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第54話 解禁、翌日

 季節は、長く厳しかった冬を越え、柔らかな春の気配を帯び始めていた。  過酷な受験戦争という名の長いトンネル。  水澄レオと櫻井ケントは無事に二人で抜け出すことができた。  来月からは新しい生活が始まる。  新居の準備、家具の買い出し、引っ越しの手配など。  やらなければならないことは山のように積まれている。  本来ならば、今すぐにでもベッドから抜け出し、リストアップした予定を消化していかなければならないはずだった。  けれど、時計の針が午前八時を回っても。  二人は分厚い羽毛布団の中に絡み合うようにして閉じこもっていた。  玄関のドアがバタンと閉まる。  ショウとリサが揃って仕事へと出かけていった音が聞こえたのは、つい先程のことだ。  家の中には、今、完全に二人きりの静寂が降りてきている。    昨日、数ヶ月ぶりに解禁された互いの熱。  何度も何度も、気が狂うほどに確かめ合い、濃厚に愛し合った。  体中が甘い疲労で満たされているはずなのに。  それなのに、数ヶ月間という途方もない時間の中で溜めに溜め込んだ二人の欲望は。  一晩やそこらでは到底吐き出しきれるものではなかったらしい。 「……ケ、ント……っ、んんっ……」 「レオ……可愛い。すっごく、甘い匂いする……」  静まり返った寝室に、チュ、チュル、と、ひどくいやらしい水音が響き渡る。  朝の光が差し込むシーツの上で、ケントがレオに深く覆い被さっていた。  唇が触れ合い、少しでも隙間が開けば。  そこから滑り込んできた熱い舌が、レオの口腔内を容赦なく蹂躙していく。 「んっ……ぁ、んちゅ……っ、ふ、ぁ……」    息継ぎのタイミングさえ与えられないほど、深く、貪欲に絡みつくキス。  上顎をなぞり、舌の裏側を舐め上げられ、互いの唾液が甘く混ざり合う。  そのあまりにも直接的で濃厚な水音。  レオの鼓膜をビリビリと震わせ、脳髄を直接刺激してくる。   (っ……あ、だめ、頭が……溶け、そう……っ)    自分自身の口から漏れているとは到底思えないほど。  甘く、切なく、そしてどこか泣き出しそうな喘ぎ声。  唇の隙間からこぼれ落ちてしまう。  恥ずかしい。  でも、それ以上に、ケントにこうして狂おしいほど求められているという事実。  レオの羞恥心を軽く飛び越え、快楽のボルテージを一気に最高潮へと跳ね上げていく。 「はぁっ、んっ……ケント、息、できな……っ」 「ごめん。レオが可愛いすぎるから……止まんない」    ケントの顔がわずかに離れ、銀色の糸が二人の唇の間で艶かしく引かれた。  酸素を求めてレオの胸が大きく上下する。    しかし、安堵したのも束の間。  ケントの熱い唇と舌は、そのままレオの顎のラインを滑り降りる。  耳たぶを甘噛みし、そして無防備に晒された白い首筋へと吸い付いていった。 「ひゃっ……! んんっ、あ……っ」    首筋から、華奢な鎖骨のラインにかけて、じっくりと味わうように舌が這う。  そこには、昨日の激しい情事の間にケントが残した、赤い花弁のような痕跡がいくつも咲き誇っていた。  それは、「レオはオレのものだ」と世界中に見せつけるかのように刻み込まれた、強烈な独占欲の証。  ケントはその赤い印を見つけると、目を細め、いっそう熱を帯びた吐息を吹きかけた。  そして昨日と同じ場所を、さらに強く吸い上げた。 「あ、っ……! ん、だ、だめぇっ……そこ、昨日もっ……ぁんっ!」 「だめじゃない。ここ、レオのここ、もっと俺の痕でいっぱいにしたい」    ちゅっ、じゅぷっ、と肌を吸う音が響くたび。  レオの腰がシーツの上でビクン、ビクンと勝手に跳ねてしまう。  だめだ、声を出してはいけないと理性の奥底で思っているのに。  ケントから与えられる刺激が甘すぎて。  強烈すぎて。  我慢しようと唇を噛み締めれば噛み締めるほど、その隙間から「くぅっ…」「あ、ぁっ…」と、切なく漏れ出るような嬌声が溢れてしまう。  同時に、レオの下半身にも、抗えない変化が訪れていた。  まだ直接触れられてもいないというのに。  前方の熱を持った先端からは、ぬるりとした透明な粘液が次から次へと溢れ出す。  そして下着の内側をぐっしょりと濡らしていく。 