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第28話 部室。秘密の空間。

「今日、部活で遅くなりそう」    朝のダイニング。  トーストをかじりながら、ケントが申し訳なさそうに言った。  ショウもリサも、今夜は帰らない。  すでに二人はそう告げていた。  広い家に、ひとり。    想像する。  少しだけ、胸の奥がすうっと冷たくなった。  いつからだろう。  ケントのいない空間が、こんなにも寂しく感じるようになったのは。 「教室で自習して帰ろうかな」    ぽつりと零した。  独り言のつもりだった。  すると、向かいの席のケントが身を乗り出した。   「タイミング合ったら、一緒に帰る?」    小声の提案。  レオにしか聞こえない、甘いトーン。  胸の奥の冷たさが、一瞬で温かいものに変わる。  嬉しかった。  夜道なら。  少しくらい一緒に歩いても、誰にもバレないだろう。    二人は秘密の関係だ。  学校では、ただの友達。  線を引いている。  でも、たまには。  一緒に帰るくらいしたって、バチは当たらないはずだ。  すっかり暗くなった教室。  時計の針は、すでに遅い時間を指している。  机の上のスマホが震えた。  ケントからのメッセージ。   『もうすぐ終わる』    すぐに返信した。   『じゃあおれも終わりにする』    画面に、すぐさま文字が浮かぶ。   『サッカー部の部室集合で』    心臓が、小さく跳ねた。  帰り支度を急ぐ。  誰もいない廊下を歩く。  窓の外は真っ暗だ。  サッカー部の部室棟へと向かう。  レオには全く縁のない場所。  グラウンドの隅。  古びたプレハブ小屋の前に、見慣れた大きな影が立っていた。 「お疲れ」    ケントが優しく笑う。   「もうみんな帰った」    部室のドアに手をかける。   「見てく?」 「いいの?」    誘い込まれるまま、中へ足を踏み入れた。  パチン、と電気が点く。  汗と、制汗スプレーの混ざった匂い。  少しだけ、土と芝生の匂いもする。    初めて見るサッカー部の部室。  想像よりはるかに綺麗だった。  マネージャーが毎日掃除を頑張っているのだろう。  整頓されたボールやビブス。    ふと、奥のロッカーに目が止まる。  写真が何枚も貼られていた。  その中に、ケントを見つけた。    サッカー部のメンバーと肩を組んでいる。  泥だらけのユニフォーム。日に焼けた笑顔。  いつもレオに見せる、甘くて優しい顔とは違う。  雄々しくて、勇ましい。闘う男の表情だった。    素直に、かっこいいと思った。胸がドキドキする。  じっくりと見つめていると。  背後から、不意に顔を覗き込まれた。   「惚れた?」    耳元で茶化す、低い声。   「……そんなわけ」    心臓の音を誤魔化すように。  レオは恥ずかしそうに顔を背けた。  不意打ちだった。  背けようとした顎を、大きな手で掴まれる。  強引に唇を塞がれた。   「んっ……!?」    深く、熱いキス。  驚きで目を見開く。    ここは部室だ。こんなところで。誰かに見られたら、どうするんだ。  焦って、ケントの胸をポカポカと叩く。  唇が離れた一瞬の隙。  レオは息を切らしながら抗議した。   「だめ、誰か来たら……」 「大丈夫」    ケントは余裕たっぷりに笑う。   「鍵、かけてあるから」    最初から、そのつもりで。  だからおれを、ここに呼んだんだ。  再び、深く口付けられる。  今度は絶対に逃がしてくれない。  ちゅ、じゅる……と、卑猥な水音が響く。  ケントの舌が、口の中を隅々まで舐め回す。  息ができない。  制服のシャツの上から、大きな手が伸びてきた。  胸の先端。敏感な突起を、指先で器用に摘み上げられる。   「あっ……ん、や……」    薄い布越しなのに。  直接触れられるよりも、いやらしい。  摩擦で電流のような快感が走る。  抗おうとする。ケントの手首を掴んで、止めようとした。  でも、力で敵うはずがない。  巧みな指使い。コリコリと執拗に転がされる。