32 / 54
第32話 夜の散歩
夜の静寂が、二人の吐息だけを際立たせる。
ケントの部屋の、広くはないベッドの上。
柔らかな間接照明が、二人の輪郭を淡く照らした。
窓の外からは、微かに夜風の音が聞こえてくる。
何度も、何度も、深く甘いキスを交わす。
「……レオ、好き」
「……んっ、おれも……ケント、すき……」
唇が離れるたび、銀色の糸がとろりと切れる。
お互いの存在を、確かに肌で感じ合う。
かけがえのない、優しくて甘い時間だった。
ケントの大きな手が、レオの胸元をなぞる。
パジャマ越しに、体温が直に伝わってくる。
その奥にある小さな突起を、指の腹で弄った。
「あっ……んんっ……」
レオは我慢しようとしているのか、口元を歪める。
シーツを握りしめ、必死に耐えようとする。
けれど、切なく甘い声が、ふいに漏れ出た。
その初々しい反応が、ケントの心をくすぐる。
たまに、指先でぎゅっと意地悪に摘んでみる。
「ひっ……! ん、ああっ……」
苦悶の表情を浮かべ、腰を小さく跳ねさせる。
しかしその声には、明らかな喜びが混じっていた。
ケントは不器用な手つきで、ボタンを外していく。
一つ、また一つと、素肌が露わになる。
はらりと布が開き、真っ白な肌が曝け出された。
執拗に弄られた突起は、すでに赤く腫れている。
ピンと立ち上がり、ケントを誘惑しているようだ。
「腫れて可哀想だな」
ケントは低く掠れた、雄の匂いのする声で囁いた。
「……っ、だれが、こんなふうに……」
「オレだよ。だから、ちゃんと治療してあげる」
そう言って、ケントは赤い花弁に熱い舌を這わせた。
「あっ! んんっ……ひゃあっ……」
たっぷりと唾液を絡め、優しく甘噛みする。
ちゅぱ、と卑猥な水音が静かな部屋に響く。
ビクビクと、レオの細い身体が小さく跳ねた。
ケントは自身の指を、レオの口元へ運ぶ。
綺麗な唇をこじ開け、中指と人差し指を捻じ込んだ。
「んっ……ちゅ、れろ……」
レオの温かく滑らかな舌が、指先に絡みつく。
上顎をなぞり、たっぷりの唾液で指先を濡らす。
透明な液体で、指先がてらてらと光った。
それを極上の潤滑油にして、レオの後ろの蕾へ。
入り口に塗りたくり、ゆっくりと解していく。
「ああっ……んっ、ふぁ……っ」
異物感に顔を顰めるのは、ほんの最初だけだった。
すぐに恍惚とした表情を浮かべ、指を受け入れる。
「んんっ……ケント、そこ……っ」
「ここがいいの? レオ」
「ああっ……んっ、んんっ……」
切なく、甘く、可愛い喘ぎ声が漏れ続ける。
レオの焦点は、すでに定まっていなかった。
とろんとした瞳は、虚空を彷徨っている。
ただひたすらに、与えられる快楽を享受していた。
ケントは、自身の下着をゆっくりと下ろした。
すでに完全な形を成した、熱く黒いモノ。
空気に触れて、ビクンと大きく脈打った。
はち切れんばかりに膨張し、熱を帯びている。
それを上下に擦りながら、サイドテーブルへ手を伸ばす。
引き出しを開け、避妊具の箱を手に取った。
しかし、指先が触れた感触で違和感に気づいた。
「……マジか」
箱の中には、銀色の袋が最後の一つしかない。
ストックの補充を、すっかり忘れていたのだ。
「あと一個しかなかった」
少し悔しそうに言いながら、ゴムを装着する。
レオは潤んだ瞳で、じっとケントを見上げていた。
早くしてと言わんばかりの、無防備な視線だった。
準備を終え、ケントはゆっくりと腰を沈めた。
熱く狭い内壁が、ケントの凶悪をきつく締め付ける。
「んんっ……! はあっ、ああっ……」
根元まで完全に収めると、小さく息を吐いた。
そして、まずは激しく、乱暴に奥を突き上げる。
「ああっ! んっ、ひあっ……!」
パンッ、パンッと、激しく肌と肌がぶつかる音。
レオの声が、一気に高く上ずった。
