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6. ICONOCLAST/廃棄(4)

 性器よりもさらに奥に、触れる。  ……何してる。  女の狂った叫び声と、弦が擦れる音。  足をギュッと閉じたまま、違う場所をぐりぐり押し上げる。 「ふっ、――ン」  骨盤が痺れて、太腿がビクッと強張った。  布越しの硬い太股。  熱。  煙草と血と汗のにおい。  筋張った、皮の厚い手。  かさついた唇。  伸びかけの髭。 「ぁ……んっ」  薄く目を開ける。  いつの間にか舌の上に、薄い塩気。  指を咥えていた。  足りない。  もっと、太いの――。  腰がビクッと跳ねる。 「ッ――!」  ……やめろ。  目を瞑った。  指先の力が抜ける。  だけど、身体の奥がもどかしい。 「はぁ……ぁ」  自分じゃない、誰か。  あの腕に腰を掴まれて、硬いものを捻じ込まれる、顔のない誰か。  また指が、そこを押す。 「ふ、ぅ――」  走る甘い痺れに、唇が震える。  向こうにムサシがいるのに。  下着の中が張る。  触りたくない。  シャツに胸が擦れて、肩が跳ねる。  誰かは叫ぶ。 『気持ちいいです』  誰かは鳴く。 『もっと』  きゅっと尻に力が籠もる。  指が止まらない。  何もないところを、ぐりぐり押す。  なのに、違うところがヒクつく。 「ん、く」  つま先に力が入って、反り返る。  指を噛みながら、背筋がゾクゾク震えて、イオリは――。  誰も、いない。  口の中に、血の味がする。  唾液で薄めて、飲み込んだ。  指が、痛い。  壁際で、膝を抱えて蹲る。快楽の余韻が腰の辺りに重く纏わり付いている。だけど下着の中は、汚れていない。  床に、イヤホンが転がっていた。  手をスマートフォンへ伸ばし、音楽を止める。  ……作業?  ちがう、こんなの。  目元が熱を持って、涙が溢れた。  胸が潰れそうだ。  いっそ心臓ごと……。  ドアノブが回る音がした。  ビクッと肩が強張る。  人の影が、床に伸びた。  真壁がムサシの肩を支えて、立っていた。 「は……は……」 「よし、そこで寝とけ」 「……ッス、若」  膝を抱え直し、身体が縮こまる。 「……イオ……リ」  見上げると、ムサシの額に汗。顔は青白い。  目が合うと、一瞬ムサシの目元が柔らかくなった。  だけど、また、眉間に皺が寄る。 「泣いて、る。ど、した」 「ソイツのことより、今は寝てろ。馬鹿か」  息が詰まった。 「手前は、何時までもベソ掻いてんじゃねぇ」 「わ、か」  ベッドに寝かされるムサシの視線が、イオリに残される。 「何度も言わせんな、寝ろムサシ」  ムサシの息遣い。真壁が舌打ちをした。 「さて……」  真壁は、笑っていた。イオリもムサシも見ていない。 「なんかあったら、連絡よこせ」  肩越しの目線に、見下ろされた。 「……はい……」 「良い返事だ」  真壁が部屋を出て、二人は残された。

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