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第2話 インテリダーリンの愛*

 マスターに言葉で返事をすることもなく、シイナはユオシェンの腕を掴み、バーの二階へと引きずっていった。このバーの二階は、この辺り一帯によくある脱法娼館の一部になっており、娼婦たちが客を連れ込むこともあれば、酔い潰れた客を一時的に突っ込んでおく簡易ホテルとして使われることもある。  そんなベッドが一つあるだけの簡素で狭い空間に、シイナはユオシェンを連れ込むと、彼の体を軽々と薄いスプリングのベッドへと押し倒した。 「覚悟はできてんだろうなァ、ユオシェン?」 「もちろん。いつも通り何だってしてやるぜ?」  あくまで余裕を崩さず不敵に笑むユオシェンに、シイナは一つ舌打ちをした後、やや乱暴に唇を奪う。当然の権利とばかりに舌を入れると、ユオシェンは目を細めてそれを受け入れて、自分からも舌を絡めて応えた。 「ん、は、ふ……ぅ、んむっ……♡」  呼吸の暇もないほど激しく荒々しいキスの合間から、発情しきったユオシェンの甘い声が途切れ途切れに漏れる。彼の口の中に残っていたアルコールがシイナの脳を揺らし、ただでさえ焼き切れかけていた理性がぐずぐずにほどけていく。 「んぅ……ッ、う♡ ふ、ぁ、もう、我慢できなっ……あっ、む、ぐぅ………♡」  早く本番に入りたいとせがむユオシェンの呼吸をさらに奪い、酸欠で意識が滲んでいることに気付いているのに、なおもシイナは口内への蹂躙を止めない。  そのまま窒息してしまうのではという命の危機から彼の目に涙が浮かび始めた頃、ようやくシイナはユオシェンを解放した。 「ッ、ぷはっ……! ぐ、けほ、こほっ……」 「なんだ? そんな苦しそうな顔して。ダーリンからのキスはそんなに嫌だったか?」  そんなことはありえないと分かっているのにわざと意地悪に唇を歪めながら言うシイナに、ユオシェンは息も絶え絶えになりながらも、にぃと笑う。 「はぁっ、んなわけ、ねーじゃん……ダーリンの愛がデカすぎて、涙が出るほど、嬉しかっただけだってぇ……」 「へえ、そうか。だったら今日は、俺の愛とやらを満足いくまで分からせてから抱いてやるよ」 「へっ?」  てっきりすぐに本番に入ると思っていたユオシェンは、間抜けな声を上げて一瞬硬直する。その隙を突くように、シイナはユオシェンの首筋に顔を寄せると、歯を立てて噛みついた。 「いっ、づ……あ”、あっ……♡」  ゆっくりと力を込められ、犬歯が肌に血を滲ませる。痛みを訴えても噛む力を弱めてくれないシイナに、そのまま首を噛み千切られるのではという予感で、ユオシェンは甘く絶頂した。  シイナはまるで念入りにトドメを刺す肉食獣のように、ぴくぴくと震えるユオシェンの喉を噛んで押さえ込み、じっくりとその快感に浸らせてからようやく歯の力を弱めた。  はっきりと歯形がついた首筋をべろりと舐め上げると、それすらも快楽に変えたユオシェンは軽くのけぞって身もだえをする。 「シ、シイナっ……アッ、ぎぃっ♡」  シイナはユオシェンの呼びかけには応えず、今度は右肩に噛みつくと、同様に跡を残した。先ほどよりは短い時間で痛みから解放されたことにユオシェンは安堵の息を思わず吐く。  だがシイナがそれだけで終わらせてくれるわけもなく、彼はユオシェンの体の全てをなぞるように順々に舌を這わせ、噛み跡をつけていく。  いつの間にかユオシェンの着衣は全て剥ぎ取られていたが、シイナは一番肝心なところにだけは決して触れようとしなかった。 「あっ、ぃ、あぅっ…ひっ♡ シイナぁ、もう、もうやっ……♡♡」 「なんだ、俺の愛が嫌なのか? 