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第68話 透真サイド<披露パーティーの罠>
いよいよ、会社関係者だけの披露パーティーの日だ。
執事の田中さんのアドバイスで、達也はスーツの上に黒いマントを羽織り、
さらに眼鏡とマスクを着用するという、まるで不審者のような格好にしてもらった。
「ええ、俺がこんな格好するの?」
達也は嫌がっていたが、しょうがない。
以前、麻酔薬で危うい目に遭ったのだ。
今回は誘拐の可能性すら拭いきれない。
「慎重には慎重を重ねましょう」という田中さんの言葉に従ってもらう。
SP本部にも「このパーティーが犯行現場になる可能性がある」と伝え、警備を強化した。
「通常の三倍の警備員を配置します」との心強い返事を得ている。
達也には、先日あつらえた光沢のあるフォーマルスーツを着せた。
実によく似合っている。
すごくきれいだ。
「達也、すごくきれいだよ。輝いてる」
「そうかな? ちょっと照れちゃうなあ」
ヘアメイクもスタイリストに自宅へ来てもらい、完璧に仕上げた。
「今日は後ほど、田中さんと一緒に伺いますね」と美代さんが声をかけてくれた。
「ありがとうね。よろしくお願いします」
「さあ、行こう」
達也の手を引いて地下駐車場へ向かう。
念のためにとSPから別々の車に乗るよう指示されたため、
素直に従い、俺が先に出発した。
後続車に田中さんや美代さんと一緒に達也が乗るのを待つ手はずだ。
会場に着くと、準備はすべて整っていた。
父も俺もインカムを装着し、臨戦態勢をとる。
招待客はすでに全員そろっているとのこと。
達也は田中さんに任せ、舞台裏のカーテンの奥に隠れて待機してもらうことにした。
「達也さんは無事に待機されました」
田中さんからの報告を受け、深く息を吐く。
よし、これで安心だ。
さあ、決戦だ。
秘書室の社員により、開幕が宣言された。
「ただいまより、松永社長からご挨拶を賜ります」
粛々と会社の現況報告が続く。
そして、ようやくMCが声を張り上げた。
「続きまして、松永副社長からご挨拶がございます」
俺は舞台中央の演台の前に立った。
「本日はご多用の中、私たち二人のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。
本来であれば、妻の紹介を兼ねたささやかな祝賀の場とする予定でございました。
しかし、私、副社長として皆様にどうしてもお伝えせねばならない、会社経営に関わる重大な事案がございます」
場内がざわざわとざわめき始める。
「この場をお借りし、皆様の前で発表することは非常に心苦しいのですが、企業の透明性を守るため、そして何より我々を信じてくださる皆様を裏切らないため、公表させていただく決断をいたしました」
皆が一斉に静まり、俺の言葉に耳を傾ける。
「実は、我が社内において重大なコンプライアンス違反が発覚いたしました。
内部調査の結果、松永専務による組織的な背任および不正会計が明らかとなっております。
これまで会社を支えてきたはずの者が、私利私欲のために会社の信用を毀損し、皆様との信頼関係を破壊する行為に及んでいたことを、経営陣の一員として深く、深くお詫び申し上げます」
「一体何を言っているんだ! 許せん、何の証拠があるんだ!」
松永専務が舞台前の席から立ち上がり、大声で怒鳴り散らした。
待ちに待ったこのセリフだ。
ようやく追い詰めることができる。
「会社として、この悪事を看過することはできません。
その証拠を、ただいまより皆様にご覧入れます」
俺の合図と共に、背後の大型スクリーンに詳細な説明文と、
数々の動かぬ証拠が次々と映し出された。
「え? なんだあれは……」
「まさか、信じられない……」
場内から驚きの声が、あちこちで上がり始めた。
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