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4.BOXES/隣人(3)
カエル型の水鉄砲。
それを握りしめ、イオリは小さなビニルプールで遊んでいた。
庭の芝は青々としていて、太陽が朝から輝いていた。
夏休み。家族でプールを持参して、祖母の家に遊びに行った。母が見守る中、まだ幼かったイオリは裸に水遊び用パンツを穿き、遊んでいた。
「マーマー」
「どうしたの、いーちゃん」
ぴゅうっとカエルの口から水を吐かせながら、イオリは首を傾げた。
「どうしてぼくには、おちんちんがあるの」
その時、母がどんな顔をしていたかは、記憶にない。
「えー? いーちゃんが男の子だからよ」
でも記憶にない、ということは、きっと、普通に笑っていたんだろう。
「おとこだと、おちんちんがあるの?」
「そうだよー。パパも男の人だから、おちんちんがあるでしょ」
「うん。でも、ぼくほんとうは、おちんちんないんだよ!」
「いーちゃんは男の子でしょ?」
「うん!」
元気よく頷いて、カエルの水鉄砲を手放した。
「でも、なんでぼくには、おちんちんがあるんだろう……へんなの」
水遊びパンツの腰ゴムを引っ張り、イオリは自分の腹を不思議そうに見つめた。視線の先には、ちいさな子供の性器がある。
不意に、ふわりと柔らかなタオルが、頭に被せられた。母が、タオルごとイオリの頭をわしゃわしゃと拭く。
「変じゃないよ。どうしたの。怖い夢でも見た?」
「ううん。みてなーい」
タオルを取って、イオリはニコニコ笑った。
母の温かい大きな手が、頬を包む。タオルと同じ匂いがした。
「……大人になったら、きっとわかるよ」
「そっかー」
大人になったら。
車を運転したり、お酒をのめたり――。
「プールおしまいにする?」
「もうちょっと!」
ママ見て! と握り締めたカエル水鉄砲を得意げに見せた。そして再びちゃぷちゃぷと水遊びに熱中した。
あの水鉄砲は、もう捨てた。
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