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✦︎6-4 手と手と明日を絡ませて
明かりの落ちた部屋の中、敷いた布団の上で、髪を乾かすのもそこそこに火照った体を重ね合わせる。新居の畳の上でバスタオルを適当に放り投げて、政宗はレイに覆い被さる。もう一度唇を重ねると、レイの舌が唇の隙間に入り込んでくる。やや急くような仕草に翻弄されながらも、政宗は口付けを返していた。
「マサ、欲しい」
明け透けな物言いに、政宗は逸る心を抑えながら、レイに「ああ」と頷く。平静を装うので精一杯だった。それでも、レイに触れられることが嬉しかった。
レイの胸についた、形のいい二つの飾りを指で摘む。すぐに硬くなったそれに、レイはくぐもった声を漏らしながら胸を反らして総身をくねらせる。声を含まない湿った吐息に耳がざわざわして、そのたびに政宗の中心に熱が集まるような感覚がしている。案の定レイのそこも反応していて、透き通った体液がレイのそれを潤していた。
レイはしなやかな長い足を広げ、政宗を迎え入れる準備をする。
「マサ……マサの、ちょうだい。もう、キスだけじゃ足んねぇ」
縦に柔らかく広がる割れ目に指を這わせて、レイがねだるように腰を揺らす。
「……ああ」
政宗は誘われるようにふらふらと、けれど確かな意志を持ってレイの奥を指で触れた。途端にレイの口から出る声に甘い音が混じるようになる。くちゅくちゅと慣らすようにしばらく指を動かしたあとで、政宗は明確な熱を持った先端をレイのそこに宛がった。
「入れるぞ」
唾を飲み下し、喉を鳴らして言うと、レイが薄闇の中でこくりと頷くのが見えた。
狭い隘路をこじ開けるように奥へと進むたび、レイの、「あ、あ」と心許ないながらも艶のある声が返ってくる。やがてぜんぶ収まりきると、レイが長い息を零した。
馴染むまで待つつもりでいると、不意にレイの手が政宗の手を拾う。それから指を絡め合わせ、政宗を見上げる。
「マサ」
「なんだ」
握った手の力が強くなる。
「こうしてると、誰と繋がってんのか、ちゃんとわかる」
上気した顔が、にへら、と笑った。
政宗は短く「ああ」と口にして、そうしてレイの手を握り返した。
やがて政宗はゆっくりと腰を動かす。ぶつかる音が、静かな部屋の中に響く。レイの声や吐息が、身体を密着させていくうちにだんだんと激しくなる。何度か小さく打ち震えながら、レイは口をぱくぱくさせ、それから喘ぎの合間に、尾を曳くような声で政宗に向かって言う。
「マサ……っ、来る、俺、イっちゃ――う……!」
「いいよ。……イって、レイ」
そう告げた政宗も、精一杯だった。
腕の中にいる体が小刻みに震え出す。レイの腹が引き攣るようにぶるぶると波打つ。政宗は奥を突く速さを上げる。やがてレイは足を指先までピンと伸ばして、それから中の締め付けがぎゅうと強くなった。
「あ──」
反らしたレイの喉が天を向く。ほどよく筋肉のついたなめらかな肌が白く濡れる。それに気付いた瞬間、政宗もまたひときわ強くレイの奥を突くと、そこで動きを止めた。
弛緩した体を抱き締めると、レイの口からは力なく濡れた艶やかな声が溢れた。
汗に濡れた体をぴったりと重ね合わせるうちに、レイと呼吸がそろっていく。同じぐらいの時間を掛けて整えていくうちに、やがてレイがぽつりと零した。
「……すげぇ、気持ちよかった」
レイは満足そうだった。政宗が「そうか」と零しかけたその時、レイの言葉が続いた。
「今までで、ずっと」
政宗は固まった。レイの言う「今まで」の重みに、政宗は途端に自信がなくなる。
レイにそうさせたのは、他でもない自分の肉親だ。
政宗は歯噛みする。けれど過去は消せない。どうしようもない黒い感情が渦巻きそうになって、でも、これからレイのこんな姿を見れるのは後にも先にも自分かもしれないという、変な自信もあった。
それなのに。
「自分で欲しいって思ったのも、初めて」
そうか。こいつはもう、選べるんだ。
そう思った瞬間、胸の奥でなにかが弾けそうになった。
レイが、自分で欲しいと思えている。これから先は全部、レイ自身で選んでいく。それは喜ぶべきことのはずだった。
なのに、その先を思い浮かべようとすると、気道が急に狭まったように感じた。
もしレイが、自分以外を選んだら。
自分の知らない誰かの隣で笑うレイの姿だけは、どうしてもうまく想像できなかった。
そんな漠然とした雑念を払うように政宗は息を吐いて呼吸を整えていると、レイは知ってか知らずか、話を切り替えるように口を開いた。
「明日、店行くの何時?」
「……。朝八時。レイ、寝坊すんなよ」
「じゃあ起こせよな」
レイがふふっと笑って、布団の中で素足を絡める。
けれども政宗はそのレイのじゃれ合いに、うまく返すことができなかった。
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