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第62話 透真サイド<秘密の打ち合わせ>
夕方になって、父が執事と一緒にやってきた。
父が俺のマンションに来るのは珍しい。
「いらっしゃい。紹介します、達也です」
達也がすごく緊張していた。
「初めまして達也です。どうぞよろしくお願いします。
透真さんには大変お世話になっています」」
深々とお辞儀をしていた。
「うん、よろしくね。父の雅臣です」
父は少し微笑みながらも、達也の顔をじっと見つめていた。
「美貌だな。まさか顔で選んでいないだろうな?」
達也がさらに緊張して俯いてしまった。
「もう、止めてよ、父さんまで。運命の相手だって言ったでしょう?」
「は、そうだった。冗談だよ。さあ、食事にしようか?」
「もう~、達也、気にするな。いつもなんだからさ」
「はい、わかりました」
「お食事の準備が整っております。どうぞお掛けくださいませ」
美代さんが腕をふるってくれたようだ。
「今日は何が食べられるの?」と父。
「はい、さっぱりした麵料理と天ぷらを少々。
麺つゆを二種類ご用意しました。
あとはお刺身を使ったカルパッチョや和風の前菜の盛り合わせです」
「ふ~ん、うまそうだ」
カチカチに固まっている達也。かわいそうに……。
「達也、そんなに緊張しなくていいんだよ」
「はい」……無理か。
「じゃあ、乾杯しようか? 父さん、音頭をお願いします」
ノンアルドリンクを美代さんが出してくれた。
「はい、では透真、達也君。結婚おめでとう」
「かんぱーい!」
前菜は目も鮮やかですごくきれいだった。
そして、相変わらずどれもうまい。
「達也、前菜はどれも美味しいよ。食べてみて」
「はい」
「英語の勉強を始めたんだって? どうだ?」と父。
「はい、先生が楽しくて、一緒に歌っています」と達也。
「ほう。それはそれは、いい先生を見つけたんだな」
「でしょう? バークリーの出身の人に限定したんだよ」
「ふ~ん、将来は行かせるつもりなのか?」
「やめてよ。そんな先のことまで。達也の自由にさせるつもりだよ」
「まあ、それもいいだろう」
達也がきょとんとして僕を見つめた。
しょうがないから、ウィンクをしておいた。
そしたら目を見開いて驚いていた。
「ふふふ」とお腹で笑ってる人がいた。
田中さんだ。バレたか。
食後は叔父さんの悪だくみの証拠を照らし合わせた。
達也もそばにいた。
「達也、よく見てるんだよ。
父の弟の松永専務はいつも俺の地位を狙っている。
いや、社長の座を奪い取ろうといつも画策しているんだよ。
絶対に油断してはいけない」
俺の言葉に、達也は少し怯えたような表情になった。
その繊細な横顔を見て、俺は自分の口調が強すぎたことを反省した。
それでも怒りに燃えて、どうしようもない。
達也をこんな目に遭わせたのはあいつに違いない。
「今度の重役や関係者を集めた披露パーティーで、全部バラし、解任して告訴してやる」
「透真。落ち着け、達也が怯えているだろう」
父の言葉で、俺は我に返った。
「あ、ごめんね、達也。怖がらなくていいからね」
「はい……。あのう、その専務さんとオリオンは関係あるんですよね?
あの事件の犯人は分かったんですか?」
達也が不安げに尋ねた。
「それはまだ警察の捜査中だ。
もしかしたら、泳がせた方が良いのかもしれない」と父。
「そうだね。向こうも用意周到なんだよな。
誰か指示役でもいるのかな?」
「とにかく、これだけ証拠が揃えば、
刑事告訴は十分に出来るし、会社からも追い出せる」と父。
「はい。父さん、黒田社長はどうしましょうか?」
「パーティーの日に合わせて、二人の口座と資金源をストップしてやろう。
周りがあわててしっぽを出すだろう」と父。
「父さん、万が一、黒田社長が白だと言う可能性はありますか?」
「イヤイヤ、それはない。いや、すでにあいつの裏帳簿のデータも押さえている。
しかも専務の使い走りをやってて、あちこちから不正な金を受け取っている。
こっちにはその証拠映像も記録もあるから心配するな」
「はい、分かりました」
「あとは達也の守りの方だなあ。
会場で無事に披露出来ればいいけど、
もしかしたらその前の邪魔してくるかもしれんな」と父。
「そこはSPの警護を強化してもらいますよ」
「そうだな。それしかないな。
透真がいつもそばにいるようにしろよ」
「はい、分かりました」
そっと達也が俺の服の端を握った。
その手を握ってやった。
「あとは会場で映像を出すように作れよ」
「はい、それは俺が作りますから大丈夫です」
「達也、あんまり心配しなくていいよ。
いつも透真のそばにいるようにするんだよ」と父。
「はい、分かりました」
達也は最後まで緊張したままだった。
無理もないか。
今夜の話は、俺たちが思っている以上に、
彼を怖がらせてしまったのかもしれない。
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