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第3話 逃げ場なし!完全包囲網でロックオンされました。

ラドクリフは朝から機嫌が悪かった。 やっとアイビーを見つけたのに、また邪魔されたこと。 そしてイライラの原因となった昨夜の少女を見つけて忌々しく見つめた。ルイーザだ。 「アイビー! 早く! こっちへいらっしゃいな」 「っ?! (そうだ、アイビーと言う名だ)」 いつもルイーザと一緒にいるのはアイビーと言う名の少年……? 「ヒュ〜アイビーだぜ! 今日も可愛いなぁ、そんじょそこらの女より良いぜ。本当に男なのかひん剥いてやりたいな。あーやばい、こんなこと考えてたら勃っちまう……」 「お前まじでやめろよ……襲うなよ? まじでこえー奴」 周囲ではアイビーについてのこんな野次はいつものことだし……ラドクリフは恋愛も、ましてや男の子になんて興味もなかった。特に気にも留めていなかった。 似過ぎている……確かめなければならない。 ────── 「アイビー、おはよう。元気かい?」 「?! ラ、ラドクリフ様? お、おはようございます。突然どうなされたのですか? 僕たち……その、お話しした事ないですよね……?(ヒィッ?! なになに?! お願い勘弁して……恐い、ラドクリフ様、何考えてんの?)」 プラチナブロンド、ブルーの瞳、真紅の唇。 ?! 右首元には昨夜ラドクリフがアイビーに付けた跡がくっきりと。 「アイビー、こっちにおいで」 アイビーは手を引かれ校舎裏へと連れて行かれた。 「あ、の? ラドクリフ様? 待ってください! 離して!」 「君って、俺の片想いの相手に似ている気がしてね……ごめん!!」 『ドサっ!』 ラドクリフはアイビーを押し倒した。 「ラ、ラドクリフ様? や、やめてください……何を……んん?! んふう……(この人、なんでこんな強引なの?! 信じらんない……)」 ラドクリフはアイビーに無理矢理唇を押し付けた。口を開かせ無理矢理口腔内を掻き回し喘がせた。 アイビーからは涙が零れた。 「やめてください……。お願いします……。やめ……て……いくらあなたの想い人に似ているからと言っても……これは酷すぎます」 アイビーからは止めどなく涙が溢れ(あふれ)出た。 「っ!! アイビー……泣かないで、ごめん、俺が悪かった。本当にごめん。ね? 泣かないで」 そう言うとラドクリフは優しくアイビーを引き寄せた。 「(あぁ、アイビーの匂いだ……アイビーの抱き心地だ……俺のアイビーだ。首元には夜色のネックレス。間違いなくアイビーだ。これ以上怖がらせてはいけない……。今は焦るな……!) ごめんね、あまりにも俺の好きな人に似ていて、感情が抑えられなかったみたい。 普段は中々会えない人だから。 こんなことしておいて嫌かもしれないねど、アイビー、良かったら俺と友達になってよ。授業のあと、お昼は迎えに行くから、一緒に食べよう?」 「あの、でも、私は使用人の身です。私なんかとご一緒されたのではラドクリフ様の品位を疑われてしまいます! どうかお考えを改めてくださいっ……私のことなど捨て置かれますように……(もう、ほんとこの人無理。人の話聞かな過ぎ。なんで僕の周りってみんなこんななの?何とかして回避して……)」 「話し方が硬いよ。普段通りに話して。いいね?」 「わかりました……ラドクリフ様。でも、この件はお断りしたい……あ、あの? ラドクリフ様? や、あの? やめっ……近いです!(ああ、面倒なことになってきた……正体がバレバレなんじゃ……! お嬢様助けてーー!)」 「アイビー! 探したのよ!──またあなたなの? ラドクリフ様。この子は私の付き人よ?  何のご用かしら?」 「学校での過ごし方について、君の許可がいるとも思えないが、念のために伝えておく。アイビーとは友達になったので、今日から昼食は毎日二人で取ることになった」 「なっ?! 勝手に……!」 「帰りも一緒だ。もちろん君の付き人なのだろうから君も俺と一緒ということになるが、そこは我慢してもらおう。本当は朝の迎えも出来るんだがどうする?」 「本当に勝手な人ね?!」 「決まりだ。帰りは迎えに来るから中庭にて待つように。朝は仕方ない。我慢する。アイビー、昼は教室まで行くよ。待ってて」 「!! 嫌です! ラドクリフ様! お断りします……なぜ僕が貴方の好きな人の身代わりなどに……僕はその方とは一切関係ないですから!」 