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第2話 飲ませるな危険
会社の飲み会というものは、好きな人は楽しそうに酒を飲み、苦手な人は早く終わらないかとグラスを置く。
亮はどちらかといえば後者だ。
しかし、今日は目の前に座る、ふわふわ髪の先輩に釘付けになっている。
営業部の飲み会は初めてだったから、知らなかった。
牧野が酔うと、こんなにもエロいということを。
「牧野ちゃん、飲んでる~?」
「はい~」
次から次へと営業部のガタイの良い人達に絡まれ、あっという間に牧野はポヤポヤとした表情を見せ、幸せそうに笑っている。
それがまた、男心をくすぐるものだから、グラスに酒が注がれていくのだ。
「おい、牧野に飲ませすぎるなよ」
部長が奥の席から注意すると、全員の返事が小学生のように「はーい」と揃った。
部長もやれやれといった顔をしながら、牧野をじっと見つめている。
亮は入り口の席から店の時計を確認し、店員よりも早く席利用時間の終了だと進言した。
二軒目いくぞーと声をあげている輪からこっそり離れた亮だが、牧野の姿が見当たらず視線を彷徨わせた。
牧野はフラフラと駅に向かって歩き出していた。
一人で帰らせるのは危ないだろうと、亮は着いて行こうとする。
「犬飼!二軒目はこっちだぞ~」
「え、あ、すいません。俺、今日はもう……」
「なんだよ~寂しいこと言うなよ~」
完全にからみ酒の主任に頭を下げて、亮は駅に向かった。
しかし、牧野を見失う。
「どこ行った?あんなにふらふらで、倒れてなきゃ良いけど……」
亮は視線を回しながら、少し遠くにふわふわの髪を見つけた。
その髪は、若い男の手に撫でられている。
瞬間的に危険を感じた亮は走り出した。
牧野と男は、ネオン輝く大人なホテルへと吸い込まれていく。
「嘘だろ?あんな酔った状態の人を誘うかよ」
亮の正義感は強く反応し、二人に追いつくと、男の手を掴み上げた。
「何してんだよ」
「なっ、なんだよお前!」
「この人に手を出すな!」
亮は学生時代、空手で培ってきた威嚇の目線を向けて相手を怯ませる。
完全に言葉を失った男は、逃げ腰で亮が掴む手を引いてきた。
「わ、るかったよ……」
亮が手を離せば、男はさっさと走って逃げていった。
ポヤポヤと一部始終を見ていた牧野の肩を掴む。
まだ何もされていないが、念のため身体中を確認するように見た。
細く長い足、細い腰、薄い胸板、首も細く、酒のせいでほんのり色付いている。
頬は薄く染まり、目はトロンと少し瞼が落ちている。
ゆらゆらと頭が揺れているから、ふわふわの髪が揺れていて、とてつもなく庇護欲をそそられた。
「亮くん、強いんだね~」
ヘラリと笑う牧野に、亮はカッと怒りが湧いた。
「牧野さんには警戒心がないんですか?!何をされてたかわかりませんよ!」
「だって~、眠たかったから~」
ポスリと亮の胸に体を預けてくる牧野を受け止め、その柔らかさに、亮は毒気を抜かれた。
「もう、送りますよ……」
「ここで良いんじゃない?」
「ダメですよ」
牧野は目の前のホテルを指差すが、亮はその手を下げさせて、タクシーの通る道まで牧野を支えていった。
本当は、ホテルに連れ込みたかったが、亮の良心はそんなずるいことは許さなかった。
亮に抱えられるように体を支えられている牧野は、何が楽しいのか、クスクスと笑いながら歩いていた。
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