2 / 7

第2話

 優が部屋着を身に着け自室へ戻ると、スマートホンがメールの着信音を響かせていた。  見るとナナコからほぼ三十分ごとにメールが来ていて、返事を催促していた。  ……女の子って結構めんどくさい……。  優は溜息をつき、返信メールを打った。  つき合い出して一カ月が過ぎても、二人の気持ちの温度差は変わらなかった。  優は放課後も休日も部活で忙しく、デートをする暇もない。大会が終わるまでだからと言っても、ナナコの不機嫌は治らない。  おまけに優は電話で人と長く話すのが好きではないので、ナナコからかかって来ても、自然と素っ気ない対応になってしまう。  ナナコの不満はどんどん膨らんでいるようで、メールの内容も優に対する非難めいた言葉ばかりが増えていく。優はただ溜息をつくしかできなかった。  そんなある日、優たちの担任の教師である結城(ゆうき)が、授業後のショートホームルームを終え、教室を出て行くときにナナコを呼んだ。 「宮外、この前の三者面談のことで話があるから、あとで化学準備室まで来なさい」 「え? あ、はい」  ナナコは少し戸惑い顔で返事をしている。  と、不意に結城が優のほうを見た。切れ長の鋭い瞳だ。  優はすぐに目を逸らし、  ……結城健人(けんと)……。  口の中で小さく担任教師の名前を呟いた。

ともだちにシェアしよう!