17 / 21
第17話 気まずい会合
「うん、とてもよくまとまっているじゃないか。よくここまで短期間に修正できたね!」
そう言って、篠原は嬉しそうに笑った。
佐野はいつもより覇気のない声で「ありがとうございます」と言った。目がしょぼしょぼしているせいで、笑顔にも力が入らない。
昨晩は伊坂との一件があったせいで、ほぼ一睡もできていないのだ。
それなのに、伊坂と仲良く並んで篠原のレビューを受けるなんて──間が悪いにもほどがある。
篠原のところについてからというものの、伊坂とは一度も目を合わせていない。
目どころか、合わせる顔がないのだ。
伊坂はいつものように淡々と礼を述べ、「他にご指摘はありますか?」と篠原に問いかけた。
「大丈夫、ないよ。あとは当日の喋りにかかっているけど、まあ君たちなら大丈夫だろう。このスライドは、ベースは佐野くんが作ったのかな?」
「あ、はい。俺が作りました」
「やっぱりなあ。伊坂くんの元のスライドは補足スライドに回したのか」
篠原は、本当にいい上司みたいだ。自分の部下の作ったスライドのことを覚えていてくれるなんて。
「はい。あれはあれでクオリティ高いし……もったいなかったので」
佐野の言葉に篠原は含み笑いをした。
「あれはあれで、ね」
「あ、いや、別にディスっているわけじゃなくて……!」
焦って言い訳をしようとすると、篠原がおかしそうに笑った。
「いやいや、いいんだよ。実際、伊坂くんの資料は細かすぎるから。伊坂くん、いい勉強になっただろう? 君たち二人はなかなかいいコンビになると思っていたんだよ」
「いいコンビ……ですか」
伊坂が低い声でつぶやく。その声は不服げに聞こえた。
佐野は思わず俯いた。伊坂に顔を見られたくない。
さぞ、自分は情けない顔をしているに違いない。
伊坂とはいいコンビになれたと思っていたのは自分も同じだった。
伊坂のできないことを佐野は得意だったし、佐野の知らないことに伊坂はとても詳しかった。
お互いの得意分野が違うからこそ、尊敬しあえる関係になれると思っていた。遠い存在だと思っていた、伊坂に近づけたと思っていたのに。
けれど、伊坂は今はそんなことは思っていないに違いない。
昨日の冷たい視線を思い出す。
便利屋なんて、くだらない活動をしていた自分のことを、伊坂がみとめてくれるわけはないのだから。
佐野は顔を上げて、「ありがとうございます」と返事をすると、ちょうどその声は伊坂の返事とかぶって、篠原は愉快そうに「君たちは仲がいいね」と笑った。
ともだちにシェアしよう!

