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第4夜 kiss×kiss×kiss
定例行事の矢部とのデートは夕飯を食って駅まで送っていって早めに切り上げた。
先週みたいにウォルターの家について行きたがったけど、もう勘弁して欲しい。お仕置きと言う名の寸止めとアルコール責めに加えての激しい情事で腰が辛いのなんのって。
朝は起きられずになんとかウォルターに誤魔化されて帰って行ったけど、絶対変だと思ってるはずだ。
はー……。溜め息をついて、一旦帰宅して上がるとダイニングから笑い声。珍しく両親が帰ってきているらしい。
暖簾だけで仕切られた廊下から頭をのぞかせると、「おかえり~」と三人分の声がかかる。
「うっす」
「今日もデートだったんだ? いいなー。どこ行ってきたんだ?」
幼馴染の本城進 が、椅子に腰掛けたままこちらを見上げてくる。いつも眩しくなるほどの全開の笑顔だ。
「どこって……ゲーセンとか、ボウリングとか。あ、飯食ってきたから」
最後の一言は母親に向けたものだったが、「言わなくてもあんたのは用意してないわよ」とあっさりスルーされた。
姉ほどの暴力には訴えないまでも、この娘にしてこの母ありというのがよくわかる。手前の椅子に座っている父親が「まあ恒例だからなぁ」と取りなすように微笑んだ。
「じゃあ、部屋上がらせてもらうな」
進はすっくと席を立つと、御馳走様でしたーと両親に声をかけて部屋を出てきた。
約束はしていないけど、何かあったのかと少し心配になる。中学に上がる頃まではこうやって互いの家を行き来するのは日常で、特に約束もなにもしていなかった。二人とも部活動でそれなりに疲れてはいたけれど、帰宅して着替えるやいなやどちらかの家で夕飯を食べ一緒に風呂に入り宿題をして遊びながら眠る……そんな間柄だったから。
進に彼女が出来て、俺は夜遊びを覚え、高校生になってからは殆どプライベートな時間は共有しなくなっていたのだけれど。
だからと言って、俺にとって進が一番の親友だという事実には変わりがない。だから、誕生日とか特別な日だけでも必ず時間を割いてくれていることをとても嬉しく思っている。
「あー。久し振り、浩司の部屋~。変わってねーな」
俺がドアを開けて入るその横をすり抜けるようにして進はボワンとベッドにダイビングする。
「片付いてて落ち着く~疲れたー」
ごろんと転がり大の字になって大きく息をつく進。
「どした? 疲れてんなら家で休んでた方がいいんじゃねぇ?」
バイトだなんだとあまり自宅にいない俺の部屋は、姉曰く片付きすぎるくらい片付いている。
別に、服や物を散らかす癖がないだけだ。どうせ自分で後始末しなきゃならないんだから最初から床に置かなければいいというのが持論なだけなんだけど。
俺はポケットから煙草とライターを出して部屋の中央にあるガラステーブルに置くと、ベッドに凭れるようにして話しかけた。
矢部の場合はお互いに喫煙者だから遠慮なんかしないが、進の健康を損ねるわけにはいかないので一緒にいるときは自室でも吸わないことにしている。そんなに依存しているわけではないので何時間か吸わなくても全然平気だった。
「あー……。うん。ちょっと教えて欲しいことあって」
「ふうん?」
成績は少しだけ俺の方が良いから、解ることなら教えてやれるけど、そういうのなら彼女である美川に聞いたほうが手っ取り早い。会う口実にもなる。だからそういうことじゃあないんだろうな。
次の言葉を待っていたけれど、ごろごろと寝返りを打つばかりで一向に話が進まない。
別に急いでいるわけじゃないんだけど、いつも通りウォルターの家に行く予定なので、朝までこうしているわけにはいかないんだよな。
「そんな聞きにくいこと? 時間かかりそうならちょっと電話かけさせて」
「あっ、そんな長い話じゃねーよ!! ごめん、なんか予定あるんだ?」
