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第12話 いつかオレを受け入れて
金曜日の夜。
部屋には、間接照明の柔らかな光が落ちている。
週末という解放感が、空気まで甘く緩ませていた。
二人きりの、静かな時間。
付き合い始めてから、数か月。
二人の関係は、まだキスより先には進んでいない。
けれど、 触れ合う時間は、確実に長く、重くなっていた。
ベッドに並んで座る。
肩と肩が触れ合う距離。
どちらからともなく、視線が絡んだ。
自然な流れで、唇が重なる。
最初は、ついばむような軽いキスだった。
ちゅ、と。
可愛らしい音が響く。
だが、すぐにケントの顔が傾けられた。
鼻先がすれ違う。
唇が、深く割られた。
「んっ……ぁ、」
貪るような、激しいキス。
今までとは違う。
荒々しく、熱を帯びたケントの吐息。
それが、直接レオの中に流れ込んでくる。
口腔内を、熱い舌が遠慮なく犯していく。
上顎をなぞられ、歯列を舐め上げられる。
「ん、ぁ……っ、んんっ……」
息ができない。
けれど、拒む気にはなれなかった。
レオも必死に、彼の首に腕を回して応える。
舌と舌が絡み合い、互いの唾液がドロドロに混ざり合う。
ちゅ、じゅぷ、と。
ひわいな水音が、静寂な部屋に響き渡った。
「は、ぁ……っ、け、んとっ……」
熱を帯びた声が、どうしても漏れ出てしまう。
名残惜しそうに、唇が離れた。
つ、と。二人の唇の間に、銀色の糸が引いた。
艶やかに光り、ぷつりと切れる。
荒い呼吸。ケントの琥珀色の瞳が、熱っぽくレオを見つめていた。
レオの胸の奥で、心臓が早鐘のように打っている。
下腹部に、重い熱が溜まっていく感覚。
まただ。
最近、いつもこうなる。
ごまかすのは、もう限界だった。
レオは、震える唇をゆっくりと開いた。
「……ケント」
「ん?」
「最近……ケントとキスすると、身体が、変で」
俯いたまま、正直に打ち明ける。
「熱くなって……どうしようも、なくて……」
引かれるかもしれない。
欲望にまみれた、汚い自分。
一人で泣きそうになっていると、ケントの大きな手がレオの頬を包み込んだ。
顔を上げさせられる。
そこにあったのは、ひどく安堵したような、優しい笑顔だった。
「……オレも、同じ」
「え……?」
「同じというか……毎日、レオのこと考えながらしてる」
まいにち。
その言葉の響きに、目を丸くした。
毎晩、一人で。
おれのことを思い浮かべて。
驚きと共に、胸の奥に温かいものがブワッと広がった。
自分だけじゃなかったんだ。
汚い秘密だと思っていた欲望は、二人で共有するものだった。
「もっと、レオに触れたい」
ケントの掠れた声。
熱を孕んだその響きに、レオは小さく頷いた。
それが、合図だった。
ケントの右手が、パジャマのズボンの上から、優しくレオを包み込んだ。
「あっ……!」
ビクン、と身体が大きく跳ねる。
布越しなのに、ケントの掌の熱がはっきりと伝わってくる。
ゆっくりと、撫で回される。
形を確かめるように。 慈しむように。
「ん、っ……く……っ」
声を抑えようと、唇を噛み締める。
だが、快感は容赦なく波のように押し寄せてくる。
自分以外の誰かに触れられるのは初めてだった。
ケントの手の中で、少しずつ硬さを帯びていく。
熱く、張り詰めていく。
苦しい。 ズボンの中で押さえつけられた熱が、今にも弾けそうだった。
「苦しいよな……出してあげる」
ケントの手が、ウエストのゴムに掛かる。
躊躇いなく、下へと引き下げられた。
パジャマと一緒に、下着も脱がされる。
冷たい外気が、肌に触れた。
解放された、熱。 ぷるんと、桜色に色付いたそれ。
すでに先端からは透明な雫が溢れ、酷く濡れそぼっている。
「見、ないでっ……はずかし、っ」
両手で顔を覆う。
