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第2話
優が部屋着を身に着け自室へ戻ると、スマートホンがメールの着信音を響かせていた。
見るとナナコからほぼ三十分ごとにメールが来ていて、返事を催促していた。
……女の子って結構めんどくさい……。
優は溜息をつき、返信メールを打った。
つき合い出して一カ月が過ぎても、二人の気持ちの温度差は変わらなかった。
優は放課後も休日も部活で忙しく、デートをする暇もない。大会が終わるまでだからと言っても、ナナコの不機嫌は治らない。
おまけに優は電話で人と長く話すのが好きではないので、ナナコからかかって来ても、自然と素っ気ない対応になってしまう。
ナナコの不満はどんどん膨らんでいるようで、メールの内容も優に対する非難めいた言葉ばかりが増えていく。優はただ溜息をつくしかできなかった。
そんなある日、優たちの担任の教師である結城 が、授業後のショートホームルームを終え、教室を出て行くときにナナコを呼んだ。
「宮外、この前の三者面談のことで話があるから、あとで化学準備室まで来なさい」
「え? あ、はい」
ナナコは少し戸惑い顔で返事をしている。
と、不意に結城が優のほうを見た。切れ長の鋭い瞳だ。
優はすぐに目を逸らし、
……結城健人 ……。
口の中で小さく担任教師の名前を呟いた。
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