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第3夜 〈おまけ〉睦言
ふ、と瞼を上げる。
意識が浮上してしばらく、暗闇に目が慣れるまで動けずにいた。暖かいけれどなんだか窮屈だなと思って身じろぎする。体を拘束していた長い腕が緩み、耳元で声がした。
「大丈夫か?」
艶がある声が、やや掠れていた。こいつも眠っていたのかもしれない。というか、抱き枕よろしく腕の中に抱え込まれていたのかよ俺……。
自己嫌悪に陥りながらも、体が声に反応して肌が火照る。
意識を失う前と同じようにベッド脇のルームライトが仄かな明かりを灯していて、暗さに慣れた目で壁の時計を見るとまだ丑三つ時だった。
ん、と返事ともつかない唸り声を出して仰向けになろうとして違和感に気付く。
おいおい、まさかだろ。
「──なんで抜いてねえんだよ」
流石にサイズは小さくなっていたが、体の中に違和感ありまくり。いつもなら綺麗に整えて明かりも消して眠るところから考えても、なんだか今日はおかしい。
「だって浩司の中気持ちいい」
カッとなって腕を引き剥がそうとして、逆に力を込められた。
「それもあるけど、急にぐったりするから心配で離れられなかった」
いやいやいや。それでも抜いとけよ。
まあ……確かに俺もびっくりしたけど。
最中に女がイクのとはまた違う。完全に意識がブラックアウト、いやホワイトアウトか、したからな。
「大丈夫みたいだから、もう離れろよ」
「やだ」
さっきより耳に近い場所で声がして、あ、と声が漏れた。確信犯だな、この野郎。
そのまま首筋に唇と舌を這わされ、体が反応する。熱い吐息が漏れると、違和感が大きくなっていった。
「や、ちょっ……」
中で存在を主張し始めるもの。軽く揺すられ、喘ぎ声が漏れた。
「まだ足りない」
だから耳元で喋るなって。
「あっ……もう十分だ、って、やっ」
胸元から滑り降りた手の平に中心を握り込まれ、そこがすでに反応しているのを確認して、嘘つき、と耳朶を噛まれた。
鼻にかかった声に反応して中のものがいっそう大きく硬くなる。そのまま腰を抱えて膝立ちにされて、初めてバックから攻められた。
散々啼かされ喘がされて声が掠れ、それなのに今度はいつもの体勢でも攻め立てられた。
「ホント、も、無理ぃ……や、んぅ」
恋人たちともヤって、バイトもしてて、なんでこんなに絶倫なんだよ。そう思ったら、何でか言葉にしてしまっていた。
「そんな、足りねえんならっ、榎本ともすれば?」
ぴたりと動きが止まる。
「なんでそうなんの?」
ん? ちょっと不機嫌?
「みっちゃんの何処にエロスがあるってんだよ。しかも童貞なのに俺が楽しめるわけないだろ。つうか、それ以前に男抱くくらいなら他にもっと女作るし」
「俺の立場は……」
俺は男として認識されてないっつーこと!? 有り得ねえ。
「あー、もう黙って」
限界まで膝を割られて、上半身が被さってきた。噛み付くようなキスをされ、俺も無意識に舌を絡めて求め合う。息が上がるほど互いの咥内を蹂躙し、最後に舌先で唇を舐められる頃には意識がまたぼんやりとして思考が出来なくなってしまった。
「浩司こそ、ウェイターのときにケツ触られたりして感じてんの?」
「んなわけあるかよ」
「ふうん、ホントかなあ」
「それ以上されたらまずは声出せないように喉潰してからぼこぼこにするに決まってんだろ。気持ち悪い」
宵の口から明け方まで開いているバーのような店でもバイトをしている俺は、その筋の人にたまに口説かれることがある。
別に専門の店ってわけでもないのだが、オーナーがそっち方面の人でなんとなく集まってくるらしい。いわゆる類友ってやつだ。
そういう輩にはやんわりとお断りしているし、俺がキレたら暴力に訴えることを躊躇しないと知っているオーナーから注意されたりして、客も本気では誘ってこないので事なきを得ているのだが。
「お前以外とこんなこと出来るかよ」
深く考えもせずに言った言葉に、また唇を奪われる。
「──この天然」
ぼそりと囁かれても、何のことやら分からない。
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」
啄ばみながら囁かれて、それだけじゃ足りなくて腰を押し付けるように上げる。結局、ここまできたら最後までやってもらわないと俺も足りないってことだ。
こういう変わった関係もいいかもしんない。そう思ったのも束の間、急に突き上げられ大きくグラインドされ、再び何も考えられなくなってしまった。
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