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第2話 初対面で求婚!?学校一の王子様は、距離感ゼロの強引野郎でした。

「ねえ、一人で何しているの?」 顔をあげるとそこにはすさまじいほどの美青年がいた。 この舞踏会主催者であるエリーゼの弟、ラドクリフ・スチュアートだ。 彼はアイビーとルイーザの通うスクールでも1、2を争う美青年だ。 (もちろん、アイビーは別のタイプの美少年だ) 「えっと……友達と来たんですけどはぐれちゃったみたいで……。 でも私は大丈夫ですのでパーティにお戻りください」 アイビーはラドクリフが少し苦手だ。スクールでもかなり紳士的に女性へ接しているし、常に笑顔だが、違和感を感じる。上手く隠されてはいるが女性を軽んじている……。そんなに完璧な奴はいない。まあ……実のところただのやっかみだ。しかし、アイビーは知らず知らずのうちに彼を目で追ってしまう…… 「今日は女性だけの舞踏会って言う変な会でね、姉は酔狂なんだ。俺は弟だからここにいるのを許可されているんだけど、完全に邪魔者なんだよねー。 ねえ、一緒に外の空気吸いに行かない?」 腕をグイグイ引かれてバルコニーへと出た。 ラドクリフはアイビーをまじまじと見た。 完璧なまでのプラチナブロンド、くすみのないブルーの瞳、真紅の唇。 「……君ってものすごく美しいね……。なんて言うか、夜の空から女神が降りてきたのかと思うよ」 そう言うと、アイビーの手を掬い上げ、恭しく唇を落とした。 「ひゃっ!……やめてくださいっ……困ります、こんな」 「何が困るの? 舞踏会でのお互い気の合う男女の間ではある程度こうなるのは普通だと思うのだけど……違う?」 「(ごっ!強引??!!)いえ、あの私、そんなつもりは……」 ラドクリフは左手の指に口付けながらぐいぐい距離を詰めてくる。 「(お互い……ですか……一体どう解釈したらそうなるんだよーー? 僕気があるなんて一言も言ってない……) あ、の……ほんとに、近いです、や、」 ラドクリフはアイビーが離れようとするのを許さず、腰を引き寄せ、腕の中にスッポリと収めた。 「?? や、あの、ほんとに離してくださ、あ」 アイビーは自分がなぜこの男と抱き合っているのか訳が分からず、嫌だと言わんばかりに訴えた。その時だった。 「んん、ふ、ん」 ラドクリフはアイビーに口付けていた。 アイビーは少し苦しそうに喘ぎ、不器用に息継ぎをしている。 「はぁはぁはぁはぁ、何をなさ、んっ?! ふんっんん……(うそお……まじ勘弁して)」 ラドクリフは一度唇を離した刹那、今度は深く深く口付けをした。 何度も何度も口付けを交わした。アイビーは不思議な感覚に陥った。 そしてラドクリフの目を見つめると金縛りにでもあったような感覚で動けない。 この幻想的な空気に飲み込まれて抜け出せないのか…… 互いに見つめ合い、きつく抱きしめられ……舞踏会の間中そうしていた。 アイビーはまるで自分が自分ではないように感じた。ラドクリフはアイビーを離さなかった。 「アイビー?! どこなの? 帰るわよー!」 「?! 申し訳ございません、私もう行かなくちゃ……」 ラドクリフは、立ちあがろうとしたアイビーの手首を掴み、引き寄せて囁いた。 「……今度はいつ会えるの? 君はどこに住んでいるの? すぐに会いに行くよ。君に結婚を申し込みたいんだ」 !! まずい、非常にまずい。アイビーは男でルイーザの付き人。これまた問題しか……。あぁ、今夜は本当に問題しか起こらない。 「っつ!」 アイビーは返事をせずにルイーザの元へ駆け寄った。 「アイビー? どうしたの? あなた……あれはラドクリフ様じゃないの。あなたを見ていらしてよ」 「……お嬢様、帰りたいです」 まるでラドクリフから逃げ出して来たかの様に、アイビーはルイーザの首に手を回して飛びついた。 ルイーザはすぐに理解し、優しく抱き寄せた。 「……帰りましょう、アイビー」 アイビーを馬車へ乗せた。 ────── 「アイビー、彼と何があったの? 話して。そうでなければあなたを守れないわ」 アイビーはルイーザに舞踏会での出来事を話した。二人で見つめ合い、抱き合い、キスをして、長い時間そうしていたこと。 なぜそうなったのか自分でも分からないこと。 ……求婚されそうなこと。 ルイーザはため息を吐き、頭を抱えた。 「アイビーアイビーアイビー……何やってるのよ? あんなに沢山の女がいるパーティーで、よりにもよって学校一のイケメン捕まえる?! どゆこと? 私言ったわよね? 女友達の一人や二人……あ〜もうそれはいいわ。あなたが男だとは、スクールのアイビーだとはバレてはいないのね?」 「たぶん、そう思います。スクールの僕のことだってあまり知らないでしょうし(共通点ないしね。むしろなくていい。目立ちたくないし……)」 「じゃあ、次回の一月後の舞踏会できちんとお断りするのね! お付き合いも婚約も何もかも! わかった?」 「えーーーーっ? 僕また行くんですか……? 嫌ですよ……」 アイビーは半分泣いていた。 「自分で蒔いた種よ。それに私にも護衛が要るしねん」 「(はあーーーーーー。憂鬱。て言うか、お嬢様の蒔いた種だろ?  これ……ため息しか出ないんですけど。 ラドクリフ様のあの瞳がダメだ。 見つめられるとまるで吸い込まれるようで、体が動かなくなる。 キスを求められると体が自然と応じてしまったんだよな……。)」 ────── 「やあ、アイビー、おはよう。良い朝だね」 友人のケニーから挨拶された。 「おはよう、ケニー。何か良いことあったの? ご機嫌だね?」 「やっぱわかるー? さっきリサから今日の舞踏会へお招きがあったんだよ。アイビーも行くだろ?」 「僕は……ルイーザ様次第だよ。でもルイーザ様は奔放だからね。リサともあまり親しくはないみたいだし……」 「そっか……、あ! 見てみろよ。ラドクリフ様! 昨日の舞踏会で出会った令嬢を探しているんだと! 何でも求婚するとかで舞踏会という舞踏会をまわるのだとか……。 初めて聞くよな、ラドクリフ様の女性問題(笑)俗世間のことには惑わされず、騎士道を突き進むって方だったもんな。 あれだけの方を惚れさせるなんてどんな令嬢だよ? 見てみたいもんだな。」 「(複雑だ、あー早くラドクリフ様問題終われー)」 ────── 「アイビーっっ!! 今日の舞踏会行くわよっ!」 「!! もうっ何でそうなるんですかっ? 行きたくないですよっ? 僕はっ」 「リサにエリーゼ様取られる訳にはいかないのよっ! これからはエリーゼ様がいらっしゃる舞踏会には全て行くからそのつもりで」 「(えーー? それって必然的に弟のラドクリフ様もいらっしゃるってことでは……ルイーザ様? 僕のこと完全に忘れてるでしょ……)」 もちろんアイビーには拒否権などあるはずもなく……。 「何で今日も女装の必要があるんですかーー! 男の格好がいぃぃぃぃ!」 「ダメよぉぉぉぉ! きちんとお断りしていらっしゃい! この先ずっと付き纏う問題なのよ? 今断ち切っておかないとずっと探され続けて、何よりラドクリフ様をお気の毒に思わないの?」 「……わかりました。きちんとお断りすれば良いんでしょう……ブツブツ……(ほんっとお嬢様って勝手! 我儘!)」 「はい、よろしい。 見て! 今日のアイビーのドレスも素敵なのよ! 今日は真紅のベロアにダイヤを散らしてあるの! 美少女〜」 「嬉しくありませんし、無駄遣いですからっ!!」 ────── 舞踏会場へ到着するとラドクリフの姿は見えず、アイビーはひとまずホッとした。 束の間、後ろから腰を抱かれ耳元で囁かれた。 「会いたかった……アイビーっ!!」 「っっ、離してくださいっ!!(で、出た!) お話しがありますから、とにかく離してっ!」 アイビーはラドクリフを突き飛ばした。 ラドクリフは少し驚いたようにしていたが、ニコリと微笑んで見せた。 「バルコニーへ出ようか。