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6. ICONOCLAST/廃棄(5) ※暴力有り

 ドアノブに手を掛け、大森は動きを止めた。  TKWの事務所とは別の、白い建物。地下への階段を下りきった所に、黒い扉と監視カメラがあった。  後ろから、硬い足音が響く。  一歩ずつ、地下へおりていく。  大森は、ドアノブから手を離し、振り返った。  階段の中程で、汚れたシャツのまま、真壁が煙草を咥えていた。  はぁ、と溜め息が口から零れた。 「まだ碌な事ぁ吐いてねえぞ、奴は」 「そうか」 「仕事はしてる。……入るか、若」 「――いや、俺はここでいい。マッサン」  階段を下りきった真壁が、ドアに背を預けた。 「そうかい」 「あの馬鹿には、そっちの方が効く」  大森がドアを開くと、途端に怒声が押し寄せた。 「テメェ誰の差し金だオラァ」 「ケツ売ってるカマホモがよぉ‼」 「違います……ちがいます、ボク…ボク」  男が、バットを振り上げた。 「やめろや」  途端に、男達が動きを止めた。 「……マッサン」  床に、薄汚れたピンクの襤褸を着た青年が倒れていた。 「まかべさん……まかべさん、まかべさん……」 「ずっとこんな感じッすね」  赤黒い汚れが床に点々と散らばっている。 「真壁さんに助けてもらっといて、何なんだテメエは」 「はい……そうです、バカな親が……お金、マカベさん」  青年の返答は辛うじて意思の通じる、半ば譫言だった。 「真壁ならすぐそこに来てんぞ」  大森がそう告げた途端、ガバッと青年が身を起こした。 「真壁さん!」 「テメェ‼」 「勝手に動くんじゃねえクソがァ!」  二郎が真っ先に青年にのし掛かる。  ぐひゃっ、と間の抜けた声と共に、青年が潰された。ドアの方へ伸びる指が、赤紫色に腫れ上がっている。  手が縋る先へ、大森は振り返る。  ドアは少しだけ開いていた。 「……出てこねえ、か」  独り言ち、大森は青年の前へと進み、膝を開いてしゃがみ込んだ。 「坊主。いや嬢ちゃんって呼んだ方が良いか」  顎をやり、二郎を見る。  二郎は青年の上から半身引き、青年の髪を掴んで引っ張った。 「あがっ」 「嬢ちゃん、ちっと話しようや」  少女のように飾っていた目が、虚ろに大森を見上げた。 「まかべさん……は」 「まぁまぁ、嬢ちゃんの話を聞かせてくれや。確かお前、うちの店で働いてたな。なぁんでお前……」 「まがべざん、」 「おぅ」  ゴスッ!  青年の鼻先を、拳の背が掠めた。 「俺も年食って、目がよく見えなくてよぉ。次は何処に当たるかわかんねぇ。若えってのはいいもんだ。なぁ、嬢ちゃん」 「――ッ う」 「じゃあ、俺の質問に答えてくれるか? 嬢ちゃん」  大森の拳から、血が滲んだ。

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