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第10話 もっと触れて
ケントと付き合い始めて、3か月が経つ。
触れ合うのは、いつもキスまで。その先にはまだ進んでいない。
もともと、レオはそういう欲求が薄かった。
月に1、2回、身体の生理的な反応を処理するだけ。
理性を手放し、自分の内側にあるどろりとした欲望に支配される感覚が、あまり好きではなかったからだ。
けれど、ケントと付き合うようになって、レオの中の何かが少しずつ変わり始めている。
好きな人に触れられる喜び。唇が触れ合うだけで、背筋が甘く痺れるような快感。
気持ちいいと感じること、快楽を覚えることは、決して悪いことじゃないと、ケントが教えてくれた。
今夜のキスは、いつもより長くて、ひどく深かった。
「おやすみ」と笑って自室へ戻っていったケント。
パタン、とドアが閉まる音がしたあとも、レオの唇には彼の体温がべったりと張り付いていた。
消灯した自室。暗闇の中でベッドに潜り込む。
落ち着こうと目を閉じても、ケントの熱い吐息、絡み合った舌の感触、頬を包む大きな手の温もりが鮮明に蘇ってくる。
おかしい。ただ思い出しただけなのに、身体の奥がカッと熱く火照り、息が苦しくなる。
自分の身体の異変に気づき、シーツの中でゆっくりと首をもたげた。
下腹部に集まる、熱く重い感覚。恐る恐るパジャマのズボンに手を入れると、まだ誰にも許したことのない、己自身の熱い塊に触れた。
薄いピンク色をした、綺麗なその輪郭が、切なげに熱を放って震えている。
「ん……ぁ、っ……」
微かに震える指先で、そっと優しく触れる。
それだけで、ビクリと大きく腰が跳ねた。
「は、ぁ……っ、ん、ぅ……っ」
優しく、優しく撫でる。脳裏に浮かぶのは、ケントの顔ばかりだ。
甘いキスの記憶を反芻するたび、目尻から快楽の涙がツーッとこぼれ落ちていく。
己自身からも、とめどなく透明な雫が溢れ、手のひらと擦れ合うたびに、ちゅ、じゅ、と微かな卑猥な水音が静かな寝室に響いた。
体温が、どんどん上がっていく。
ケント。好き。
ケント。
どうしようもなく、好き。
もっと、この熱い身体に触れてほしい。もっと深く、壊れるくらい愛してほしい。
「んっ……ぅ、……っ」
激しくなる呼吸を隠すように、レオはパジャマの裾を口に咥え、強く噛み締めた。
己の最も敏感な場所に指先が触れた瞬間。
「んんっ……!! ふ、……っ、ぁ」
身体が弓なりに大きく撓り、一気に頂点へと達する。
声にならない甘い声が、布越しに漏れた。何度も、何度もドクドクと熱く脈打ち、目の前が真っ白に明滅する。
まだ純潔なままの綺麗な秘部から、白い欲望が手のひらに向かってとめどなく吐き出されていった。
止まらない脈動。身体の奥を駆け抜ける強烈な快楽に、レオはただ力なく身を委ね、シーツに深く沈み込んだ。
しかし、荒い呼吸が落ち着いたあとに襲ってきたのは、最悪の気分だった。
好きな人の顔を思い浮かべて、一人で自分を慰めてしまったという、どろどろとした罪悪感。
そして、自分の中に芽生えた生々しい欲望が、日に日に大きく、制御できなくなっていくことへの得体の知れない不安感。
手のひらを汚した白濁を見るたび、羞恥心で胸が押し潰されそうになる。
これは、ケントには絶対に言えない、自分だけの汚い秘密だ。暗闇の中で、レオは膝を抱えて小さく丸まった。
けれど、この時のレオは、まだ知る由もなかった。
壁を隔てた自室のベッドで。
ケントもまた、同じように毎日この行為を繰り返し、熱い吐息をこぼしながら、いつかレオの一番柔らかい場所へ触れるその日を、狂おしいほどに期待し続けているということを。
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