ゆっくり話が出来る」 ラドクリフにエスコートされて二人は外へ出た。 「(アイビー、上手くやんなさいよ。全く男のくせに男相手に何やってんだか……って嘘でしょっっ?? 何でキスしてんのよ!!)何やってんのよアイビーー!!」 ────── バルコニーへ出て、ラドクリフに背を向けて、深呼吸をし、アイビーは話し出そうとした。 ところが、ラドクリフが後ろからアイビーを抱きしめ、顎を自分の方へと寄せて口付けをした。 アイビーはもがいていたが、ラドクリフの方が力も上で、後ろから羽交締めにされていて動くことが出来ない。 やっと解放されて、正面を向かされた瞬間力一杯抱きしめられた。 「はぁはぁはぁ、ラドクリフっ、痛いっ、離しっ……!!(力技なんて……この卑怯者〜絶対勝てないじゃん!)」 「嫌だ! 離せば君は逃げていく。もう離しはしない」 顎をグイッっと上向かされて深く深くキスをされた。舌を絡ませあい、唾液が溢れ、どちらのものかも区別がつかないほど混じり、くちゅくちゅと卑猥な音が響いていた。 また長い間そうしていると、ガヤガヤと数名の男女がこちらへ出てきたところだった。 「まーー! ラドクリフ様! 見つかったのですね! 謎のアイビー嬢が!」 皆口々にラドクリフへと祝いの声をかける。 「ああ。もう今度こそ逃さないから。今日こそは連れ帰らせてもらうよ。私の未来の花嫁なんだ」 「ははははっ……」 みんなで笑って冗談めかしているが、アイビーにはラドクリフが本気だとわかっていたし、自分は男なのでそんなこと絶対に起こり得ないこともわかっていた。 「ラドクリフ様、あの! 私もう本当に帰らなくちゃ、あっっ、やっ、何をなさるのっ? やめっんっ(……ダメだ……気持ちがいい……もう抗えない……)」 ラドクリフは皆の前だというのに、激しく、いやらしくキスを再開した。 「おお、これはこれは。失礼しました……」 皆はそそくさと去っていき、残された二人は絡みあったままだ。 アイビーはベンチに押し倒され、首に舌を這わされた。 もうアイビーからは喘ぎ声しか出てこない。 右首を強く吸われくっきりとした痕がついた。 首元には夜色のネックレスが輝いていた。 ────── 「アイビー! あなた何をしているの?!」 「ルイーザ様!」 「ルイーザの知り合いなのか? 聞いてくれ、ルイーザ。俺は真剣にアイビーが好きなんだ。今日は屋敷へ連れて帰りたい。そして明日お父様たちに紹介するつもりだ。きちんと公式に婚約する。 アイビーが高等部を卒業したら結婚するつもりだ。アイビーにはスチュアート家へ入ってもらう。今日は邪魔するな」 「ごめんなさいね。そうもいかないのよ。 この子、私が無理矢理連れ出しているから、この子の親は何も知らないの。 夜遊びをしているなんて知れたら大変なことになるの。 ね、今日のところは勘弁して。また次の舞踏会へ必ず連れて来ると約束するから」 「……そういうことなら、今日のところは引く。だけど諦めない。 必ず俺の両親にも会っていただく。 それから、必ずアイビー、君のご両親にも許しを請いに行く」 ────── 「アイビー? 聞いてるの? あなたお断りするはずだったわよね? 何してるのよ? 前より酷いじゃない! あなた押し倒されていたのよ? 間違いがあったらどうするのよ?」 ハッとしたアイビーは叫び気味に言った。 「間違いなんてある訳ないですよ! 僕は男です! 嫌でもそれはラドクリフ様にわかることです! 服だって無理矢理脱がされても困りません! 男だから、大丈夫なんです! 僕は男です……(なんで涙なんか……)」 アイビーの目からはキラキラと宝石の涙が零れ落ちた。 「アイビー……あなた……ラドクリフが好きなのね?」 「……っふ、っく、ふふっ、っふ……なにも……わかりませ……(あんな奴、好きなわけ……ない……)」 ルイーザは優しく抱きしめて、頭を撫で続けた。

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