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第18話 熱を共有することの喜びと心地よさ
部屋の空気は、少しだけひんやりと冷たかった。
肌を撫でる夜の空気はどこか冬の気配を残している。
しかし、ベッドの上で重なり合う二人の間だけ。
まるで真夏のように濃密な熱がこもっていた。
初めてお互いを知ったあの夜から、数日。
まだお互いの体温に、触れ合いに、完全には慣れきっていない。
初々しさと、どうしようもないほどの熱情が入り混じる、二回目の夜だった。
「んっ……ふ、ぁ……っ」
静寂に包まれた部屋の中に、レオの甘く、小さく震えるような吐息が漏れる。
唇と唇が、隙間なく密着していた。
深く、濃厚なキス。
チュッ、ジュル、と、静かな空間には卑猥なほどに響く水音が絶え間なく続く。
レオはまだ、こういう深いキスにすら全然慣れていない。
息継ぎのタイミングも分からず、ただケントにリードされるがまま。
きゅっと睫毛を震わせて目を閉じている。
それでも、ケントから注ぎ込まれる圧倒的な熱と愛情を。
レオなりに、一生懸命に健気に受け入れようとしていた。
背中に回されたレオの腕が、ケントの服をぎゅっと頼りなげに掴む。
そのささやかな抵抗とすり寄るような仕草。
ケントの理性をぐらぐらと揺さぶった。
ゆっくりと、名残惜しむように唇を離す。
銀色の糸が微かに光り、ぷつりと切れた。
「……は、ぁ……っ、ふ……」
酸素を求めて荒い息を吐くレオの顔を見る。
その頬は、冷たい空気の中にありながらも。
すっかり熱を帯びて鮮やかな桜色に染まりきっていた。
ケントに何度も吸われ、噛み付かれた柔らかな唇は、いやらしく濡れて赤く腫れている。
とろんと潤んだ瞳が、焦点の合わないままケントを見上げていた。
その無防備で扇情的な表情。
ケントの胸の奥で、どくりと重い欲望が跳ねる。
「レオ……綺麗」
「ん、……けんと……っ」
囁くような声に応えるように、レオが甘えた声で名前を呼ぶ。
ケントは、そのしっとりと汗ばんだ額に一度キスを落とすと、レオの全身を慈しむようにゆっくりと撫で始めた。
パジャマのボタンを、一つ、また一つと外していく。
そのたびに露わになる、真っ白な肌。
布地が擦れる微かな音だけが響く中、ケントはまるで壊れ物を扱うかのように。
極めて慎重にレオを脱がせていった。
少しだけ肩が強張っているのが分かる。
緊張しているレオを宥めるように。
ケントは何度も何度も、髪を撫で、頬を撫で、首筋に優しいキスを降らせた。
「力、抜いて……ゆっくりするから」
「……うん、っ」
露わになった白い肌に、直接手のひらを這わせる。
滑らかで、吸い付くような極上の手触り。
触れているだけで、指先からケントの細胞の隅々にまで幸福感が染み渡っていく。
許されることなら、このままずっと、一生触れていたい。
他の誰にも触れさせず、自分だけのものとして閉じ込めておきたい。
そんな暗く重い独占欲すら湧き上がるほど、レオのすべてが愛おしかった。
ゆっくりと下腹部へと手を伸ばす。
ゼリーをたっぷりと指に絡め、まだ解れきっていない、きつく閉じられた蕾へと優しく触れた。
「あっ……ん、ぁっ……」
びくっとレオの身体が跳ねる。
「痛くない? 大丈夫?」
「んっ……だい、じょうぶ、だから……っ」
強がるような、それでいてどこか期待に満ちた声。
ケントは焦る気持ちを必死に押さえ込み。
時間をかけて、じっくりと、本当にゆっくりとレオの後ろを溶かしていく。
一本、また一本と指を増やし、内部の熱い粘膜を優しく撫で、ほぐす。
レオの甘い声が、少しずつ、快感を含んだものへと変わっていくのを確認してから。
ケントはついに、己の最も熱く猛ったものを、レオの入り口にあてがった。
「レオ……入れるよ」
「あ、んっ……きて、けんと、っ……」
そして。
ゆっくりと、ゆっくりと、深く結合する。
「あ、っ……ぐ、ぅ……っ」
異物感と、押し広げられる感覚に、レオが顔を顰める。
シーツを強く握りしめ、目をぎゅっとつむる。
けれど、決して逃げようとはしなかった。
ゆっくりと侵入してくるケントの暴力的なまでの熱。
自らの内側へといっぱいに受け入れようと、必死に呼吸を整えている。
一番奥、これ以上ないほど深い場所まで繋がりきった時。
二人は同時に、深いため息のような吐息を漏らした。