慌てて体を起こす進。短く刈っている日焼けした髪が乱れているが、そんな格好でも可愛いなと思ってしまう。学園で「ホモだち」と揶揄される俺たちの仲は伊達じゃない。勿論、実際は仲の良い幼馴染ってことは周知の事実ではあるんだけれど。
「時間は決まってねぇから大丈夫。いつもウォルターと飲んでっから」
「あ、そうなんだ……」
進はビール一本で気持ちよく寝てしまうので、一緒に飲むには向いていない。それにサッカーの練習に差し障りもあるため本人も自分の体質がわかってからは、自分から飲もうとはしなくなった。そういうのもあって、俺は夜に進と遊びに出ることはない。
「じゃ、あの、思い切って訊くけどっ」
「うん?」
「キっ……」
「き?」
「キスの仕方、教えてっ」
まさかの質問内容に、俺は呆気にとられて口を半開きにしたまま、体を後ろに捻ってぽかんと進の顔を見つめてしまう。布団の上で胡座をかき、顔を真っ赤にして俯いた進は、上目遣いにそろりとこちらを見つめ返してきた。
「キスってあの唇と唇をくっつける……」
コクコクと人形のような動きで進が首を上下させる。
「って、教えるも何も、んなのは美川とやってっだろ」
ふるふると勢い良く首を横に振る進。
「だからそのキスじゃなくって」
「えーと……」
ようやく俺も合点が行く。ああ、つまり進と美川がしてるみたいな触れるだけのキスじゃなくて俺がセックスの最中にしてるみたいなやつってことか。
あー、けど分かってもこういうのってさあ……。
「どうやって?」
素朴な疑問に進もうーと唸るばかりだ。
「言葉で?」
「それだったら姉貴にでもハーレクイン借りて読んだほうがよっぽどタメになるぞ」
「う、それもそうか……紫さんの小説って手もあるか~。けど俺、小説とか読んだら寝ちゃうんだよなぁ」
困りきっている進は、子犬みたいに文句なしに可愛い。だから俺もついつい助けたくなってしまう。あ、いや、今回はからかいたくなるの間違いか。
「なんなら、実技指導しよっか」
「じ、実技―っ!?」
目を見張って、あまり良く判っていない様子の目の前に、俺は腰掛ける。
シングルベッドが二人分の重さに軋んだ音を立てた。
つまり、と前置きをしてから、俺はそっと前かがみになり進の下唇を啄んだ。軽く触れるだけにしてすぐ離れ、反応を伺う。
「これの続き、しよっか?」
え、と声を漏らした顔は驚いているだけで、別段嫌そうではない。
「不快だったら言ってな」
断りを入れてから、もう一度啄んだ。勿論俺が進に対して男だからと嫌悪感を抱くわけはない。むしろ、進なら抱ける。
つうか、男でそんなふうに思えるのは進だけだと思っていたのに、うっかりウォルターとそんな関係になってしまってそっちの方が驚きなんだけど。
特に拒む様子もないので、俺はそのまま何度か上下の唇をそれぞれに啄み、舌で軽く舐めてから口を塞ぐように口付けた。
ん、と苦しそうに悶えた隙をついて舌を口内に滑り込ませると、びくりと肩がはねた。
構わずに歯列に沿って歯茎の裏側を刺激し上顎を行ったり来たりさせると、あふ、と進の声が漏れる。ここが気持ちいい人は多い。進も例に漏れなかったわけだ。
奥の方に引っ込められていた舌を舌先でつつき、おずおずと差し出されてきたものに絡めるようにして吸う。んん、と堪えきれない喘ぎが漏れ、それが俺の下半身を刺激する。
あ、やべえ。やりすぎるな俺。自分だけその気になっても辛いだけだろ──。
徐々に交わりを軽くして、最後にまた啄むようにして唾液を舐めとってから、俺は体ごと唇を離した。
はぁ、と息を吐いた進の頬は紅潮している。目もトロンとしていて、このまま押し倒してしまいたい情欲に駆られる。我慢しろ、俺。
「こんな感じ?」
わざと意地悪げに微笑んで首を傾げてみせる。
「う……。これが大人のキス……っ」
足を崩して半分伸ばしていた進だったが、はっとしたように足を引き寄せ体育座りになってしまった。
「やべー……今ので勃っちまった」
マジですか。
俺はのしかかるように上半身を被せると、股間を確認する。勿論手で。そんなのもガキの頃からやってることだから、嫌がりながらも進だって本気で逃げたりはしない。
