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第17話 気まずい会合

「うん、とてもよくまとまっているじゃないか。よくここまで短期間に修正できたね!」 そう言って、篠原は嬉しそうに笑った。 佐野はいつもより覇気のない声で「ありがとうございます」と言った。目がしょぼしょぼしているせいで、笑顔にも力が入らない。 昨晩は伊坂との一件があったせいで、ほぼ一睡もできていないのだ。 それなのに、伊坂と仲良く並んで篠原のレビューを受けるなんて──間が悪いにもほどがある。 篠原のところについてからというものの、伊坂とは一度も目を合わせていない。 目どころか、合わせる顔がないのだ。 伊坂はいつものように淡々と礼を述べ、「他にご指摘はありますか?」と篠原に問いかけた。 「大丈夫、ないよ。あとは当日の喋りにかかっているけど、まあ君たちなら大丈夫だろう。このスライドは、ベースは佐野くんが作ったのかな?」 「あ、はい。俺が作りました」 「やっぱりなあ。伊坂くんの元のスライドは補足スライドに回したのか」 篠原は、本当にいい上司みたいだ。自分の部下の作ったスライドのことを覚えていてくれるなんて。 「はい。あれはあれでクオリティ高いし……もったいなかったので」 佐野の言葉に篠原は含み笑いをした。 「あれはあれで、ね」 「あ、いや、別にディスっているわけじゃなくて……!」 焦って言い訳をしようとすると、篠原がおかしそうに笑った。 「いやいや、いいんだよ。実際、伊坂くんの資料は細かすぎるから。伊坂くん、いい勉強になっただろう? 君たち二人はなかなかいいコンビになると思っていたんだよ」 「いいコンビ……ですか」 伊坂が低い声でつぶやく。その声は不服げに聞こえた。 佐野は思わず俯いた。伊坂に顔を見られたくない。 さぞ、自分は情けない顔をしているに違いない。 伊坂とはいいコンビになれたと思っていたのは自分も同じだった。 伊坂のできないことを佐野は得意だったし、佐野の知らないことに伊坂はとても詳しかった。 お互いの得意分野が違うからこそ、尊敬しあえる関係になれると思っていた。遠い存在だと思っていた、伊坂に近づけたと思っていたのに。 けれど、伊坂は今はそんなことは思っていないに違いない。 昨日の冷たい視線を思い出す。 便利屋なんて、くだらない活動をしていた自分のことを、伊坂がみとめてくれるわけはないのだから。 佐野は顔を上げて、「ありがとうございます」と返事をすると、ちょうどその声は伊坂の返事とかぶって、篠原は愉快そうに「君たちは仲がいいね」と笑った。

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