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第12話 見ててやる*
「し、シイナ、これは、ちがっ……」
あっという間に目に涙が溜まり、情けなく命乞いのような声がユオシェンの喉から出る。シイナは数秒絶句した後、ユオシェンがそれでもまだ胸をあらわにしてその先端に指を添えているのを見て、大きく嘆息した。
「ユオシェン、お前なぁ……」
「ち、違うんだよシイナ! これは媚薬のせいで、俺の意思じゃなくてっ、お、俺、攫われて迷惑かけたのに一人でサカってるわけじゃなくてっ……」
「へえ、そうなのか」
平坦な声でシイナは答える。ユオシェンはびくっと肩を震わせ、手を下ろし身を縮こまらせた。
だがそうやって反省と怯えを滲ませるユオシェンの前に椅子を引っ張ってくると、シイナはそこに腰掛けて悠然と足を組んだ。
「じゃあ続けていいぞ。俺はここで見てるから」
「へ?」
「媚薬を抜くためにやむを得ずやってることなんだろ? だったら恋人の俺がそれを見守っても問題はないよな?」
銀フレームの眼鏡をハンカチで拭いながら、どうでもよさそうにシイナは言い放つ。ユオシェンは絶望で喉がからからになってしまいそうになりながら、何かを言い返そうと口を開け閉めした。
シイナは形のいい薄い唇を優雅な笑みの形に歪めると、まるで興味深い実験を見守るような瞳でユオシェンを射抜く。
「ほら早く」
「うぅ、でも……」
「ユオシェン。大好きなダーリンのお願いが聞けないのか?」
首を軽く傾げて、鋭利な目元をさらに細めてシイナは促す。
「わ、わか、り、ましたっ……」
ユオシェンは前を開けていた寝巻きをさらにはだけさせて肩を出し、淫らに飛び出た胸の先端をシイナに見えるように突き出す。
空気に触れてひりひりと主張するそこを見下ろし、ごくりと喉を鳴らしてから、ユオシェンは両手の人差し指で己の乳首をぐっと押し込んだ。
「んっ、い“ぃっ……♡あっ、あ”、へぁ♡♡」
過剰な快楽が脳へと伝達され、指が勝手に胸の先端をこね回し始める。ユオシェンは断続的に達しながら、その視線はシイナへと向けていた。
「あっ、あ“♡♡ぃ、ひ、くっ♡ン、ぐ、あっ、あ”あっ♡♡」
濁った声が喉から漏れ、舌先が口からこぼれて唾液が淫靡に糸を引く。目の裏に火花が弾け、明滅する視界を涙で歪ませて、それでもなおユオシェンの目はシイナを捉えていた。
「あ“ー、あっ、いっ♡し、しい、なぁっ♡」
「ああ、俺はここにいるぞ」
余裕のある態度でゆったりと腰掛けながら、シイナは喉の奥を鳴らすようにして笑う。その笑みの意図が掴めず、ユオシェンの目から涙が溢れ出す。
「し、しいなぁっ♡ごめん、ごめんなさっ♡♡あっ、ああっ♡」
「なんで謝るんだ? 媚薬のせいで仕方なくやってることなんだろう?」
まるで獲物を見定めた蛇が肌を這い舌なめずりをしているかのように、シイナは獰猛な光を宿した目でユオシェンの全てを観察する。
ユオシェンはいやいやと首を横に振りながらも自分の手を止めることはできず、必死で己の内心を吐き出す。
「だ、だってぇ♡こんな、すぐ発情して乱れ狂ってっ、助けてもらったのに、我慢できなくてっ♡迷惑かけてばっかりの最低の変態っ、シイナに嫌われちゃうっ……♡ん、ひっ♡あっあっあっ♡♡」
嘘偽りのない本心から懺悔しているというのに、体は浅ましく快楽を求めて揺らいでしまう。早くそれを終わらせたいと念じた心が指先に力を込めさせ、両胸の先端を思い切りつねりあげると同時に、ユオシェンの体は派手に跳ねて絶頂した。
「んぎ、ぃっ、ああっ♡♡イクっ、いくぅっ……ぎっ〜〜〜〜〜〜♡♡♡」
絶頂した拍子にさらに乳首を強くつねってしまい、一瞬で終わるはずだった快楽の波は濁流となってユオシェンの全身に襲いかかる。
ユオシェンの体は前に倒れ込み、シーツに胸を押し付けてカクカクと腰を振る。媚薬のせいで脳を覆っていた違和感は多少マシになったが、その代わりに押し寄せてきた罪悪感と絶望に心が打ちひしがれる。
「やだぁ、シイナ、捨てないでぇ……」
ぐすぐすとベソをかくユオシェンの乱れたつむじをシイナはしばらく眺めた後、立ち上がり彼へと歩み寄った。
「ユオシェン」
「へ……?」
顔を掬い上げるように両手で持ち上げ、シイナはユオシェンに軽くキスをする。不意打ちで与えられたその感触にユオシェンが目を白黒とさせていると、シイナは不敵ににやりと笑った。
「誰が捨てるかよ、馬鹿ハニー。お前のために散々駆けずり回った俺への、ちょっとしたご褒美を貰ってただけだよ」
きょとんと目を丸くし、ユオシェンはシイナの言葉を脳内で咀嚼する。
つまりシイナは自分のことを嫌っていなくて、ちょっといじめていただけで。
こちらは本気で不安だったのにという不満がむくむくと膨れ上がり、ユオシェンはむっと顔を顰めて、シイナを軽く睨みつける。
「意地悪っ……」
「そりゃ意地悪もしたくなるさ。あんなエッチな格好を俺以外の奴に先に見せただけじゃなく、勝手に自死しようとするとか本当に腹が立つ」
僅かな怒りを込めて見据えられ、ユオシェンは肩を落として俯いた。
「……ごめん」
「許すよ。だからもうそんな顔するな」
ベッドに座った状態のユオシェンの顔に、シイナは触れるだけのキスをいくつも落とす。ユオシェンは誤魔化されているような気分になりながらも、軽く目を閉じてそれを受け入れた。
「なぁ、シイナ」
「うん?」
「抱いてくれ。とびっきり酷く。……あいつらにされたこと、忘れたいんだ」
ユオシェンはシイナと絡めた指にぐっと力を込める。シイナは戸惑ったようだった。
当然と言えば当然だ。自分は暴力的な陵辱を受けたばかりで、体だけではなくきっと心にもまだ生々しい傷跡がある。だけどユオシェンは、シイナに求めることをやめなかった。
「あんな醜態晒して、あっさり許されて……罰を受けないと安心できないんだ、頼むよ」
「だが……」
理屈では気持ちを理解しても、ユオシェンへの心配が邪魔をしているのだろう。シイナが躊躇っていることを少し嬉しく思いながら、それでも我は通したくて、ユオシェンはシイナの手を強く引く形で己の上に倒れ込ませる。
「お願い、ひどくして」
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