「進、続きしよ」
「はん?? 続き?」
「俺、進ならやれる」
え、え、とどもるだけで押しのけようともしない進の体を、俺は体重をかけて後ろに倒した。
「でもさ、浩司」
「何?」
唇を首筋に押し当てて舌を這わせると、びくりと背筋がのけぞった。
「俺、男なんだけど……や、う」
裏起毛のトレーナーとその下のシャツの裾から手の平を滑り込ませると、さらに腰が跳ねた。
「そんなの物心ついた時から知ってる」
「だよなー……って、浩司ってばぁ、はぅう」
語尾が甘やかなものに変わったのは、もう一方の手が下の昂りを軽く握ったから。
「ダメだって、下に、おじさんおばさんいるっ」
そのまま撫でさする手を包むように両手で押しやり、進は呻くように言った。
なるほど。そりゃ尤もな理由だ。おまけに、深夜には姉貴も帰ってくる。それまでにはことは終わっているはずだけど、なんか気が引ける。
ようやく少し気持ちが萎えてきて、俺は体を引いた。
千載一遇のなし崩し的なチャンスだったけど、ここは退くところ。事後の進の態度も変わりそうで怖いし、美川と気まずくなんてなって欲しくない。できれば一生このまま、親友同士でいたいんだよなぁ。
弾んでいた呼吸が整ってきたなと、進の服の乱れを直していると、それが規則的なものに変わったことに気づく。
まさかと思って顔を見ると、瞼が下りて仰向けのままぴくりともしない。いつの間にか寝息に変わっていたらしい。
すげえ。今の今までさかってたのに、もう熟睡だと。
まだ少し昂ぶりの残る体のまま、俺は進に布団をかけて電気を消してから部屋を出た。
元々出かける予定だったとはいえ、なくてもこれじゃあ部屋にはいられない。したいのに何もできねぇなんてな。
まだダイニングにいた両親に、ウォルターの家に泊まるから進はこのまま寝かしておくと告げると、俺はバイクのキーを掴んで靴を引っ掛けた。
珍しい事に、チャイムを二回押してもドアが開く様子はなく、中で虚しく響くばかりで人がいる気配もなかった。
週末の恒例行事となってからは初めてのことだけに、俺は戸惑う。
どうすっか……少し待っていれば帰ってくるのか、それとも急用が出来て今晩は帰ってこないのか。学校で何も言っていなかったから、多分俺のデートが終わるくらいのタイミングで帰宅しようと少しだけ外出しているという可能性が高いだけに、そのまま待とうと思い直す。
確かに、いつもより少し早い時間だしな……。もしかしたら一人で飲みに出ているのかも。
そうはいっても師走の夜だ。このまま玄関の外で待ち呆けは辛すぎる。でもなー、この近くってコンビニもないし、飲み屋に行くにもちょっとだけって訳にゃいかねえし、微妙なんだよな。
取り敢えず一服、と思って上着のポケットを探って気づく。しまった、部屋に置いたままだった……。
タイルの階段に座るのもケツが冷たいので立ったまま所在無げにしていると、足音が近づいてくるのに気づいた。
キィ、と門扉が開き、ようやく住人が姿を現す。白いハイネックのセーターの上にジャケットとコートを羽織ったウォルターが、驚いてこちらを見つめながらポケットから鍵を取り出した。
「ごめん、ちょっと出てた。いつももう少し遅いから」
「いいよ、さっき着いたトコだし」
俺は知らず竦めていた肩に気づいて下ろすと、開けてくれたドアをくぐりながら革ジャンを脱いだ。
施錠してから靴を脱ぎ、先に上がっていた俺の横をすり抜けて電気をつけたり暖房を入れたりと手際良く準備してから、ウォルターは自分のコートとジャケットをコートツリーに掛け、「風呂先に入る?」と訊いてきた。
冷えた体を温めたいのもあって、俺は先に借りることにした。
以前のように浴室まで押しかけてくることもなく、ジーンズと長袖シャツ姿でリビングに戻ると、テーブルには酒と肴が用意してあった。肴といっても軽食のようなものも含まれるので、準備に時間がかかって風呂には来なかったんだろうな。
「おさき~」
ん、と微笑して、ローソファーに深く腰掛けたウォルターはグラスをあおった。