残念だなぁ、ハニー?」 「ちがっ、やじゃないっ……でも、あ、んぅ……やじゃないけど、もうっ……♡♡」 「嫌じゃないなら続けていいな?」 「ひぁっ……んあぁ、あっ……♡♡」  足の指を歯で刺激して愉しみながら、シイナはユオシェンの痴態を嘲笑う。 「良い景色だな、そんなにヤリたいんなら、今すぐ俺を押し倒して、上に乗って腰振りゃあいいじゃねぇか」 「だ、だってぇ……♡ シイナからの愛、全部もらいたいしっ、それに……くぅっ♡」  太ももを撫でられ、とっくの昔に立ち上がっていたユオシェンの性器から先走りが僅かに漏れる。 「それに? 何だ?」  ガリッと太ももに爪を立てられ、ユオシェンの腰がガクガクと震える。ユオシェンは必死に口を動かした。 「それ、にっ……おれ、シイナのもんだからっ……♡ シイナの許可なく、気持ちよくなったり、しなっ、あっ、ああっ♡ やぁあっ♡」  普段生意気で挑発的な言動しかしない男の従順な発言に、シイナは満足そうに目を細め、ご褒美と言わんばかりにこれまで放置していた後ろの穴へと手を這わせた。  指を一本ゆっくりと入れると、内側の肉壁は刺激を待ちわびていたかのようにそれに吸い付き、その感触だけでユオシェンは大きな絶頂に至りそうになる。 「アッ♡ あ、あぐっ、イ、イクッ……♡♡」 「まだイクな」 「~~~~ッ♡ はいっ、我慢しますぅっ♡」  先端から噴き出ようとしていた白濁をギリギリのところで堪え、二本に増やされた指の刺激にユオシェンは必死で耐え続ける。 「あ、ぁ、ひっ、ん♡ んぅ……あっ、あっ♡」  甘い声を上げてシーツを握りしめながら身もだえするユオシェンを冷たく見下ろしながら、シイナは彼の内側の弱いところを指先でぐっと押し込んだ。 「んっ、あぁぁあっ……♡♡♡」  我慢しきれずにユオシェンの性器から白濁が飛び散り、彼の腹とシイナの服を汚す。潔癖な性格をしているシイナの服を汚してしまったという事実に、ユオシェンは一気に正気に戻って青ざめた。 「あっ、ごめんなさっ……汚しちゃって、ごめんなさ、もごっ、んぅ……?」  シイナは自分の服についた精液を指で拭うと、それをユオシェンの口の中へとねじ込んだ。ユオシェンは訳も分からぬまま、指に舌を絡め、まるで奉仕するようにぴちゃぴちゃとそれを舐め取る。 「堪え性のないハニーを持つと苦労するよ」 「んむ、ぅ……♡ ごめんな、ひゃい……?」  混乱からか幼さすら感じる表情で応えたユオシェンの舌を摘まんで引っ張り、何も出来なくなってこちらを見ることしかできない彼へとシイナは宣告する。 「俺は一通り、お前に愛を示したわけだが……お前も当然、俺に愛を囁いてくれるんだよなぁ?」 「ひゃぇ……? あ、ン、あぁぁっ……!?♡♡♡」  油断しきったユオシェンの中に、不意打ちでシイナは己のモノを突き入れる。散々乱れたユオシェンを見てきた彼の陰茎は、これ以上なく膨れ上がっており、待ちわびた相手の中をようやく食い荒らせるという事実でさらに熱を持つ。 「あ、ぁ、はっ♡ シイナの、入ってるっ♡ あはっ♡ ん、あっ、ぁあああっ……♡♡」  嬉しそうに表情を緩め、余裕を取り戻しそうになったユオシェンの内側を、シイナはやけに丁寧に突き始めた。 「あっ、ぁ……♡ なん、でっ♡ そんな、ゆっくりぃ……♡」  上から押さえつけるような姿勢で、ユオシェンの一番好きなところばかりを念入りに潰すように緩やかに腰を動かす。激しい責めが来るとばかり思っていたユオシェンは、もどかしさで目を潤ませてシイナの仏頂面を見上げた。 