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第5話

 十分後、深いブルーの車が河原に続く通りにとまった。  優は素早く助手席へ乗り込む。  運転席の男は手を伸ばすと長い指で優の髪を撫でた。 「あんまり練習し過ぎて体壊すなよ、優」 「それほどがんばってないよ。だって大会なんかよりもさ……」  優は艶やかな唇に笑みを浮かべた。 「……そのあとの計画のほうが楽しみだし」 「そうだな」  男もまた含み笑いをしながら応え、その手は優の髪からなめらかな頬へと這って行き……。 「優……」 「んっ……」  男が体をひねって唇を重ねてきた。 「……こんなところじゃ、だめだよ……。誰が見ているか分かんないよ? ……ね、結城先生」 「ああ」  結城は優の華奢な体を一度強く抱きしめてから、体勢を戻してハンドルを握った。  優と担任教師の結城が恋人関係になったのは、一年生のときだ。  優が先輩の男子生徒に体育倉庫で暴行されかかっているところを、結城が助けてくれたのが、全ての始まりだった。  この場合の『暴行』は殴る蹴るという意味ではない。優の並み外れた美貌は同性の劣情をも誘った。  先輩男子に優はナイフで服を引き裂かれた。……今も残る左胸の傷跡は抵抗したときにつけられたものだ。  心身ともに傷ついた優を心配した結城は、ずっと傍で寄り添い続けてくれ、二人の仲は徐々に親密なものとなっていった。  

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