いただきます、と手を合わせてから、俺も手酌で飲み始める。部屋はいい感じに暖まっているので、ウォルターはセーターも脱いでしどけなく背もたれに身を預けていた。
んー……ちょっとなんかいつもと雰囲気違うような気がしないでもない、んだけど。疲れてるんだろうか。
「ウォルター?」
見上げる俺の目に視線を合わせて首を僅かに傾げる。
「なんか……あった?」
虚をつかれたような表情をしてから、やがて口元を綻ばせて、やつはグラスをテーブルに置いた。そのまますとんと床に腰を落として近くに座っていた俺に体重を預けてくる。
「はは、なんでわかんの?」
「なんでって言われても」
理由なんて判らない。ただ、こういう風に寂しそうな困ったような、そしてちょっと悲しそうな表情を初めて見たから。
進みたいになんでも気軽に言い合えるような仲じゃあ決してない。むしろ知らないことのほうが多いというか、殆ど何も知らない。それでいいとも思っている。
だから、知りたいとか教えて欲しいとかそんなことは言わない。誰かに話すことで胸が軽くなるのなら──黙って聞くことくらいは出来る。
「浩司」
「ん」
そのまま頭を摺り寄せてくるので、俺はアスパラベーコンを食べていた箸を置いてその背に腕を回した。なんかいつもと逆みてぇ……。
「どうせ判ることだから先に言っとく。春から姉が一緒に学校に通うことになった」
声に抑揚がない。
「姉さん? いたんだ……っていうか、姉さんなら大学に行くんじゃ」
春から俺たちは三年生だ。一つ違いでも大学生だろう。
「いや──成績の方では大学に入れないこともないけど、生活面とか常識的に足りないとこ多いんで、俺たちと同じ学年に入るんだってさ」
ふうん、と鼻を鳴らしてひとまず納得。
「それで沈んでんの? 姉さんってまさかうちの姉貴みたいな横暴とか?」
それならがっくりくるのも頷ける。呑気な一人暮らしから小間使いに転身だもんな。
ぷっと吹き出すウォルター。ん? 違ったのか。
「いやいやいや、姉は正反対かな……人懐っこくて裏表無いし隠し事とか出来ないタイプ」
「へー……」
それの何処がダメなんだろう。出来る事なら紫 と取り替えて欲しい──。
あー、と唸りながら、ウォルターはズルズルと俺に凭れたまま床に体を落としていく。
「天使みたいなんだよ。それがマズイ」
「いくら美人でも肉親のことんな風に言えるかな……そりゃあ、お前の姉貴なら凄ぇシャンだろうけど」
呆れて溜め息をつく俺の脇で、くくっと笑い声が上がる。
「会えばわかるさ」
「で、何がマズイって?」
腰の方から聞こえてくる笑い声は、ちょっと乾いている。自嘲、というか……自虐的というか。
「ホント、洒落にならないんだけど──」
床に転がったまま、こちらに寝返りをうって、俺の太腿に腕を回すと顔を押し付けるようにしてくぐもった声で言った。その言葉に、俺は固まってしまう。
「──え」
今、「今度こそ押し倒してしまう」とか何とか聞こえたような……。
笑い声は止んでいる。どこを見るともなく、そのまままた仰向けに転がり薄く開いた口から長い吐息が漏れた。
冗談──じゃあなさそうだな……。うん。
「お前、いくら博愛主義の節操なしでも、そりゃあヤバイっしょ」
「ああ、だからマズイんだって。一つ屋根の下になんか住めるかよ……。実家は広いし他にも住み込みの使用人がいるから大丈夫だったけどさ」
あーあ、とまた盛大な溜め息。
「もうなるべく誰かの家に泊めてもらうしかないよな……」
その一線だけは越えちゃならないよな。激しく同意。
溜め息をつき続けるウォルターを眺めながら、俺は口直しにブランデーを一杯飲み干した。本人は色々辛いだろうし悩んでもいるんだろうけど、こんな姿学園の女どもが見たら雪崩のように押し寄せてきて何とかステディになれないかと競い合うに違いない。
シャツの合わせは先刻の寝返りで乱れて、象牙のように滑らかな肌がちらりと見えている。