だが、ケントは愛おしそうに目を細めた。
「綺麗だ。すごく可愛い、レオ……」
ケントが、自分のズボンに手を掛けた。
そして、彼自身の熱が外へ放たれた。
レオは、指の隙間からそれを見て、息を呑んだ。
黒く、猛々しい。 血管が隆起し、すでに痛そうなくらいに張り詰めている。
レオのものとは、全然違う。圧倒的な雄の象徴。
「レオ……さわって」
右手を、そっと引かれる。
ケントのそれに、触れさせられた。
「っ……!」
熱い。
そして、恐ろしいほど硬い。
脈打つ鼓動が、掌を通してビクビクと伝わってくる。
これが、ケントの欲望。自分に向けられた、熱。
そのまま、レオはベッドへと押し倒された。
上に、ケントが覆い被さる。
「あっ……んんっ……!」
レオの脚の間に、ケントが入り込む。
そして。レオの熱と、ケントの熱。お互いの最も敏感な部分が、直接、擦り付け合わされた。
「ひぁっ! ぁ、あッ……!!」
電流が走ったような、強烈な快感。
レオの声が、ひっくり返る。
ケントの大きな手が、レオの手に重ねられた。
一緒に、二人の熱を包み込む。
ゆっくりと、上下になぞっていく。
「あ、……っ、ん……んっ! だめ、これ、……おかしくなるっ……!」
初めて知る、未知の快感。
摩擦が起きるたび、頭の芯が白くスパークする。
恐ろしくて、腰が逃げそうになる。
だが、ケントの空いた手が、レオの腰を硬く押さえつけた。
「逃げないで。レオ、一緒に気持ちよくなろ……っ」
逃げられない。
逃げる場所なんて、どこにもない。
ちゅちゅ、じゅちゅっ。
溢れ出たお互いの雫が、混ざり合う。
手が動くたび、ひわいな水音が激しく鳴り響く。
「あッ! ぁ……あッ! け……んとっ、……ん、あッ!」
必死に我慢しようとするのに。
口からこぼれるのは、だらしなく甘い鳴き声ばかりだ。
頭が真っ白になる。
思考が溶けていく。
身体の奥底から、どうしようもない波が湧き上がってくる。
「あ、いく……っ! けんと、……おれっ、い……くっ……!」
「オレも……っ、レオっ……!」
重なった手が、さらにスピードを上げる。
「あ……ぁッ!!」
限界だった。
身体をガクガクと震わせながら。
レオは、白い欲望を勢いよく吐き出した。
ほぼ同時に、ケントの身体も大きく跳ねる。
「んっ……」
熱い絶頂。
レオの真っ白な下腹部に。
ケントの、より白く濃い粘液が、とめどなく降り注いだ。
「はぁっ……はぁっ……」
ぬるい、不思議な感覚。
肌に張り付く、ケントの熱。
肩で息をしながら、レオはただ、それを受け入れていた。
心地よい疲労感と、圧倒的な満たされ感。
涙が、ツーッと頬を伝ってシーツに消えた。
しばらくして。
激しい呼吸が、落ち着きを取り戻す。
ケントが身を屈め、レオの唇に触れた。
ちゅ、と。今度は、ひどく軽くて優しいキス。
「レオ……」
名前を呼ぶ声が、鼓膜を甘く揺らす。
「もっと、もっとレオを知りたい」
ケントの指先が、レオの汗ばんだ前髪を梳く。
「オレにしか見せない姿、見せて」
そう言いながら。
ケントのもう片方の手が、レオの脚の間を滑っていく。
股の奥。固く閉ざされた、小さな蕾。
そこに、指先が触れた。
「っ……!」
びくり、と肩が跳ねる。
そこを、愛おしむように、優しく撫で上げられた。
「いつか……ここに、オレを受け入れてほしい」
耳元で囁かれた、低く熱い声。
その言葉の意味を理解して、身体の奥がじんわりと熱くなる。
これから待ち受ける、まだ知らない世界。
そこにはきっと、今日以上の快楽と、溶け合うような愛情があるのだろう。
ケントの深い瞳に見つめられながら。
レオは、期待と少しの恐怖で。
甘く、小さく、身体を震わせた。
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