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第65話 透真サイド&達也サイド<恥じらいの検査>

 達也のヒートは4日間続いたが、ようやく収まったようだ。 しかし達也の体力の消耗は激しく、その後もぐったりと眠ったままだった。 ……まあ、それは俺も同じだ。 我ながら少し情けないけれど、達也のそばで一緒に休息をとった。 会社には結婚休暇の延長として、出張扱いにした。 秘書には妻の体調不良とだけ伝えておいたが、恐らく察しているだろう。 ただ、噛んだ後の傷口の消毒や塗薬を朝晩欠かさず続けた。 大事な妻をこんなに傷つけてしまったのだ。 申し訳なさと愛おしさが混ざり合い、自分の不甲斐なさに胸が痛む。 一週間が経ち、達也はようやく起き上がれるようになった。 「どう? 起きて歩けそう?」 「……うん、多分大丈夫」 「じゃあ、ゆっくり動いてみて。手を貸すよ」 そっと背中に手を当てて体を起こす。 「なんだか身体中がボキボキ言うんだけど、なんでかなあ?」 ……自覚がないんだな。 ヒートの時の記憶は、やはり残らないものなのだろうか。 「達也、ヒートの時のこと、何か覚えてる?」 「……ううん、覚えてない。ただ身体が熱くなって、どうしようもなくて。 ずっと夢を見ているような感じかな。思考が止まっちゃうの」 「そっか……。それより、首は痛くない?」 達也は首筋にそっと手を当てて確かめた。 「痛っ! ……これ、縫わなくていいの?」 「そんな傷にはなってないから大丈夫だよ」 「そうなの? じゃあ、番(つがい)になってないかも……」 達也が不安そうに眉を寄せる。 「病院で検査してもらおうか? もし噛み方が弱くて番になっていなかったら、また噛まないといけなくなる。 それは達也をまた傷つけることになるから……かわいそうだしね」 「うん。……そうはかわいそうだと思う」 達也が少しだけ笑いを堪えて、上目遣いに俺を見つめた。 二人で顔を見合わせ、思わずくすくすと笑い合う。 その日の午後、北原先生に電話を入れ、赤坂クリニックへと向かった。 クリニックでは、またしても浅田理事と北原先生が微笑んで待っていてくれた。 この二人はいつもセットなのだろうか? 達也は理事が目に入った途端、 「あ、理事だ! 恥ずかしくて死んじゃうよ~」 と、俺の後ろにさっと隠れてしまった。 「達也、なに隠れてんの?」ニヤニヤと笑う理事。 「ほら、どうせ診察に来たんでしょう? 来なさい!」 無理やり手を引っ張られて、 達也は診察室へ連れて行かれた。 俺は内心笑ってしまったけれど、 自分自身もなんだか気恥ずかしくて、待合室で待つことにした。 ー達也サイド<診察室にて>ー 「達也、先に血液検査をするよ」と浅田理事。 検査を終えると、理事はニヤリとして切り出した。 「でさ、ヒートのほうはどうだったの?」 食い下がるなあ……。 「し、知りません……」 「じゃあ、出来具合を見せてもらいましょうか?」と北原先生。 首のガーゼを外され、二人で顔を寄せてじーっと傷口を覗き込まれた! 「なるほど、問題なさそうだけどね」と北原先生。 理事はニヤッとして「やっちゃったね~」と笑う。 もう恥ずかしい……。 顔が火照ってどうにかなりそうだ。 「お尻は痛くないかな? 痛かったら薬を出すよ」 北原先生の美しい顔で「お・し・り」なんて言わないでほしかった……。 「あ、あのう、分からないです。多分、大丈夫です」 「分からないんだったら、診察するよ」と理事。 絶対面白がってる! 「ダメ、ダメ、絶対ダメ!」とズボンをぎゅっと握り締める。 「じゃあ、念のために薬を出しておこうね」と北原先生が苦笑した。 「はい、ありがとうございます」 すると先生がパソコン画面を見て、 「あ、結果が出たみたい。ちょっと旦那さんを呼ぼうかな?」 ナースが透真さんを呼んでくれた。 診察室に入ってきた透真さんは、どこか神妙な表情をしていた。 ……もう、照れているくせに! 「松永さん。奥さんとは無事に番になられましたよ。おめでとうございます」と北原先生。 「あ、はい……ありがとうございます」 透真さんは照れまくって、顔に両手を当てて後ろを向いてしまった。 北原先生が丁寧に傷口を消毒し、薬を塗ってくれる。 「達也、おめでとう! 無事に夫婦になったねえ」と理事。 透真さんも嬉しいのかな? こちらを向いた透真さんは、とてもやさしい眼差しで僕を見つめていた。

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