あ……鎖骨のラインとか綺麗だな……。いつも見ているはずなのに、こっちがこいつの好きに弄ばれるばかりであんまり意識してなかったんだけど、やっぱりこいつってばエロスの塊だ。シミ一つ無いってよく使われるけど、ほくろだってないかもしれないくらいに綺麗な肌なんだよな。俺は唇薄い方だけど、こいつの下唇だけちょっと厚めのとこ、好きかも……。
空のグラスをテーブルに戻した俺は、意識せずに体を寄せていた。両腕を床につき覆いかぶさるようにして鼻と鼻を寄せると、ウォルターはようやく焦点の合った目で見つめ返してきた。
すり、と鼻先を擦り合わせてから、そっと唇を喰んだ。
「寝るだけなら部屋提供するけど?」
膝で体を支えて、シャツのボタンをはずしていく。そのまま胸元に唇を這わせると、手の平で腰から撫で上げていきながらところとごろ強く吸った。黙ってされるがままなのを良いことに、スラックスのチャックを下ろし、ベルトとホックも外して前を寛げる。流石に勃つまではいっていないのを確認し、舌を這わせたまま首筋から唇へと移動した。
俺もこいつもキスが好きだ。これだけでほかのどんな場所を愛撫するより盛り上がる。応じてくる舌を絡めて互いに貪るように深く交わっていると、下のものも段々とその気になってくるのが判る。
自分のジーンズを下着ごとそろりと脱ぎ捨て、ウォルターのものも中から引き出してから、俺は腰の上に跨るように膝立ちになった。キスに意識を集中しているとはいえ、下の奴が気付かないはずはなかったけれど、面白がっているかのように開いた瞳が煌めいている。
すっかり硬くなってしまっている自分のと一緒にやつのも握り込み、俺は二本一緒に擦り始めた。
もう随分時間が経ち萎えていたとはいえ、進のときにその気になっていたからすぐにでもイケそうだった。でも、一人だけ先には大分切ないもんがある。
どっかこいつの弱点というか感じるところねえのかな~。もう片方の手を肌の上で彷徨わせるも、これといって反応はない。気持ち良くない訳ではなさそうだけど、性感帯じゃないのか……。
ちぇっ、と心の中で舌打ちし、両手を使っての愛撫に変更する。先端を指の腹で撫でながら、自分の先走りを撫で付けるように擦る。
わー、大分大きくなってきた……よくいつもこんなの入れられて平気だな俺。あ、いや、平気じゃないから翌日大変なんだけどっ。
自分から始めといてナンだけど、やっぱり先にイキそう……いいかな、我慢しなくて。
舌を解いてから「イク……」と囁くと「いいよ」と返しながら伸びてきた腕に頭を抱き寄せられ、唇をきつく吸われた。絡んでくる舌と自分の手の刺激で、そのままウォルターの腹の上に白濁を散らせる。
まだ解放する気がないのか頭を離してくれないので、ガクガクする膝をついたまま俺は何とか体重をかけないように踏ん張っていた。
さて、この後どうやってこいつをイカせるか──。流石に自分から入れるのはあんまりにも恥ずかしすぎる。……ってか、いつもうっかり俺が下に甘んじていたけど、別にこっちが入れる側でもいいわけだよな。そっか、それなら……。
とか考えている間に、腹の上のものを指に絡めて、つぷりと窄みに差し込まれてしまう。
「んうっ」
重ねたままの唇から漏れる声にお構いなしに、長い指が抜き差しされ、すぐに本数を増やされて俺は身を捩らせながらよがり声を上げた。
「溜まってたのかな? 積極的な浩司も悪くないけど」
「あっ、やあっ……そこっ」
口が解放されると自分の声とは信じられないくらい甘い声が零れてしまう。何とか両腕を突っ張り体勢を維持しているけれど、膝はがくがくで今にも倒れ込んでしまいそうだった。
「ひ、ぅうっ」
良い所を執拗に攻められて背筋を仰け反らせた時に、パタパタと涙が溢れ落ちた。中心はとっくに硬さを取り戻している。触れてもらえていないのに、先端からも雫が落ちる。
「や……、も、ダメぇ」
イきたい。もう少し決定的な何かが欲しい。それなのに、指は場所を変えて緩やかな動きに変わってしまう。
「ふぁ、あ……ど、して」
「どうして欲しいの」
「──イカせて」
普段だったら絶対言えないようなことも平気で口を突いて出るようになってしまった。
