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第5話 出張代わってやろうか
「牧野と、出張に行ってくれ」
朝一、まだ牧野が出勤する前に、部長が申し訳なさそうに亮の肩を叩いた。
亮としては吉報だ。
胸の中でガッツポーズを決めるが、部長の顔は浮かない。
本当にすまないと、小さく言った言葉は亮には届かなかった。
「出張?亮くんと?やった。楽しみ~」
「遊びじゃないぞ。くれぐれも、仕事だからな」
釘をさす部長に、牧野は笑顔で返事をした。
「亮くん、ここの牧場主さんね、優しいんだよ。お得意様だから、新しい機材も勧めてみようか。それにね、ここの近くの宿、温泉が気持ちいいんだ。出張楽しみだね」
「そうですね」
まるで旅行気分の牧野に、亮も笑顔になる。
みんなに言われていた注意なんてほとんど忘れてしまった。
牧野と一緒に遠出ができる事に気分が浮いて仕方ない。
「じゃあ、新幹線は俺が取りますね」
「うん、宿は任せて。僕、顔が効くから」
ドンと自分の胸を叩く牧野は、亮の脳内ですぐにデフォルメ化され、可愛く飛び交った。
昼休み、亮は社員食堂で営業部の人に囲まれていた。
「出張、代わってやろうか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「心配なんだ……」
「あぁ、心配なんだ……」
「皆さん、心配しすぎですよ。あんなに可愛くて柔らかい牧野さんが何をするっていうんですか?」
亮の言葉に、みんなが亮を覗き込む。
「もう、遅いか」
「いや、まだ大丈夫でしょう」
「いやいや、もう沼に浸かってる」
みんなはそれぞれにそう言うと、一つづつ唐揚げを亮の皿に分けてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「食って体力つけろ」
「無事に帰ってこいよ」
「いや、帰ってきた時には仲間だな」
亮には分からない話をしながら、みんなはトレーを片付けていった。
オフィスに戻ると、牧野が机に突っ伏して寝ていた。
牧野はよく昼寝をする。
夜更かししちゃうんだよねと笑った顔も可愛かった。
亮は牧野を起こさないように、そっと椅子を引いて隣に座った。
牧野の寝顔が、すぐ横にある。
寝息が聞こえて、つい、見入ってしまった。
丸く優しい目は閉じられているが、長いまつ毛が閉じた目の下に影を作っている。
触るとプニプニしていそうな頬は白く肌がきめ細かい。
スースーと寝息に合わせて若干動く唇がすごくエロい。
少しだけ牧野が動いて、ふわふわの髪が顔にかかった。
取ってあげた方が良いかと、亮が手を動かした瞬間に、牧野の目が開いた。
亮はその視線に動けなくなる。
目の前に亮がいることに気付いた牧野はフニャリと笑った。
「おはよう。亮くん」
「お、おはようございます……」
机に突っ伏したまま、牧野は眠そうな目を動かす。
「その手何?」
牧野の髪を触ろうとしていた手を指摘され、亮は慌てて手を引いた。
「いえ、何でも……」
「ふふっ、亮くんて面白いよね」
んーと伸びをすると、牧野のワイシャツが引っ張られ、体の線がよく見えた。
薄い胸板と細い腰がとてもエロい。
抱きしめても折れないだろうか。
牧野が手を降ろすと、シャツが肌から離れ、余裕をもつ。
胸元のボタンがまた外れている。
服の隙間から、牧野の胸の突起を目ざとく見つけてしまった。
「……っ!」
ピンク……
亮はゴクリと喉を鳴らす。
さっきもらった唐揚げのスタミナが身体中に駆け巡るかのように心臓が高鳴り、体温が上がった。
「亮くん?」
まだ寝ぼけているような顔で、雰囲気の変わった亮を牧野が覗き込んでくる。
距離が縮まって、余計にはだけた胸元がよく見えた。
「だ、だめだ……」
下半身に熱が集まるのを感じて、亮は立ち上がった。
「どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫じゃないので、トイレ行ってきます!」
亮はそう宣言をすると、足早にトイレへと向かった。
これは、出張中辛いかもしれない。
みんなが言っていたのはこういう事だろうか。
亮が駆けていくのを見送って、牧野はシャツのボタンをかける。
「出張、楽しみだなぁ」
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