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第56話 達也サイド<ペントハウス>

 翌日、透真さんが自宅のマンションに連れて行ってくれた。 もうワクワクで、どうしようもなかった。 場所は千代田区。皇居の近くだ。 「透真さん、なんでここにしたの?」 「多分、23区の中ではここが一番安全だと思うんだ。 地盤も少し高いから、水害があってもここは守られてるよ」 「へえ~そうなんだ。じゃあ、まるでお殿様の生活だね?」 透真さんがクスリと笑った。 「どうかな。でもこの辺はパトカーも頻繁に行き来しているしね。 こんなところで騒ぎを起こす人はまずいないと思う」 「だよね~」 ごもっともです。 車は瀟洒(しょうしゃ)なマンションに到着し、地下の駐車場に入った。 「この地下駐車場も、許可された人しか入れないから安全だよ」 「知らない人が来たらどうするの?」 「監視カメラから管理室に繋がるから、そこで会話ができるんだ。 それに外にも駐車場があるから、来客はそっちに案内することになるよ」 「へえ~鉄壁だね」 「でしょう?」 透真さんがフロントのコンシェルジェに「妻を紹介します」と一声掛けると、 奥の事務所から他のスタッフも数人出て来た。 「この度結婚しました。彼が妻の達也です。よろしくお願いしますね」 「ああ、そうなんですね。おめでとうございまーす!」 一斉に声を揃えて笑顔でお祝いの言葉をくれた。 ちょっと照れた。 だって、透真さんが手を放さないんだもん。 そして直通エレベーターで、一気に最上階のペントハウスへ。 屋上の入り口ではSPさんが控え、透真さんと軽く言葉を交わしていた。 「ねえ、SPさんはどこに待機するの?」 「そこを出たら、すぐ横に待機所を作ってあるんだよ。 エレベーターもSPの指紋で動くんだ」 「ただね。屋上の回りの鉄柵に触ったらいけないよ。 大きな警報が鳴り響くからさ。警察が飛んでくるよ」 「え?……」 「さあ、入ろう」 大きな玄関扉を開けると、ぱーっと開放的な室内と外の景色が広がった。 「何これ?こんな玄関あるの?」 窓が大きいせいか、まるでサンルームのように明るく、色とりどりの鉢植えの花が飾られていてきれいだった。 透真さんが微笑む。 「気に入った?」 思わず、うんうんと頷いた。 今日は車いすも用意してくれていたけど、 透真さんに腕を組んでもらい、車から自力で歩いてきた。 部屋の中には、中年の笑顔の素敵な女性がいた。 「こちらは家政婦の美代さんだよ」 紹介された。 「初めまして。透真さんと結婚した達也です。 どうぞよろしくお願いします」 「家政婦の美代です。ご結婚おめでとうございます。 どうぞよろしくお願いいたします」 「お坊ちゃま、お美しい奥様ですねえ」 「ちょっと、美代さん。もうお坊ちゃまはやめようよ」 ププと笑ってしまう。 「俺も呼ぼうかなあ?」 「こら、達也。からかわないの」彼が照れていた。 その後、家中を案内してもらった。 ……あれ?一体何部屋あるんだっけ? やたらに広い。トイレだけで三つあった。 「ここの広さはどれくらいあるの?」 「うーん、室内だけで150坪かな。 外はガーデンテラスになっていて、フロア全部を使っているよ」 「フロア全部」の意味はちょっとよく分からなかった。 あまりに広すぎて、一度には覚えきれないや。 「お茶をどうぞ」 美代さんがダイニングに紅茶とケーキを運んできてくれた。 ケーキといっても、シャーベットやフルーツも一緒に美しく盛り付けられていて、とてもおしゃれだ。 豪華すぎる。毎日フルコースなのかな? こんなのを食べているの? 「達也、食べよう。美代さんのケーキは美味しいんだよ」 「はい、いただきます」 一口食べると、すっごく美味しかった。 「こんなに美味しいケーキ、生まれて初めて!」 「そうですか?良かった。これは底にザラメを敷いてあるんですよ。 少しポルトガルの家庭風にしてみたんです」と美代さん。 「はあ、そうなんですねえ」 ポルトガル風と言われても全然わからなかったけれど、とにかく美味しい。 こんなの、外のお店でも売っていないんじゃないの? わ~、贅沢だよ。 もうホテルに戻りたくない……どうしよう。 「達也、食べたら少し休んだ方がいいよ」 「はい。そうします」 「美代さん、達也はまだ療養中だから、よろしくね」 「はい、かしこまりました」 そして連れて行ってもらった寝室。 そこには素敵な洗面所とバスルーム、その横にはトイレもあった。 イタリア製のタイルが張ってあるんだって。 なんだか、気分はもうイタリアだ。 「透真さん、俺もうホテルに帰りたくない。ここにずっといたら駄目かな?」 「うーん、どうかなあ。もう少し様子を見ようよ。 でも、結婚休暇が終わるまではここにいようか?」 「はい!」 嬉しくて、とりあえず歯磨きをした。 「着替えた方がいいよ。クローゼットに入っているから」 促されてクローゼットを開けると、パジャマやガウン、 バスローブ、普段着が並んでいた。 下着も一揃い、新しいものが用意してある。 「ねえ、どれを使ったらいいの?」 「うん、そこにあるのは全部達也のだよ。美代さんに買ってきてもらったんだ」 「えー、そうなの?贅沢すぎるよ」 「達也は俺の奥さんなんだから良いの。どんどん使って」 「はい……」 こういう時の俺は素直だ。 奥さんだって……ククク。

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