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エピローグ 並び立つ光

 王都広場は、人で埋め尽くされていた。  神殿崩壊から数週間。贄の真実は公にされた。王国を守ったのは、“暴走した穢れ”ではない。王子と聖騎士——その二人であることが。  鐘が鳴り、城門が静かに開かれる。長く幽閉されていた王子、アシュレイが姿を現した。  もう、閉じ込められてはいない。背筋は伸び、視線はまっすぐ民を見据えている。その視線を受けて、ざわめきが波のように広がり——歓声へと変わった。  その一歩後ろ——いや、一歩横に、レオンが並ぶ。白の装束は修復され、肩には聖騎士章。かつての“装置”ではない。自らの意志で立つ騎士の姿がそこにあった。 「王子殿下、前へ」  低く、そっと囁く。かつてと同じ言葉。だがそこにあるのは、命令ではなく支えだった。  アシュレイは、わずかに口元を緩める。 「レオン、共に行く」  ふたりで並びながら、階段を下りる。その瞬間、歓声が爆ぜた。 「王子殿下万歳!」 「聖騎士万歳!」  ふたりに光が降り注ぐ。かつて穢れと呼ばれた力は、今は静かに揺れている。それは恐れではない。守り抜いた証として。  父である王が壇上に立つ。厳かに、そしてはっきりと告げる。 「本日をもって、王子アシュレイの幽閉を解く」  歓声が揺れる。 「さらに聖騎士レオンハルトを、王子直属騎士に任ずる」  どよめきと拍手。それは単なる任命ではない。“共に立つこと”を、国が認めた瞬間だった。  アシュレイが、ほんのわずかに横を見る。レオンと視線が交わる。言葉はいらない。共に戦い、共に選び、共に勝ち取った場所。それが、すべてだった。  大歓声の中、式典が終わる。喧騒を離れた回廊。石の壁には、まだ熱が残っている。  レオンが、ゆっくりと息を吐いた。 「やっとだな」  アシュレイが頷く。 「ああ。長かった」  短い沈黙。でも重くはない。  レオンが、ゆっくりと手を差し出す。そこに人目はなかった。——そして、もう隠す必要もない。アシュレイは迷わずその手を取り、指を絡める。温かく、確かな重みを感じて笑みが浮かんだ。 「これからも」  レオンが言う。 「並んで戦う」 「ああ。結果を出す」  アシュレイが応じる。 「そして——」  ほんのわずかに視線を上げる。 「誰にも奪わせない」  距離が自然に縮まり、触れるだけのくちづけを交わす。誓いのように、静かに。  唇は優しく重なり、互いの体温が伝わる。戦いの疲れと安堵が混じり合い、甘く穏やかな余韻が残る。  レオンの手がアシュレイの腰を引き寄せ、身体を密着させる。二人の鼓動が重なり合う瞬間、すべてが完璧に感じられた。  ——もう奪われない。もう閉じ込められない。愛は勝ち取ったものであり、戦い、選び、掴み取ったもの——。  王都の空に、祝福の旗がはためく。白と黒が、同じ風に揺れていた。その色は対立ではない——並び立つ証だった。

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