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36.悪いのは俺だけど
女性は何度も俺たちにお礼を言ってくれた。
とっきーはちゃっかりプラコレを紹介してたから、いつかお店に来てくれるかもしれないな。
そこまで大きな騒ぎにならなかったし、女性も大丈夫だって言ってたから特に警察へ届けたりはしなくていいってことになった。
念のため友達との待ち合わせ場所まで送っていって、三人で無事を確認してから女性と別れた。
+++
げんちゃんの車のある駐車場まで戻ってきたけど、その間二人とも無言ですたすたと早足気味に俺の前を歩いていた。
このパターンは……怒ってるときだ。
しかも、二人同時っていうのは厄介だよな。
まあ、俺がすぐに戻らなかったのが悪いんだけど。
車の前で立ち止まると、仲良く二人同じタイミングで俺の方へ振り返った。
「蒼樹 、何も起こってないみたいな顔してるけど。俺たちが言いたいこと、分かるよな?」
「アレだろ? アレ。うん、アレだよな」
とっきーの声が低い。そして、げんちゃんの表情も真剣そのものだ。
必死に何か言おうとしてもごまかせるような言葉も出てこない。
でも、二人が言いたいことって言われても……どのことだろう?
すぐ戻らなかったことか……それとも、一人で行動したことか?
何にせよ思い当たることだらけで、何を言えばいいのか分からない。
真面目な顔でにらまれても、怒ってるってことくらいしか察することができなくてもどかしい。
俺も一応は色々考えた結果で何とか事態が収まったし、そろそろ二人にも気持ちを落ち着けてもらいたいのに。
俺を見ている二人の視線が、それだけでは許してくれなさそうだ。
「蒼樹、女性を助けようとしてたことは立派だ。男らしいよ。でも下手したら蒼樹が殴られてたかもしれないだろ」
「それは……うん。二人が来なければ一発もらって通報できたらいいなくらいに思ってた。本当は店の中へ駆け込もうとしてたんだけど、服をつかまれちゃったから動けなくて……あはは……」
何となく二人の顔を見ていられなくって、顔を逸らす。
うやむやにしようとしたのに、とっきーがわざわざ俺の前まで回り込んできてじぃっと俺の顔を覗き込んでくる。
「あのなあ。飲み物買いに行くって言ったのになかなか戻ってこなかったから、心配したんだぞ」
「ですよね」
笑ってごまかそうとしたんだけど、げんちゃんも表情を一切変えないし……さすがにちょっと怖い。
げんちゃんはとっきーと違って無言のままだし、どうしよう? どうしたら許してくれるんだ?
「その……なんていうか。助けてくれてありがとう。で、心配かけてごめん」
笑ってごまかそうとすると、げんちゃんにぎゅっと抱き寄せられてしまった。
力が強いから、簡単に引きはがせない。
周りに誰もいない裏道だからいいけど、誰かが俺たちを見たらなにをやっているのかと思われそうだ。
「げんちゃん、苦しいって! うぅ……」
「無茶するな。蒼樹はケンカ強くないだろう? 怪我でもしたら大変だ」
「わ、分かったから! 離してくれって」
げんちゃんの締め付けから心配してくれる気持ちは伝わってくるんだけど、ガチで力が強いからそろそろ離してほしい。
息苦しくて酸欠になりそうだ。
「玄暉 、おっまえなぁ……そろそろ蒼樹が息苦しくてやばそうだから離せ」
とっきーが腕を差し込んで俺とげんちゃんを引きはがしてくれた。
はぁ……苦しかった。でも、それほど心配をかけたってことだよな。
「……悪い」
「いや、悪いのは俺だから。心配かけたのは反省してるけどさ、俺も男だっていうこと忘れてない? 心配するならあの子であって俺じゃ……」
俺が訴えると、とっきーは盛大にため息を吐き出した。
げんちゃんも唸るように額 に手を当ててぷるぷるしてるんだけど……俺、またマズイこと言ったのかな。
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