「……そう。それでも構わないよ。君と、男の子の君と仲良くなりたいんだ。わかったね?  今日の昼迎えに行く」 ラドクリフには言い返しても通じない。 押し通されてしまう。 ────── 「アイビー! どういうつもりよ!! 何でまた訳のわからないことになっているのよ? もうっ? どんどん悪化していくじゃない!」 アイビーは正直に話した。朝の登校中に話しかけられて、裏に連れて行かれたこと。 そこでキスをされて、アイビーがアイビーに似てると言われたこと。 友達になろうと言われたこと。 「はぁ、それもうあの令嬢のアイビーが男のアイビーだと気付いているじゃない……」 「その逆の可能性もあると思うんです。 もしかしたら、今の僕のことも女だと思っている可能性も。 でなければ、公爵家の後取りである方が男を追い回して遊ぶ訳ないと思うんです。 なので、何とかして男だとわかってもらおうと思います」 「何とかって……ラドクリフの前で脱ごうって言うの?」 「……方法は考えますが、大方そのつもりです」 「その方法は賭けよ? 相手がそのつもりなら……男でも構わないならば……その……最後までされてしまうわ……。あなたの力では抵抗出来ない」 アイビーはグッと言葉に詰まった。 「それでも、それしか方法はないでしょう……? それに……賭けても良いです。ラドクリフ様が男を選ぶとは思いません……」 アイビーは自分の言葉に胸が痛んだ。 それからと言うもの、学内でラドクリフのアイビーへの寵愛ぶりはすごかった。昼はいつも豪華なコースランチ。デザートまでアイビーの好みのものばかりを作らせ、帰りはいつも中庭で出会い激しく抱擁し、馬車までのエスコート、屋敷への見送り。 ……朝と授業中以外はベッタリと一緒だ。 ────── 「あーー、イライラする。こっちはラドクリフ様の顔なんて見たくもないのに、本当に毎日毎日……。 これでエリーゼ様に似ているから耐えられるものの……ブツブツ」 「ルイーザ様、申し訳ありません……。やはり一緒に行動するのはお断りしましょう(僕だってしんどい……)」 「二人のアイビーが同一人物で、しかもちゃんと男だと言うことをわかってもらうためには、このままの方が良いわ。 私のことは大丈夫よ。ほんの少しウザかっただけ。毎日毎日イチャイチャと……ブツブツ……」 アイビーは次の舞踏会で女装して会うのが怖かった。 きっとラドクリフはこれ以上女のアイビーと進むことを待ってはくれないだろう。 その時に男とわかって手酷く捨てられるよりも、今の男のアイビーのまま捨てられた方がマシだ。 今日のお昼にこの正直な気持ちと、男のアイビーがあの女性のアイビーだということを伝えることにした。 ────── 「やあ、待ったかい?」 「いえ、全然。ラドクリフ様……。今日は少しお話しがあります」 「なぁに? 改まって。いいよ。ご飯食べながら話そ」 アイビーは切り出した。 「まず、前提として、僕が男だということはご存知ですよね?」 「ああ、もちろん。どうしたの? 誰かに何かされたの??」 「いいえ、では、舞踏会でお会いになられている女性のアイビー様。……僕だと言ったら?」 「──」 ラドクリフは答えなかった。答える代わりにアイビーを引き寄せキスをした。 「あ、ラドクリフさ、あ。ん、ふっ」 アイビーは押し倒され深く深いキスをされた。力が抜けて抵抗が出来ずにいた。 ラドクリフはシャツの中に手を入れて膨らみのない平らな胸の小さな突起に手をかけた。 「ふぁっ?!」 アイビーはあまりの衝撃に大きな喘ぎ声を上げた。 ラドクリフがハッとしてアイビーから離れた。 「ごめん! こんなつもりじゃ……」 バツが悪そうな彼はアイビーを引き起こした。 「……もう戻ろうか?」 そう言うといつもとは違い、笑顔もエスコートもなく別れた。 手を差し出すことさえも躊躇しているようだった。 帰り道も当然会話はなく、そのまま馬車を降りた。 「アイビー、上手く言えたの? ラドクリフ様の態度が全然違うけど、大丈夫なの?」 「ふぇ、ル、ルイーザ、ルイーザさまぁ……うぇふぇんふ、ふぇ、……」 「ああ、伝えたのね。……今は何も聞かないわ。落ち着いたら話してちょうだいね……」

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