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5-6 小さな未来
月日が流れるにつれ、レイの仕事ぶりはすっかり板についてきた。
注文を間違えることもほとんどなくなり、常連客から名前を呼ばれることも増えた。失敗がなくなったわけではないが、そのたびにマスターへ頭を下げ、次は同じことを繰り返さないように覚えていく。その積み重ねを見ているうちに、政宗も気付けば安心して店へ立ち寄れるようになっていた。
そんなある日の夜だった。
夕飯を食べ終えたレイが、マグカップを両手で包みながらぽつりと口を開く。
「マスターがさ、店、継がないかって」
政宗は箸を止めた。
「俺に?」
「うん」
レイは照れくさそうでも得意そうでもなく、ただ困ったように笑う。
「でもさ、俺、計算とかなんにもできねぇし」
少し間を置いてから、政宗を見た。
「マサ、一緒にやらねぇ?」
その言葉に、政宗はしばらく返事ができなかった。
レイは慌てて笑う。
「こないだもハム誤発注して怒られたし。マスター、怒ると意外とこえぇ」
その話を聞いた瞬間、政宗は吹き出す。
「ああ、あれか。だから毎日ハムサンド売ってたのか」
「売らねぇと減らねぇからな。おすすめしまくって、なんとか大目に見てもらったぞ」
思い出したように笑いながら肩を竦めるレイを見ていると、政宗もつられて笑ってしまう。
「しょうがねえな」
そう言うと、レイは安心したように笑ってマグカップへ口を付けた。
その横顔を見ながら、政宗は静かに考える。
会社を継げと言われ続けた自分と、喫茶店を継がないかと言われたレイ。同じ「継ぐ」という言葉なのに、その意味は驚くほど違っていた。
誰かに利用されるためではなく、誰かが「いてほしい」と思ってくれたから託される。
そんな未来がレイにも訪れたのだと思うと、自然と口元が緩んだ。
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