シーツを握る手が、真っ白になるほど力が入る。
と思ったら、今度は極端にゆっくりと動く。
浅い場所まで、じわじわと時間をかけて引き抜く。
自身の出っ張りで、レオの内壁を引き摺り出すように。
「ぁ……あ……っ、だめ、それっ……」
粘膜が擦れる感覚に、レオが大きく身をよじる。
「だめじゃないだろ。気持ちいいくせに」
「んんっ……ああっ、おかしくなるっ……」
そしてまた、容赦なく一番奥へと激しく打ち付ける。
緩急をつけた極上の責めに、レオの理性が飛ぶ。
「ああっ! あっ、ああっ……ひぁっ……!」
言葉にならない喘ぎ声を、止めどなく上げる。
我慢しようと唇を噛むが、隙間から溢れてしまう。
それがまた、たまらなくケントの欲望を煽る。
気持ちいい。最高に狂うほど気持ちいい。
二人の熱が、急速に頂点へと向かっていく。
「レオ、もうそろそろ限界……」
「んっ……おれも、いくっ……!」
視界が真っ白になる強い絶頂と共に、二人は果てた。
荒い息を整えながら、ケントはそっと離れた。
避妊具が無くなったから、今日はこれでおしまい。
少し名残惜しそうに、レオの汗ばんだ髪を撫でた。
本当なら、朝まで何度も抱き潰したい。
でも、男性同士と言えど、直での行為は危険だ。
デリケートなレオの身体に負担が掛かりすぎる。
大切な恋人を、傷つけるような真似はしたくない。
「コンビニ、行く?」
ケントが優しく聞くと、レオは少し考えた。
そして、とろんと潤んだ瞳のまま、こくりと頷いた。
その素直な反応が、ケントの胸を温かくした。
普段は利用しない、少し離れたコンビニへ向かう。
夜風が、火照った二人の身体に心地よく当たる。
並んで歩くレオの顔は、まだ少しぼーっとしている。
行為の強烈な名残りが、そこかしこに漂っていた。
桜色に染まった頬は、夜の闇でもわかるほど。
とろんと潤んだ、色素の薄い綺麗な瞳。
艶を帯びた唇が、熱を逃がすように少し開いている。
何だかとても、無防備で扇情的な表情だった。
歩きながら、ケントは無性にそわそわしてしまう。
あまりこの顔を、他人の店員に見せたくない。
俺だけのものなのに。
ケントの中に、強い独占欲がむくむくと湧き上がる。
自動ドアが開き、明るい照明が二人を照らした。
深夜の店内には、気の抜けたBGMが流れている。
ケントはさりげなく、レオの細い手を引いた。
足早に、目的の日用品売り場へと向かった。
目当ての陳列棚の前で、二人は立ち止まる。
色とりどりのパッケージが、ずらりと並んでいる。
「どれがいいの?」
ケントは、レオの耳元でわざと低く囁いた。
息がかかり、レオの肩がビクッと小さく跳ねる。
「レオが選んで」
さらに言葉を付け足し、わざと意地悪く微笑む。
レオは恥ずかしそうに俯き、視線を激しく泳がせた。
周囲に人がいないか、ちらちらと気にしている。
やがて、指先がひとつの箱に伸びた。
それは、いつも使っているものより高価な薄いタイプ。
極限まで薄くて、ぴたっと密着するヤツだった。
「へぇ……」
ケントの口角が、自然とつり上がる。
「レオ、薄いやつが好きなんだ」
「ち、ちがっ……」
真っ赤になって必死に否定する姿が、可愛すぎる。
「じゃあさ」
ケントはさらに、顔を近づけて甘く囁いた。
「一箱で、足りる?」
意地悪そうな顔で、じっとレオの目を見つめる。
レオは限界まで顔を赤くして、完全に無言になった。
もう一つの箱を手に取る。
無言のまま、それをケントの胸元へ押し付けた。
何も言わないが、答えは火を見るより明らかだった。
避妊具を買うなんて、大人は皆やっていることだ。
決して珍しいことでも、悪いことでもない。
でも、真面目なレオにとってはすごく恥ずかしい行為。
何度もセックスという大人の行為をしているのに。
