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第67話 達也サイド<新曲5曲のレッスン開始>
翌日はロニー先生の英語レッスンを受けた。
でも、どちらかと言えば英語そのものよりも、リズムと発声の練習がメインだ。
俺ってそんなに基礎がダメなのかな……と、かなり不安になった。
それでも、パーティーでの問答を想定した英会話を教えてくれるのは、とても助かる。
朝一番には執事の田中さんも来てくれて、
今度のレセプションに来る招待客の説明を受けた。
顔写真付きのリストを渡されたけれど、
100人もの名前と顔を一度に覚えるなんて到底無理だ。
でも、透真さんと結婚した以上、
これは避けては通れない仕事なんだと自分に言い聞かせる。
午後は久しぶりに、スタジオでダンスとボーカルのレッスンに行った。
「達也、大変な目に遭ったんだってね。
曲や振りの記憶がないとか?」と三角先生。
「はい、そうなんです。粗悪品の麻酔薬の後遺症だそうです」
「しかし、テレビ局内でそんな事件なんて滅多にないけどなあ。
よほど結婚した相手が大物なんだね」と広野先生が苦笑する。
「あのう、大物かどうかは分からないんですが……、
彼は車会社の副社長なので、いつも狙われてるって言ってました」
「へえ、それは大変じゃん。まあ、過ぎたことはしょうがない。
気を取り直して練習しようか。達也が休んでいる間に、新曲が5曲揃ったんだよ。
楽譜をコピーしておいたから」と三角先生。
「ありがとうございます」
新曲の譜面に目を通す。
「ちょっと歌ってみる?」
ピアニストが前奏を弾いてくれた。
なんてきれいな曲だろう。
思いっきり歌ってみる。
歌詞も曲も美しい。
デビュー曲は暗い雰囲気のものだったから、こちらの方が歌いやすいかもしれない。
「あれ、休んでいたんだよね? その間に何か自主トレでもしてた?」
「えっと……英語の先生がバークリーでミュージカルを学んだそうで、
リズムと発声も教えてくれるんです。
英語も交えて、歌って覚える感じに指導してくれていて」
「へえ、それはすごいね」
二人の先生が顔を見合わせて笑った。
「さすがにリッチだねえ」
「すごく効果が出てるよ。しっかり英語も練習すればレパートリーも広がるからさ、頑張ってね」と三角先生が励ましてくれる。
「はい、ありがとうございます。頑張ります」
5曲すべてを歌いきった。
リズミカルでパンチのある曲も2曲含まれていた。
「今度ね、事務所がファーストコンサートをやりたいらしいんだよ。
達也のバックダンサーも契約するから、今の曲は全部、振り付けもマスターしないといけない。
結構忙しくなるよ」と広野先生。
「はぁ、そうなんですね……。俺一人のために、いいんでしょうか?」
「ちょっと、自覚が足りないよ。
もう人気タレントなんだからさ、堂々とやってください」と三角先生にハッパをかけられる。
「はい、分かりました」……とはいえ、堂々とするなんて、今の俺にはまだ無理だ。
歌のレッスンを終え、次はダンスの振り付けだ。
「デビュー曲の動きは全部忘れたんだって?」と広野先生。
「はい、すみません。その辺の記憶がすっぽり抜けているんです」
「いいよ、今から作り直せばいいさ。
じゃあ、まずはデビュー曲の振りからやろうか」
「はい、お願いします」
楽譜を見て歌詞とメロディーは叩き込んできた。
結局、この日は散々絞られた。
17時までの時間があっという間に過ぎ去った。
佐々木マネージャーが傍までやってくる。
「じゃあ、そろそろ戻ろうか。
無理をしないようにって、社長から言われているからね」
「はい、分かりました。どうもありがとうございました」
トレーナーたちにお礼を言ってスタジオを後にした。
もうクタクタだ。
……今後、俺は本当にやっていけるのかな。
正直、自信がない。
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