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高校生最後の約束。

センターの遥か向こうへ消えていった白球を、二人はしばらく黙って見つめていた。 静かなグラウンドには、ボールが転がる音だけが響いていた。 陽彩はバットを肩へ担ぎ、小さく笑う。 「最後くらいは打たせてもらったよ」 「いや」 莉珠は首を横に振る。 「まだ負けてない」 その一言に、陽彩は思わず吹き出した。 「負けず嫌いすぎでしょ」 しばらく笑い合ったあと、静かな時間が流れる。 先に口を開いたのは莉珠だった。 「お前」 「ん?」 「進路、決まったのか」 陽彩はゆっくり頷く。 「ドラフト受けて、日本でプロ目指そうかなって」 高校最後の夏、日本一になった蒼羽学園。 その中心だった陽彩には、すでに複数球団から調査書が届いていた。プロ入りはほぼ確定。 「そうか」 短い返事。今度は陽彩が聞き返す。 「莉珠くんは?」 一瞬だけ風が止んだ。 「俺は」 莉珠は空を見上げる。 「メジャーへ行く」 陽彩は思わず目を見開いた。 「……メジャー!?!?」 「ああ」 あまりにもあっさりと返ってきた答えに、陽彩は言葉を失う。 メジャーリーグ。野球をやる者なら、一度は夢見る世界。それを高校卒業と同時に口にする男が、目の前にいた。 「向こうの球団から声が掛かった」 「……すごい」 「そうでもない」 莉珠は興味なさそうに肩へバッグを掛ける。 その姿はいつも通りだった。まるで進学先でも話すような気軽さで、世界最高峰の舞台へ行くことを決めている。 陽彩は思わず苦笑した。 「僕もいつかメジャー行けるように、頑張らないと」 それが陽彩の夢だった。莉珠は静かに頷く。 「そうか」 短い返事。それだけ言うと踵を返して歩き出す。 「莉珠くん」 陽彩が呼び止めると、莉珠は足を止めた。 「次、勝負する時は敵同士だと思うけど! 莉珠くんの球、打ってみせる」 春風が二人の間を吹き抜けた。 莉珠が振り返る。真っ直ぐ陽彩を見つめると、小さく口角を上げた。 「来い。世界で待ってる」 それだけ言い残し、今度こそ歩き出した。

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