今だに、こんなに初々しくてウブな反応を見せる。
そのギャップが、ケントの男心を激しくくすぐった。
今すぐここで、無理やり押し倒してしまいたい。
爆発しそうな欲望を、ケントは必死に抑え込んだ。
足早にレジへと向かい、商品をドンと置く。
退屈そうな店員の前に置かれたのは、Lサイズのゴム二箱。
他の商品は、飲み物すら一切なし。
完全に「今から激しくセックスします」宣言だ。
レオは恥ずかしさのあまり、ケントの背中に隠れた。
その小動物のような仕草すら、ケントの理性を削る。
早歩きで家へ戻り、すぐにケントの部屋へと転がり込む。
ドアを閉めた瞬間、二人は磁石のように強く抱き合った。
コンビニに着て行った服を、もどかしく脱ぎ捨てる。
床に無造作に散らばっていく。
ベッドに倒れ込むと、すぐにレオの白い脚を大きく開く。
レオのそこは、まだ先ほどの名残りでぐっしょり濡れていた。
甘くて淫靡な匂いが、ケントの鼻腔を強く刺激する。
買ってきたばかりの、極薄の避妊具を慌てて開封する。
はやる気持ちを必死に抑え、丁寧に被せて装着した。
そして、再び熱く濡れた奥底へと一気に侵入していく。
「ああっ……! んんっ、はあっ……!」
入ってきた瞬間の、レオのひどく驚いたような声。
極薄のゴムのせいか、ダイレクトにお互いの熱が伝わる。
いつもより、ケントの形がはっきりと、生々しくわかる。
浮き出た血管の、一本一本のわずかな凹凸の感触まで。
レオの内壁の柔らかなひだに、容赦なく擦り付けられる。
「ああっ…… ぁっ、んっ、んんっ……!」
レオの声が、一気に甘く、高く、切なく跳ね上がった。
必死に喘ぎ声を我慢しようと、血が滲むほど唇を噛む。
でも、薄膜越しに与えられる快楽が大きすぎた。
「……我慢しなくていいよ、レオ。声、聞かせて」
「んんっ……ああっ! だめっ、ケント……」
我慢の限界を優に超え、甘く可愛い嬌声が部屋に響く。
ケントの腰のスピードが、限界知らずで上がっていく。
激しい水音が、熱を帯びた暗い部屋にこだまする。
「ああっ…… 好きっ、ケントぉっ、ああっ……」
「俺も……っ、レオ、最高……っ、たまんねぇ……っ」
あまりの気持ちよさに、二人は深く、深く溶け合う。
もはや、自分と相手の境界線すらまったくわからない。
視界が弾け、脳髄が痺れるような究極の快楽。
「いくっ、ああっ……ケントっ……!だめ……、あ、ぁ……い……ッ!」
「レオっ……! オレも、いくっ!」
激しく重なり合う、切なく甘い声。
そして、二度目の激しい絶頂を、二人は同時に迎えた。
荒い呼吸だけが、静かになった部屋に響いている。
ケントがゆっくりと、自身のモノを引き抜いた。
ポンッ、と小さく淫らな音が、空気を震わせた。
ケントが収まっていた、レオの赤く熟れた柔らかな穴。
それが、寂しそうにひくひくと小さく痙攣していた。
その淫らな様子を見て、ケントはたまらない気持ちになる。
避妊具一つ、涼しい顔で買うことができないレオ。
成績優秀で、真面目で、少し不器用な優等生の顔。
それなのに、今はどうだろうか。
ベッドの上では、信じられないほど可愛い声で鳴く。
身をよじって絶頂する、すっかりえっちになった身体。
その強烈なギャップが、ケントの心を鷲掴みにして離さない。
誰にも見せたくない。絶対に誰にも渡したくない。
一生、俺だけの特別なものだ。
「……レオ」
「ん……っ」
絶頂の強烈な余韻で、まだビクビクと震えている身体。
ケントはたまらず、その細く白い身体を強く抱きしめた。
「あまりにも可愛すぎる」
「……っ、ばかじゃないの」
照れ隠しに小さく呟くレオの、汗ばんだ額にキスを落とす。
ぎゅっと、壊れないように優しく、何度も抱きしめ直した。
二人の長く甘い夜は、まだほんの序の口だった。
ともだちにシェアしよう!