「あ、んんっ……っ! ひぅっ……」    ケントの顔がさらに下へと移動する。  そして、レオの胸にある、綺麗な桜色の突起へと標的を定めた。   「ここも……昨日の夜から、ずっと腫れてる」 「見ちゃ、だめぇっ……あ、ぁんっ!」  ケントの温かく湿った舌が、その敏感な小さな突起をチロチロと舐め回す。  舌の先で器用に転がし、軽く歯を立てて甘噛みし。  そして真空状態を作るように強く吸い上げる。   「あ、ああ……あっ! ん、っ、ぁ、ぁあ……っ!」    みるみるうちにその突起は硬く充血し、赤く腫れ上がっていく。  もはやケントの吐息が微かに触れただけでも。  背筋に強烈な電流が走り、レオの喉から抑えきれない高い声が弾け飛んでしまう。  快感のあまり、レオの身体が小刻みに震え始める。  ケントの大きな手が、レオの穿いている下着に指をかけた。  そして、焦らすようにゆっくりと、その布地を捲り上げる。    露わになったレオの熱。  その先端と、布地の間。  とめどなく溢れ出した先走りが、幾重にも銀色の糸を引いて繋がっていた。 「……レオ、すっごい。下着、びしょびしょになってる」    ケントの低く、少しだけ掠れた雄の色気を帯びた声が耳元に落ちる。   「っ……! み、見ないでっ……恥ずかしい、からっ……んっ」    レオは顔を真っ赤に染め、涙目になりながら、自らの下着にかかったケントの手を払いのけようとした。  自分がどれだけ彼を求めてしまっているか。  その証拠をまじまじと見られるのがたまらなく恥ずかしかった。  けれど、ケントの力に敵うはずもなく。   「見せてよ。俺にこんなに感じてくれてるレオ、最高にエロくて可愛いから」    ケントはレオの両手を軽く片手で押さえ込む。  そのまま下着を一気に膝下まで引きずり下ろした。  そして、レオの細い両脚を抱え上げ、大きくM字に開かせる。  ケントから、レオの身体の最も奥深く、秘められた柔らかな蕾が丸見えになる。  ひどく無防備で恥ずかしい体勢。 「あ、っ……! やだ、ケントっ、そんなに見られ、たらっ……!」 「綺麗だよ、レオ。……ここ、昨日の熱がまだ残ってて、ピクピクしてる」  ケントの長い指先に、たっぷりと透明なゼリーが取られる。  そして、昨夜何度もケントの太い熱を受け入れ、仄かに赤く腫れ、熱を持っているその狭い入り口に。  冷たいゼリーがとろりと塗りたくられた。  ひんやりとした感触にレオの肩が跳ねる。  すぐにケントの指が入り口を優しくマッサージし、ゆっくりと、一本、また一本と内部へと侵入してくる。 「あ、ぁ……っ、ん、んんっ……!」    それは、世界中でただ一人、ケントだけが知っている場所。  ケントの熱を受け入れるためだけに、柔らかく解れ、開かれる場所。  レオの内部の柔らかな粘膜。  侵入してきたケントの指をまるで意志を持っているかのようにちゅぱちゅぱと吸い込み、ぎゅうっと熱く締め付ける。  決して離そうとしない。 「っ……レオのここ、すっごく熱い。俺の指、食べてるみたい」 「あ、ぁ……っ、ちが、ちがうっ……ん、あっ……」 「ん。もう十分に解れてる。……そろそろ入れる」  ケントが、自らのガチガチに膨張し、限界まで反り返った己自身に、手早く薄いゴムを装着する。  そして、レオの細い腰を両手でしっかりと掴み、逃げ道を塞ぐと。 「あ、っ――!!」  一切の躊躇なく、一気に、その太く硬い熱の楔を、レオの最奥の突き当たりまで根元まで沈み込ませた。 「ああぁっ……!! ん、ぅっ……ぁ、あ……っ!!」    少しばかり乱暴とも言える、容赦のない侵入。 けれど、今のレオにとっては。  その強引さすらもが脳を焼き切るほどの強烈な快感だった。  内部を押し広げ、満たしていく圧倒的な質量の暴力。 (ケントの……ケントの熱いのが、全部、入ってる……っ)  受験のために、お互いに触れ合うことを固く禁じていた数ヶ月間。  その致さなかった空白の期間中も、レオの身体は決してこの感覚を忘れることはなかった。  硬く反り返り、太い血管がドクドクと脈を打っている感触。  そして、少しだけ反り返った首の出っ張りの部分。  侵入するたびにレオの内部にある一番敏感な良いところを、ピンポイントでゴリッ、と抉るように刺激してくる。  それは、ケントという存在そのものをレオの奥深くに刻み込むような、圧倒的な雄のかたちだった。 