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第69話 透真サイド<混乱の負の連鎖>
「では本日、この場にいる社長を含む取締役会を経て、当該人物の解任を通告いたします。
皆様、よろしいでしょうか? 賛成していただけますか? 挙手をお願いします」
「全員、手を挙げた」
それを見回す松永専務。
「ウソだ! これは嵌められたんだ!
透真、お前は俺を落とそうとしているんだろ? いい加減にしろ!」
専務は怒鳴りながら走って舞台に上がってきた。
SPがさっと俺を取り囲み、ガードする。
「松永専務……いや、専務はたった今解任されました。
そして、ただいまをもって懲戒解雇といたします。
それだけじゃない。刑事告訴します。
ここには警察官に来てもらっています。さあ、連れて行ってください!」
「待てー! 何を言ってるんだ!
これは俺がやったんじゃない。
オリオン音楽事務所の黒田社長が脅迫してきたんだ!
家族をネタに脅されて、しょうがなかったんだよ!」
場内の視線が一斉に黒田社長へ向かった。
このために、今日彼を招待していたのだ。
今度は黒田社長が大声を出した。
「やめてくださいよ、見苦しい。
なんで私が大会社の会計をごまかせるんですか?
そんな権限はないですよ。
全く、驚くなあ~。名誉毀損で訴えますよ?」
「何を言ってるんだ!
お前はテレビ局で達也を嵌めたじゃないか!」と叔父が叫ぶ。
「はあ? なんのことですか? 知りませんよ。
全く、なんでも罪を押しつけるんだもんなあ~。
フン、証拠もないのに何を言うんですか? ああ~怖い怖い」
黒田社長はそっぽを向いて鼻で笑う。
「おい黒田、しらを切るのか? 証拠ならちゃんとある。
俺が知らないとでも思ってるのか?
俺はいつだってお前に見張りを付けていたんだよ。
この証拠を警察に見せてやる!」
叔父がそばにいた警察官にスマホで何事かを見せると、警察官は隣の刑事にそれを手渡した。
「なるほど、確かにこれはテレビ局で起きた事件の犯人ですね。
街頭の防犯カメラに映っていた車とも一致します。
乗っているのは、黒田社長の事務所のスタッフですね?
こちらもずっと見張っていますからね、顔はすぐに分かりますよ」と刑事。
「はあ? だからって、なんでそれがうちの犯人なんだよ。関係ないね。
第一、達也のスケジュールなんか、こっちは分かりっこないんだからな。
だったら松永家の家政婦にも聞いたらどうだ?」
一瞬、背筋に冷たいものが走った。
「何を言ってるんだ? 家政婦とどういう関係があるんだ!」
思わず怒鳴った。許せない。
「そうですかあ? むしろねえ、これは家政婦の悪だくみじゃないんですか?
こっちが達也の動きを知るわけないんだから」
「……」
思わず美代さんを見た。
「うるさいなあ、何を言い出すんですか?私が関与した証拠でもあるんですか?」と美代さん。
呆然と彼女を見つめた。
「美代さん、ウソだよね? ウソって言ってくれ……」
「‥‥‥私だって騙されたんですよ! それに……脅されていたんです」
「それで、テレビ局の仕事を黒田に教えたの?」
「はい……でも、それが事件になるなんて思わなかったんですよ!」
その言葉に、俺は思わずその場に座り込んだ。
「美代さん、警察官もいるここでそれを言うと、刑事告訴されるんだぞ!
共犯になるってことだ。分かっててやったのか!」
父が血相を変えて怒鳴るが、美代さんは横を向いたまま沈黙した。
身体中の血が逆流するような感覚。
俺を小さい頃から面倒を見てくれた人なのに、こんなに簡単に裏切られるなんて信じられない。
涙が溢れてきた。
「とりあえず、今日のお披露目は事情が変わりました。
改めて場所を設けますので、本日は解散してください」
父が会場に向かって宣言する。
「では、松永さん、黒田社長、美代さん。警察に連行します」
警察官が三人を連行して行った。
俺は力が抜けて、立ち直ることができない。
「透真、達也君を呼びなさい。もう帰ろう」
父が肩を叩いてくれた。
「……はい」
僕は舞台袖へ向かい、「達也!」と呼びかけた。
……返事がない。
あれ? 裏のカーテンをめくると、椅子が一脚あるだけで、そこには誰もいなかった。
「達也ーっ!!」
大声で呼んでも返事がない。
まさか!そんなはずはない。
SPが青ざめて言う。
「たった今まで、ここに居たはずです……!」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ! いないじゃないか!
すぐ探すんだ! もしかしたら誘拐されたかもしれないんだぞ!」
怒鳴り散らしてしまった。
二度目だ。二度も同じことを許してなるものか。
この失態は許せない。
もう涙が溢れて、怖くて怖くてどうかなりそうだった。
奥の廊下から田中さんが駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか? すぐに全員で探していますからね」
そう言ってくれるが、なぜこうなるんだ?
田中さんだってそばにいたはずじゃないのか?
言いたいことは山のようにあったが、
今は達也をすぐに見つけなければならない。
気持ちばかりが焦り、どうしようもなかった。
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