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第5話 ゲーム

 薄闇に包まれた視界。酷く酩酊したときのように不快さを伴う眠気が、浮上しようとするユオシェンの意識を妨げていた。  ダメだ。早く起きないと。  理由も分からず何故か強くそう思い、ユオシェンは目の端を震わせ、ゆっくりと瞼を持ち上げる。だがそこに広がっていたのは、相変わらずの暗闇だった。 「え……」  小さく喉が震え、声が漏れる。遅れて、自分の手が頭上にまとめられて拘束されており、暗闇だと思っていた視界は目隠しをされているがゆえのものであると悟る。 「シイ、ナ……?」  僅かな希望を込めて名を呼ぶも、返ってきたのは己の声が反響する音だけだ。  パニックで息が荒くなりながらも、必死で記憶を辿る。そうだ。自分は不用意に玄関のドアを開けて、宅配の男にスタンガンを当てられて、それで――  ごくり、と唾を飲み込む。否応なしに自分の置かれている状況を理解する。自分は、何者かにさらわれて、どこかに閉じ込められているんだ。  恐怖で体が震え、全身から冷や汗が噴き出す。身じろぎをすると胸元から鈴の音がした。どうやら自分はあの扇情的な格好のままでいるらしい。  どうしよう。逃げないと。拘束された手首を動かすも、ジャラジャラと鎖の音が鳴るばかりで、枷が外れる気配はない。何かの台に仰向けに乗せられた状態で拘束されているのだということはすぐに分かったが、手首の枷のせいで立ち上がって降りることも叶わない。 やがて自力で脱することは不可能だと悟り、ユオシェンは全身から力を抜いた。  大丈夫。きっとすぐにダーリンが助けに来てくれる。相手の目当てはきっと情報か何かだろうから、意識が戻っていないふりをしてできるだけ時間を稼ぐんだ。  何かあった時のために、あらかじめシイナに言い含められていた作戦を脳内で反芻し、ユオシェンは意識を失っている演技を始める。  呼吸を落ち着かせるんだ。何か言われても絶対に返事をしない。寝てるから尋問しても意味ないって思わせないと。  緊張のせいで高鳴る鼓動を押し隠し、ユオシェンは静かに呼吸を続ける。  そのまま数分が過ぎた頃、不意にドアが開く音がして、複数人の足音が騒がしく部屋の中へと入ってきた。 「ったく、ボスの慎重さには呆れるっつーか何というか」 「それなー。こんな雑魚一匹捕まえて見張るのに、人集めすぎだっての」 「まあまあ。そのおかげで俺たちはこのエロ衣装着たハニーちゃんとお喋りしていいってことになったわけだし!」 「だな! おーい、会計係くんのハニーちゃーん? お目覚めの時間でちゅよー?」  頬を軽くぺちぺちと叩かれ、覚醒を促される。ユオシェンは一切それに反応せず、沈黙を続けた。だがその態度は男の気に障ったらしい。男はユオシェンの髪を掴んで、至近距離で凄んできた。 「あ? 起きろよ、エロ男。起きねえなら顔の形変わるまでぶん殴るぞ!」  荒々しい息づかいを肌で感じるほどの距離で怒鳴られ、震えそうになった体を必死で堪える。  ダメだ。すごく怖いけど、ここで反応したらこいつらの思い通りになる。  緊張で全身が強ばりそうになるのを理性を総動員して耐え、ユオシェンは沈黙を貫き続ける。目隠し越しにも睨み付けられている視線をはっきりと感じながらさらに硬直していると、怒り狂う男を他の男が宥め始めた。 「まあまあ。時間はたっぷりあるんだし、ここはゲームしようぜ!」 「ゲームだぁ?」 「そう! せっかくハニーちゃんがこーんなエッチな服着て来てくれたわけだし、ここは期待に応えないと男としてどうかと思うわけ! にしても、ホントエロい体してるよなー、男抱く趣味ないはずの俺のちんぽが滅茶苦茶反応しちゃってんだけど!」  近付いてきた男はねっとりとした声でユオシェンの体を批評する。  気持ち悪い。近付くな。お前達のための服じゃない。俺をハニーと呼んでいいのはシイナだけだ。  嫌悪と怒りで体が震えそうになるのを必死で堪える。ここで起きているのがバレてもろくなことにはならない。我慢するんだ。 「はぁー、テメェの股間はどうでもいいけどよ。ゲームってのは一体何するつもりだ?」 「ああ、それだけどさあ――」  男は話しながらユオシェンの肌に触れ、乳首の先のクリップをぴんっと弾いた。 「ッ…………!」  体は少し震えてしまったが、声だけはなんとか出さなかった。急に快楽を与えられたことに頭の中が混乱し、スイッチが入りそうになる体を理性で繋ぎ止める。  男は、ユオシェンの尊厳全てを踏みにじるような声色で言った。 「今から順番にコイツにイタズラしてさぁ、目を覚まさせた奴が最初にヤっていいってのはどうだ?」

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