「っ……はぁっ、レオ、きつい……っ、最高……」 「け、んとっ……あ、あっ……んっ……」  最初は、ケントもレオの身体を気遣うように、一定のリズムで、少し浅めの場所に腰を打ちつけていた。  パン、パン、と肌と肌がぶつかり合う音が寝室に響き渡る。   「あ、あっ……ん、っ……ぁ……っ」    浅い場所をこすられるだけ。  レオの口からは甘く、蕩けるような声が漏れ続ける。  我慢しようとシーツを強く握りしめるが。  快感は波のように押し寄せ、レオの理性を少しずつ削り取っていく。  やがて、ケントの腰の動きが、徐々に深く、鋭いものへと変化していく。  浅いストロークから一転、全体重を乗せるようにして、レオの最も深い場所を容赦なく抉り始めた。 「あっ、あっ……! んんっ、そこっ……、あ、ああ……あっ!」    ゴリッ、と、ケントの硬い先端が、レオの最奥の泣きどころを正確に捉えて擦り上げる。   「ひっ……! ぁ、あ……っ! だめ、それっ、あ、ふぅっ……!」  レオの声が、一気に切羽詰まった、泣き叫ぶようなものへと変わった。  声を出さないようにと唇を噛む余裕すらなくなる。  口を半開きにしたまま、ひたすらに甘く、切なく鳴き続ける。  頭が真っ白になり、視界がチカチカと明滅する。  全身の血が下腹部に集まり、今にも弾け飛んでしまいそうな、限界のサイン。  そろそろ、達してしまいそうな雰囲気だった。  それに気づいたケント。  腰を打ちつけるスピードを緩めるどころか、さらに激しく、狂ったように加速させた。   「レオ……っ、きもちかったら、我慢しなくていい。イっていいよ」 「あ、ぁ……っ! け、んとっ、いく、おれ、いっちゃ、うぅっ!」 「俺も……っ」    ケントは自身の最も硬く出っ張った部分で、レオの最奥の敏感な粘膜を突き上げる。  何度も何度も、ドスッ、ドスッと容赦なく。 「きもちいいっ……! あ、あああっ! そこっ、……きもち、いい……っ!!」    強烈な一撃が最奥を穿つたびに。  レオは雷に打たれたように身を反らせ、切なく鳴き叫ぶ。  内部の柔らかな肉をぎゅうううっ、と限界まで収縮させた。  その強烈な締め付けに、ケントの理性の糸も完全に弾け飛ぶ。 「っ……あ、あああ……っ!!」    レオ自身からは、触れられてもいないというのに。  白濁の熱い液体がとろり、と噴き出し、自らの平らな腹の上へと滴り落ちていった。  それと同時に、ケントも野獣のような低い唸り声を上げる。  レオの最奥深く、ゴムの壁越しに、自らの熱い欲望のすべてを激しく叩きつけた。  激しい嵐が過ぎ去った後、二人はシャワーを浴びて汗を流し、遅めの昼食をとった。  パスタを温めて向かい合って食べる。  他愛もない新生活の話をしながら、穏やかな日常が戻ってきたかのように見えた。    しかし、ふとした瞬間に視線が絡み合うと、そこに宿る熱は全く冷めてなどいなかった。  むしろ、一度満たされたことで、底なしの飢餓感が目を覚ましてしまったかのようだった。  食後のコーヒーを飲み終え、リビングの大きなソファに二人で並んで座っていた時のこと。  どちらからともなく肩が触れ合い、唇が重なった。  それだけで、さっきまでの理性が再び跡形もなく消え去ってしまう。  まだ、足りない。もっと、ケントを感じたい。 「レオ……後ろ、向いて」    ケントに促されるまま、レオはソファの上で四つん這いのような体勢にさせられた。  背後から、ケントの大きく温かい身体が、レオの背中をすっぽりと覆い隠すようにして重なってくる。  後ろから見下ろされるこの体勢。  逃げ場がなく、自分が完全に支配されているような感覚に陥り、ひどく羞恥心を煽られた。  ソファを汚さないようにと、ケントがレオ自身の高ぶりにも薄いゴムを装着してくれた。  その丁寧な手つきでさえも、今のレオには刺激が強すぎる。   「入れるぞ……っ」 「あ、っ……んんっ……!」  背後から、再びケントの熱い楔が、ゆっくりとレオの内部へと侵入してくる。  先程よりも重力がかかるためだろうか。  より深く、内臓を押し上げられるような圧迫感があった。 「あ、ぁ……っ、ふぅっ……」    ケントは背後からレオの腰をがっちりとホールドし、深い場所へと容赦なく進んでいく。  ズドン、ズドンと、背骨の芯まで響くような深いストローク。  