確かにそうです。
今後のためにも一筆書いてもらうのが賢明でしょう。
受取書と誓約書を用意します」
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