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第3話

 結城は女子生徒に圧倒的に人気がある教師だ。  ともすれば『かわいい』と形容される優とは違い、彼は大人の男の魅力にあふれていた。  年齢は三十歳。怜悧で端整な顔立ちにモデルのような長身。引き締まった体は程よくきたえられ、セックスアピールに富んだ美貌の持ち主である。  優は、鞄を胸に抱えて足早に教室を出て行くナナコを、目を細めて見つめていた。  そして、その日を境に、うるさいくらいだったナナコのメールが一気に減ったのだった。  珍しく部活が中止になった日、優は以前から約束していたナナコの買い物につき合い、そのあと二人してファストフード店へ入った。 「ナナコ、この頃、あんまりメールくれなくなったね」  優がそれとなく聞くと、ナナコは一瞬、狼狽のようなものをコケティッシュな顔に走らせた。だが、すぐににっこりと笑顔になると、 「あんまりしつこくすると、優くんに嫌われちゃうと思って……」  そんなふうに言った。  それから数日後の放課後、優が部活のため部室へと向かっているとき、担任教師の結城からメールが届いた。 〈今すぐ、西校舎の裏庭に来い。 結城 〉  …………。  西校舎の裏庭はどことなく陰気な雰囲気が漂う場所で、普段からほとんどひと気のない場所だ。  優はスマートホンをポケットにしまうと、言われるままに西校舎の裏庭に向かった。  そこで優が見たのは、結城とナナコがキスをしているところだった。  ナナコはうっとりと目を閉じ、キスに夢中で、大きな木の陰にいる優に気づいていないが、結城のほうは優に気づいた。  優の大きな瞳と、結城の切れ長の瞳がぶつかり合う。  結城はそのまま目を細めて、優を見続け、優のほうはそっと足音を消して、その場をあとにした……。

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