しかし、ただ奥を突くだけではない。  深い場所をえぐったかと思えば。  今度は入り口付近の浅い敏感な粘膜を、ゆっくりと焦らすように擦り上げる。 「あ、あっ……んっ、そこ、っ……ひぅっ……」 「レオ、ここ好きだよな? 浅いところも、すっごくピクピクしてる」 「あ、ぁ……っ、だめ、けんとっ、いじわる、しないでっ……!」  ケントの手が前方に回り込む。  ゴム越しにレオの熱を優しく、けれどいやらしく愛撫し始めた。  前後からの同時攻撃。   「あ……っ、あ……ああっ! ん、っ、……ぁ、ぁあーっ!」    甘い、甘い声が、もうどうにも止まらない。  恥ずかしいけれど、与えられる強烈すぎる快感には、到底逆らうことなどできなかった。  声はどんどん上擦る。  息継ぎの仕方も忘れてしまったかのように、切なく、高く鳴き続ける。 「けんと、けんと……っ! あ、あぁ……っ! い……くっ、おれ、また、いっちゃう……!!」 「いいよ、いっぱいイって……っ」  レオがソファのクッションを両手で強く握りしめる。  背中を大きく反らせて、切なく鳴きながら二度目の絶頂を迎えた。  ガクガクと全身が痙攣する。  装着されたゴムの中に、白い体液がトロトロと勢いよく吐き出されていく。  しかし、レオが達したと同時に、ケントのラストスパートが始まった。   「っ……レオ、俺も、っ……!」 「あ、あああ……っ!? ちょ、まって……、だめっ、おれ、いま……っ、イっ……たばっか、あ、ぁあ……っ!!」  達したばかりで、極限まで敏感になり、ぷくっと熱く腫れ上がっているレオの最奥の粘膜。  ケントの硬い先端が、何度も何度も、容赦なく激しく擦り上げる。   「ひっ……! ぁ、あ……っ! むり、むり……っ、こわれ、ちゃう……っ!」  それはもう、快感を通り越して、ある種の苦痛に近いほどの強烈な刺激だった。  レオはポロポロと涙を浮かべる。  頭を左右に激しく振りながら、必死にその快楽の波に耐えようとする。  けれど、ケントの容赦ないピストンは止まらない。 「レオ、レオ……っ! 全部、俺の受け止めて……っ!」    ケントの野獣のような叫びとともに、レオの最奥で、最も熱く重い一撃が打ち込まれた。   「あ、ああ……ああ……あっ!!」  ケントがゴムの中に大量の熱を放つと同時。  その強烈な刺激に耐えきれず。  レオも再び、空の弾を撃つようにして軽く射精し、三度目の絶頂へと突き落とされた。   「あ、っ……あ、ぁ……っ、んぅ……っ」    腰はガクガクと無様に震え、力が入らない。  レオの脳内は完全に真っ白になった。  もはや自分が達し終わったのか、まだ絶頂が続いているのかすら分からない。  永遠に続くような快楽の渦の中に放り出されていた。  激しい余韻の中、二人の荒い呼吸だけがリビングに響いていた。  深く結合したままの状態。  ケントは背後からレオの汗ばんだ身体をゆっくりと、抱き潰すように強く抱きしめた。 「はぁっ……はぁ……レオ、大丈夫……?」 「あ、っ……ん……腰、ぬけ、た……っ」  レオが涙目で力なく答える。  ケントは愛おしそうにレオの首筋にキスを落とす。  そして、汗で額に張り付いた前髪を優しく撫でた。 「……いっぱい気持ちよくなってくれて、すっごく嬉しい」    その、どこまでも甘く、深い愛情に満ちたケントの囁き。  レオの耳の奥にじんわりと溶けていく。   「けんと、のせい……ばか……っ」    レオは強がりながら。  ケントの腕の中にすっぽりと収まり、その温もりを全身で感じていた。  受験という壁に阻まれ、触れ合うことができなかった長い長い数ヶ月間。  二人の間にできてしまった空白の時間。  こうして肌を重ね、熱を注ぎ込むことで、少しずつ満たされていくのを感じる。  それでも。  何度果てても、何度互いを求め合っても、まだ、全然足りない。  明日も、明後日も、これから先ずっと一緒にいられるというのに。  飽くなき情熱を。  互いが互いを狂おしいほどに「大好きだ」というこのどうしようもない気持ちを。  二人は、この日一日という長い長い時間をかけて。  何度も何度も、互いの身体と心に深く刻み込むように、伝え合い続けたのだった。

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