引っ張られる。   「んぁっ、あ……っ」    あっさりと、身体の力が抜けた。  膝が震える。  抵抗は虚しく。  レオはケントの腕の中に、崩れ落ちた。  そのまま、硬い長ベンチの上に押し倒された。  冷たい座面。  上に乗りかかってくる、圧倒的な熱。   「レオ……」    甘い声で名前を呼ばれる。  制服のズボンが下ろされる。  下着ごと、膝下まで剥ぎ取られた。  空気に触れる下半身。  暗闇の中。  情けないことに、レオの大切な部分は、すでに先走りで濡れていた。  ケントの指が、後ろの蕾を撫でる。  スポーツバッグから取り出したのか。  滑らかなゼリーがたっぷりと塗られた。   「力、抜いて」    ゆっくりと指が侵入する。   「んっ……あ……」    痛みはない。  すでにケントの形を、深く覚えている身体。  指が二本、三本と増える。  静かな部室に響く、ぐちゅ、という水音。  ここは学校だ。その背徳感が、さらに快感を煽る。  外にはまだ、誰かがいるかもしれない。声を出してはいけない。  必死に自分の口を両手で覆う。   「可愛い。声、我慢してるの」    ケントの指が、一番感じる場所を抉る。   「んッ! ぁ……っ、う……」    指の隙間から、甘い喘ぎが漏れ出た。  切なくて、我慢しきれない声。  ケントが指を抜く。  素早く、ゴムの封を切る音がした。  黒くて太い、熱の塊。  それが、レオの入り口に当てがわれる。   「入れるよ」    ゆっくりと。  硬い楔が、最奥まで沈み込んでくる。   「あ、……ぁあッ……!」    完全に満たされる感覚。  ベンチがギシギシと軋む音。  肉と肉がぶつかる激しい音。  ケントの腰が、荒々しく動き始めた。  容赦ないストローク。  深く、強く。  何度も一番奥を突かれる。   「あっ、ん、……け、んと……っ」    声を殺そうと、必死に唇を噛む。  でも、無理だ。  激しすぎる。  ケントの熱が、レオを芯から溶かしていく。   「レオ、いいよ。もっと鳴いて」    耳元で囁かれながら、激しく打ち付けられる。   「ひッ、ぁ……あ、んあッ!」    漏れ出る声。  切ない喘ぎが、部室の壁に吸い込まれる。  ドロドロに溶けた理性。  ケントの汗の匂い。  部室の埃っぽい空気。  すべてが混ざり合って、狂わせる。  前も後ろも、快感でどうにかなりそうだった。   「いく……ケント、おれ、いく……っ」 「一緒にいこ。レオの中に出すから」    さらに速度が上がる。  限界だった。  激しい摩擦。   「ぁ、あッ……!!」    声にならない絶叫。  レオの身体が、弓なりに反る。  お腹に、白い熱をぶちまけた。  同時に。  ケントも最奥深くで、熱いものを吐き出した。  何度も脈打つ。  ゴム越しでも分かるほどの、強烈な射精。  全身の力が抜け、ベンチに沈み込んだ。  静寂。  荒い呼吸だけが響く。  レオは息を整えながら、上に乗るケントを睨んだ。  手を伸ばし、そのほっぺたをぎゅっとつねる。   「いった……」 「学校でなんて……信じられない」    本気で怒っているのに。   「馬鹿じゃないの!?」    ケントは、ふにゃりと笑った。   「ごめん。レオが可愛すぎるから」    頬をつねられたまま、嬉しそうに目を細めている。  愛おしそうに、レオの髪を撫でる。  そんな顔をされたら。  これ以上、何も言えなくなる。  全然、効果がない。  怒る気も完全に失せてしまった。  すっかり夜は更けていた。  二人で学校を出る。  月明かりだけの暗い夜道。  少し狭くなったレオの歩幅に合わせて、ケントはゆっくりと歩いてくれる。  腰を押さえるレオを気遣って。   「腰、痛い?」 「……誰のせいだと思ってるの」    憎まれ口を叩きながら。  レオは、ケントの大きな手に、そっと自分の手を重ねた。  ギュッと、強く握り返される。  温かい体温。  甘くて、少しだけ危険な。  二人だけの、秘密の夜道だった。

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