「し、シイナぁ……♡ なんで、んっ…こんな優しいんだよぉ……♡ もっと奥っ、たくさん突いてくれよぉっ……♡」 「言ったはずだぞ? 俺はお前が、愛を示してくれるのを期待してるって。愛を囁いてくれないのは俺の愛が足りてねぇってことだから、優しくされるのは仕方ねぇよなぁ?」 「う、うぁ♡ やらっ、愛してるっ、すきっ、すきだからぁっ♡ もっと乱暴にしてぇっ♡♡」  被虐趣味を隠しもせずに、ユオシェンは懇願する。シイナは彼の顎を軽く持ち上げると、その唇に触れるだけのキスを落とした。 「よく言えました。もうその言葉、嘘にするんじゃねぇぞ?」 「はぇ、ひっ♡ あ、あ”、ああっ♡ ぎっ、ひぃ、っ♡♡♡」  それまでの穏やかさが嘘だったかのように、シイナは暴力的なまでの勢いでユオシェンの奥深くをうがち始める。苦痛と快楽でユオシェンの視界に火花が散り、身動き一つ出来ないほどベッドに強く押しつけられながら、快楽を少しでも逃そうと体をのけぞらせる。  シイナはその抵抗を許さず、がっしりとユオシェンの体を抱え込み、荒々しい抽送を繰り返す。 「ユオシェン、言え。お前の持ち主は誰だ?」 「ひっ、あ、し、しいなっ♡♡ しいなだけがっ、おれのご主人でっ、あっ、あっ♡♡」 「じゃあもう俺以外を誘惑しないな?」 「しないっ♡ しいなのこと好きっ♡♡ しいなだけ大好きっ♡♡ しいなも、おれのことっ、あっ、アアッ♡♡♡♡」 「……ああ。愛してるよ、馬鹿ハニー」 「んっ、ぁ、あぁぁあーーっ…………♡♡♡♡♡」  耳元で愛を囁かれ、その幸福感でユオシェンは深く絶頂する。指先を丸めた足がピンと伸びて痙攣し、シイナのものを咥え込んだ内側が中に出してほしいと願うように複雑に蠢く。シイナはユオシェンの最奥を数度突くと、その奥底へと熱を吐き出した。 「あ、ぁ……はぇ……えへへ、はへ……………♡」  白濁を注ぎ込みながら脈動する感触を腹の中で感じ、それにすら幸せを覚えながら情けなく緩んだ表情でユオシェンはゆっくりと目を閉じる。  数秒と経たず規則正しい寝息を立て始めた彼の顔を見下ろし、シイナは若干不満げな表情で彼の中から己のモノを抜き去った。  本当はもう数回はしたかったところだが仕方ない。他にやるべきことも控えているのだから、それをこなしてからまた抱けばいい話だ。  欲求不満な己をそうやって納得させ、几帳面に身なりを整えたシイナは、ユオシェンを部屋に残したまま一階のバーへと戻った。  バーの店内からはすっかりと人の気配がなくなっており、残っているのは迷惑そうな面持ちのマスターと、無礼な不埒者、そしてマスターが呼んだと思われるシイナの部下達だけだ。  部下たちはシイナが来たことに気付くと、姿勢を正して、厳重に拘束してある不埒者たちへの道を空ける。不埒者の男は、すっかり腫れ上がった顔でシイナに向かって叫んだ。 「テメェ、何なんだよ! ただのお上品なインテリ男がどうしてこんな奴らを従えてんだ! 金で雇ったのかぁ!?」 「随分鈍い方ですね。私が彼らに給金を出しているのは事実ですが、私は組織の長ではありませんよ」  冷たく突き刺さるような錯覚すら覚える眼差しで、シイナは淡々と彼らに事実を告げる。 「私はただの会計係です。この辺りを取り仕切るヤクザのね。それで、アナタ方がどこのどなたかという話をしたいのですが……素直にお喋りした方が楽に死ねると思いますよ」 「え……」  シイナが合図を出すと、部下達は電動工具の電源を入れて不埒者たちへと詰め寄っていく。響き渡る命乞いと悲鳴を平然と聞き流しながら、シイナは面倒臭そうに息を吐いた。

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