「じゃあ、支えてるから、自分でやってみて?」
にんまりと笑みを湛えたこいつは意地悪だ。両手で腰を掴まれて、刺激のなくなった俺は切なくて身悶えする。
体の奥でくすぶっている熾火のような熱を完全に燃やして欲しい。そのためにどうすれば良いのかは判っているけど──挿入されるのと自分であてがうのとは全然違うんだってば。なけなしのプライド的な問題で。
逡巡するさまを黙って見守られている。ここで引くなんて考えてもないんだろう。俺だって勿論辛い。
「──ふ……っ」
覚悟を決めると腰の位置を調整しながらゆっくりと下ろしていく。片手でヤツのものを支えて先端を充てがうと、そっと腰を落とした。
「んっ、んぁっ」
ぬるり、と圧倒的な質量が体を押し開く。まだカリしか入ってないだろうことは明白で、ここまで来たらもう理性はかなぐり捨てて一気に腰を落とした。
「ああああああぁっ!!」
結合の深さに体が悲鳴を上げ、まさに串刺しにされている気分だった。今までで一番深く繋がっている事は確実で、吐いた息を吸うのに精一杯でしばらくは身動きも取れない。
それなのにゆっくりと腰が持ち上げられて、抜ける一歩手前で膝を立たされて、それを見計らって下から一気に突き上げられた。
声にならない悲鳴を上げて、それから続く激しい出し入れに耐える。
痛みと異物感はやがて快感に変わり、快楽の波に揉まれながら自分からも腰を動かし、直に二回目の絶頂がやってくる。着たままのシャツが汚れるのもお構いなしに、そのまま吐精した俺を休めることもせずに、やつのグラインドは続いている。支えている腕もかなり辛い。ウォルターの支えが無かったらそのまま突っ伏してしまうだろう。
「いい? 浩司……」
額にうっすらと汗を浮かべたウォルターが艶やかに笑った。息も絶え絶えな俺は頷くことしか出来ずに動きに身を任せる。新たな快感がやってきていた。
認めたくないけど、しっかり快感を得ている俺は、この関係を手放すことが出来るんだろうか。
耳に入る熱くて甘い喘ぎが自分の口から出ているなんて、こいつとこんな行為をするまで全然知らなかった。
開かれた体は貪欲に中のものを絡め取るように吸い付き、出て行くのを拒もうと縋り付く。セックスで意識が飛ぶなんて初めてだったし、出血やさしたる痛みもなく受け入れられるなんて驚いた。
バイトで女を抱いているときには得られないものが沢山ありすぎて……俺はこのままどうなってしまうんだろう。
「──そろそろ……」
囁くように言われて視線が絡む。ぐいと首を引き寄せられて互いに舌を出して絡めては吸う。前傾姿勢の俺の下では、強く速くなったストロークが一瞬止まり、どくんと熱いものが体の奥を穿つ奔流になった。
ウォルターは眉を寄せて息を吐きながら緩く腰を動かし全部出し切ったのか、緩んだ腕でそろりと俺の髪をすいた。
荒い息をつきながら、その手を軽く握って隣に倒れ込むように寝転がった。足も腕も限界だった。体中の力を抜いて、静かに息を整える。
「あのさ、ウォルター」
ふん? と鼻を鳴らすように反応が返ってくる。
「お前の姉貴みたいな天使には程遠いだろうけどさ……この体抱く権利、お前だけにやるから。だから諦めろよ」
息を呑む気配がして、上半身を起こしたウォルターが視線を合わせてきた。目を合わせて、顎を引いてみせると、何だか泣き笑いみたいな表情で唇を震わせた。
「引きずっても、辛いだけだ。感情に流されたら一生後悔する。だから、土曜日は好きにしていいから、平日だけ恋人のとこ行くか部屋閉じこもって我慢しとけ」
何か言いたいのか口がわずかに開閉したけれど、そのまま声にはならずに覆いかぶさってくる。柔らかく唇を合わせ、それからまたもう一回戦しなきゃ収まらないくらいの濃いキスをした。
「で、同じ屋根の下に姉さんがいる状態で、今までみたいなセックスするって?」
「姉貴も酒強いのか?」
「いや、殆ど下戸」
「じゃあ、飲ませて潰しとけよ」
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