「レオ……痛くないか?」
「ん、っ……、……平気、あつい……」
内壁が、ケントの熱を愛おしむようにぎゅっと締め付けてくる。
それに呼応するように、ケントはゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ、あ……んっ」
最初は様子を見るように、浅く、ゆっくりとしたストローク。
レオがその圧倒的な質量と摩擦に慣れてきたのを感じ取ると。
ケントは少しずつ、その動きに深さと速さを増していった。
「ぁ、っ……あ、あっ! んんっ……!」
快感が、波のようにレオを襲う。
声を我慢しようと、レオは必死に下唇を噛み締める。
両手でシーツが破れるのではないかというほど強く握りしめていた。
けれど、ケントが奥の最も熱い部分を的確に突き上げるたびに。
どうしても耐えきれずに甘い声が漏れ出てしまう。
「あ、だめぇ……っ、そこっ、ああっ! けんと……」
「レオ、声……もっと聞かせて。我慢しなくていい」
「はずか、し、っ……あ、あ、ぁああっ!」
切なく、泣き出しそうなほど切実な喘ぎ声。
我慢しようとすればするほど。
漏れ出る声はひどく淫らで、ケントの理性を焼き尽くす。
バチン、バチンと、肌と肌がぶつかり合う水音と打撃音が、冷たい空気の部屋に乱暴に響き渡る。
レオの身体が、ケントの動きに合わせてシーツの上で跳ねる。
「きもちい、っ、あ、っ……すごい、おく、くるっ……!」
「オレも……っ」
互いの熱が限界まで高まり、摩擦が極限に達する。
理性が完全に吹き飛び、ただ本能のままにお互いの存在だけを求め合う。
ケントがレオの腹の上で跳ねる大切な場所に手を伸ばす。
先走りですっかりびしょびしょになったものを、強く扱く。
「あぁっ、ん……、それ、だめ……!……いく、っ、あ、けんとっ、おれ、も……っ!」
「レオ、一緒に……っ!」
深い、最も深い場所を突いたまま。
激しい絶頂の波が二人を同時に飲み込み、目の前が真っ白になるほどの快楽が弾け飛んだ。
荒い呼吸だけが、静かになった部屋に響いている。
ケントは、まだ微かに痙攣しているレオの身体を優しく抱き寄せた。
汗ばんで前髪が張り付いた額。
涙で濡れた、長いまつ毛。
そして、赤く腫れた唇。
その一つ一つに、労うように、愛おしむように。
ケントは何度も何度も優しくキスを落とした。
チュッ、チュッ、と柔らかな音が響く。
「痛いとこない? 気分悪くない?」
耳元で、甘く低い声で優しく尋ねる。
レオは、少しだけ気怠そうに目を細めながら、小さく首を縦に振った。
「……うん、大丈夫」
かすれた声が、ひどく色っぽい。
そして、レオはシーツからゆっくりと右手を伸ばした。
その細く白い指先が、ケントの左耳へと触れる。
「……ピアス、似合ってた」
少しだけ照れたように、はにかみながらレオがそう伝えた。
その言葉、その仕草、その表情。
すべてが、あまりにも可愛すぎた。
心臓が鷲掴みにされたように、ドクンと大きく跳ねる。
(……可愛すぎるだろ、本当に)
あれだけの絶頂を迎えたにも関わらず。
ケントの下半身は、まだ全く萎える気配を見せず、猛ったままでいた。
レオの可愛さに当てられ、むしろ再び熱を取り戻しているくらいだ。
本能は、今すぐにもう一度レオを組み敷き、その奥深くまで再び侵入して、朝まで泣かせたいと叫んでいる。
けれど。
ここは、我慢だ。
ケントは、深く息を吐き出して、己の野獣のような欲望に必死に蓋をした。
まだ、今は急ぐ時期じゃない。
これは、まだ二回目なのだ。
苦しい思いをさせて、セックスそのものを怖いもの、辛いものだと思ってほしくない。
ゆっくりと、丁寧に愛して。
愛し合っている二人が、こうして肌を重ね、熱を共有することの本当の喜びと心地よさを。
自分自身が今、骨の髄まで噛み締めているこの圧倒的な幸福感を。
レオにもしっかりと自覚してほしいから。
だから今は、ただこの余韻に浸ろう。
「……ありがと。一生大切にする」
ケントは、欲望を隠した優しい微笑みを浮かべた。
そして、レオの汗ばんだ髪を梳くように、小さな頭を撫でる。
愛おしさをすべて込めて優しく、何度も何度も撫でた。
冷たい部屋の空気の中。
二人の重なり合った体温だけが、いつまでも優しく、確かにそこにあった。
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