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第5話

ラブレグルス 「......本当に、行ってしまうんですね」 「学校いくだけだから」 「帰りはいつになりますか......?」 「授業次第じゃね?」 「......冷たいですね。やっぱり外の世界に行けば、私なんて捨てられてしまうんですね」 「さては紅明、話聞いてないな?」 「っ!どうして......!なんで?!何がいけなかったのですか!!日輪が望むなら、なんでも用意するし、なんでもしてあげます!だからどうか...!後生です、日輪!私から離れないで......!」 「あああああああ!もう!うるせぇーー!いいから手を離せ!遅刻するだろーがよ!」 赤い絨毯がひかれ、リビングの次に大きなシャンデリアが輝く月宮家の玄関で、日輪と紅明が騒ぎあっていた。 そして、その様子を(死んだ魚の目で)見守っている二人の男がいた。 紅明の身長を優に越す逞しい体格は、スーツがよく似合っているのだが、違和感があるとすれば、その金髪だろう。 ただ、その整った堀の深い容貌は、違和感を相殺していた。 彼の名は、廣長歩(ひろちょうあゆむ)、月宮家のメイドのひとりである緑子の兄で、月宮家傘下の名家である、廣長家の跡取り息子だ。 もう1人は、紅明と同じくらいの身長に紅茶色の髪と赤い目。 一見好青年にみえる綺麗な顔を歪ませるにやっとした唇が、彼の性格を表している。 彼の名は、結崎直人(ゆうさきなおと)、月宮家のメイドのひとりである叶多の兄で、月宮家傘下である、結崎家の跡取り息子だ。 「歩~これいつ終わるんかな~??学校始まるよ?」 「知らねー。つーか地味に俺、このちっこいのと初対面なんだけど」 ぎゃーぎゃーと騒いでいた日輪が歩と直人を見つけると、ひぃ!と声をあげて離れようとしていたはずの紅明に飛び付いた。 「え?どーしたん?」 突然の日輪の変わり身に、歩と直人はすっと身を引いた。 しがみつかれていたはずの日輪が自分より大きな紅明の背に隠れようと縮こまっており、その小動物のような行動に紅明のほうが緩んだ。 「日輪~やっぱり今日は休みましょう。お手伝い3人は大学だから、日輪の送り迎えするの、この人相が悪いやつらですよ?」 「おい」 緑子達お手伝いは普段日輪の登下校時間外に授業を入れていおり、たとえ誰かが日輪の送り迎えに付き添えなくても必ず誰かが付き添っていた。 しかし、今日は運悪く3人ともが朝から授業だったのだ。 日輪にひとりで登校なんてさせれません!と抗議し始めた紅明に呆れた緑子と叶多が自分達の兄を呼んだのだ。

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