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3. ADOLESCENT/共犯(1)

「ねえ」 「……何」  机に突っ伏したまま、赤毛の少年が呻く。 「シュウマイ食べる?」 「……」  指先が疼く。  イオリが高校に入学して一ヶ月。友達のグループも、とっくに出来上がっていた。そこから飛び出して、今日初めて話し掛けた。 「いらねえ……」  少年は動かない。  イオリは椅子を引き、横向きに腰掛ける。机の隅に、自分の弁当箱を置いた。 「三つあるんだよね」 「いらね――」  言い切る前に、  ムニッ。  顔を上げた少年の口に、無理矢理シュウマイを押し付けた。 「へへ」 「…………へへ、じゃねえよ」 「口つけたんだから、食べるよね?」  渋々、少年は口を開けた。一口では食べきれない程、シュウマイが大きい。眉間に皺を寄せながら、頬を動かす姿は、小学校で飼っていたハムスターに似ている気がした。 「……デケえんだけど」 「うん。マ……母さんが作ったから」  ……決め所だったのに、外した。  しかし少年は、イオリの言い間違いに何も言わない。  自然と頬が緩んだ。  村瀬朝志は、たぶん、良いヤツだ。 「今日は、コロッケパン食べないの?」  本題に入る。  昼休み。他のクラスメートはまだ昼食の真っ只中。彼だけが、飲まず食わずのまま、隅で寝ていた。 「……コロッケパン好きなの?」 「いや……安いから」 「売り切れてた?」  囓ったシュウマイ(大)を指先に摘まみながら、村瀬はイオリを睨む。 「財布、忘れた」 「マジで? え、ちょっと待って」  イオリは口をモゴモゴ動かしながら立ち上がり、自分の席へ戻った。カバンに手を突っ込み、薄い小物入れを取り出す。  村瀬の前に、差し出した。 「千円あれば、足りる?」 「……シュウマイ食った」  ――訂正。  村瀬朝志は良いヤツだけど、多分、頑固だ。  しかし、ここまで格好つけたのだから、イオリも譲る気は無い。  あ、と小さく声を上げた。 「お金貸すんじゃなくて、財布貸すだけ」 「は?」  袖から覗く村瀬の腕は、骨張って肉が少ない。  腹が減るのは、誰だって、辛い。 「だからさ、村瀬君」  鮮やかな、濃い黄色をしたカボチャの煮物を箸で掴む。村瀬の目の前で、口を大きく開けて食べた。 「お金忘れたんじゃなくって、財布忘れたんでしょ」  ツヤツヤの白米を多めに掬って、頬張る。 「いくら入れてあるか、ちょっと憶えてないし」  村瀬の目が、呆れた、と言うように細くなる。  けれどイオリは聞いた。  彼の喉が、ゴクリと鳴るのを。 「……明日返す」  椅子の脚が、床を引っ掻いた。  小物入れを手に、村瀬は立ち上がる。 「うん。明日ね」  次の日、村瀬は昼休みになった直後に教室を飛び出し――。  コロッケパンと小物入れを手に、イオリの所へ戻ってきた。

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