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第60話 透真サイド<情熱と才能>
アニメプラスに相談に行ったことがすごく良かった。
達也はやや元気を取り戻していたが、
それでもまだ落ち込んでいるようだった。
抱き寄せようとしても、そっと離れてしまう。
寝室で横になっていた達也。
まだ呆然としている。
「ねえ、達也、少し話をしてもいい?」
ベッドに入って達也を後ろから抱きしめた。
「達也は小さい頃に両親を亡くして、叔母さんに育てられたんだよね。
そして13歳から6年間、新聞配達をしていたって聞いたよ。
毎日放課後は夜8時まで仕事していたの?
土日や夏休みも午後からチラシを折ったりの仕事をしていたんでしょう?
まだ子供だったのにね。
ごめんね。俺には想像も出来ないよ。
せっかく高校を出て学校が終わったのに、
また勉強してって言ったから絶望しちゃった?
でも、俺から見る達也はすごく輝いているよ。
苦労してきたのに心が曲がっていない。
すごく素直できれいだ。それに前向きだしね。
何よりもアニメプラスで大きなチャンスを掴めたのは、
達也がここまで努力しただけでなくて、才能があったからだよ。
それは頭が良くないと出来ないんだよ。
馬鹿じゃ絶対出来っこない。
達也は自分が思っている以上に、能力がすごくあって高い。
多くの社員を抱えている俺から見ても、それは分かる。
達也は根性と努力と情熱の人なんだよ。
俺がそれは一番良く分かってる。
長い人生で、音楽をずっと続けて欲しいし、出来るようにするし約束する。
でも半年だけ聞き流しでいいから、田中さんの説明を聞いて欲しい。
これから、俺と一緒に並んで歩くということは、
世間の人から特別な目で見られるんだよ。
それが現実だ。
良い事ばかりじゃないのは、他の人と同じだよ。
世の中って、いい人だけじゃない。
特に地位や権力があると、すり寄って来る人も多いから見極めないといけない。
そうしないと自分が引っ張られて危ない目に遭うんだよ。
現に、達也はテレビ局の仕事中に襲われた。
今回は不運だったけど、もう狙われる対象になってるんだよ。
だから、知識は自分を守る盾になる。
そこを分かってほしい。
ゆっくりでいいから、始めて欲しいんだ。
これが現実なんだよ。わかる?
俺も一緒に手伝うから、やって行こう。どうかな?」
そしてしばし、沈黙があった。
やがて、くるりと向きを変えて、腕の中に入ってくれた。
胸の匂いを思いっきり吸ってくれる達也。
「あのね。俺って、透真さんが思ってるより、
ずっと頭が悪いんだけど、それでも良いの?」
ふふふ、少し笑った。
「うんうん、そういうところが良いの。
俺しか知らない達也だから、他の人は知らなくていい」
「買い被りでしょう?」
「それでも良い。俺は達也がいてくれたら、それだけで幸せだから」
そしてぎゅと抱きしめた。
「それとね、英語の先生はアメリカのバークリー音楽大学を出た人なんだ。
ミュージカルを専攻したハーフの人だ。
だからなるべく歌を歌って、楽しく覚えるといいよ」
「へえ~そうなんだ。うん、わかった」
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