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後日談 朝の均衡

 朝。差し込む光が、やけに白い。  アシュレイは、ゆっくりと目を開けた。身体が重い。だるいというより——昨夜の激しい抱擁を思い出して、熱が戻ってくるような感覚があった。 「……レオン?」  掠れた声で呼ぶ。隣にいたはずの気配は、もうない。 「起きていると思っていました」  扉の方から落ち着いた声で、レオンが入ってくる。いつも通りの聖騎士の装い。完璧に整った姿——まるで、何もなかったかのように。  アシュレイは、わずかに目を細める。 「レオン……随分と、余裕だな」 「職務ですから」  即答。だがその視線が一瞬だけ、ベッドの上をなぞる。乱れたシーツ。絡まったままの布。そしてアシュレイの首元、胸、腰……昨夜の激しい痕が、うっすらと残っている。  レオンの呼吸が、わずかに止まる。ほんの一瞬、それだけ。でも確かに、“昨夜”がそこに残っている。 「レオン……何か」  アシュレイがそれに気づき、わざと何気なく問う。 「問題でも?」 「いえ」  レオンは即座に視線を逸らすが、次に口を開いた声は、ほんの少しだけ低い。 「問題は、ありません……ただ――」  言葉を区切り、レオンはゆっくりとベッドに近づいた。完璧に整っていたはずの表情に、わずかな亀裂が入る。 「昨夜の痕が……まだ残っています」  指先が、アシュレイの首筋に触れる。赤く残った吸い痕を、親指でそっと撫でる。その仕草は優しいのに、目が熱を帯びていた。 「俺がつけた……痕です」  低く、独占欲の滲む声を聞いて、アシュレイの鼓動が跳ねる。 「見えるところに、たくさん残してしまいました」  レオンの指が、胸の痕、腰の指痕へと滑り落ちる。まるで自分の所有物を確認するように、丁寧に執拗に触れる。 「レオン……」 「消えないでほしい」  掠れた声で、レオンは囁いた。 「俺の痕が、あなたの肌に残っているのを見ると……落ち着く」  その言葉に、アシュレイの胸が熱くなる。  レオンの指がさらに大胆になり、昨夜の余韻が残る敏感な部分をそっと撫でる。 「……まだ、熱が残っています」  レオンの瞳が、欲情に濡れる。完璧な聖騎士の仮面の下に、抑えきれない執着が覗く。 「朝から……また、欲しくなります」  アシュレイは小さく笑いながら、レオンの胸に手を置いた。 「お前は、本当に……」 「ええ、変わりました」  レオンはアシュレイの手首を掴み、ゆっくりと引き寄せる。唇が耳元に近づき、熱い息を吹きかける。 「あなたを、独占したい。誰にも触れさせたくない。俺のものだと、はっきり刻みつけたい」  その言葉は甘く、重い執着に満ちていた。アシュレイの身体が、わずかに震える。昨夜の激しい抱擁を思い出し、腰の奥が疼く。 「……今は、時間がないだろう?」 「少しだけなら」  レオンは迷わずアシュレイの首筋に唇を押しつけ、強く吸う。新たな痕を刻むように。 「ん……っ」  アシュレイの声が甘く漏れる。レオンの手が夜着の裾を捲り上げ、素肌に直接触れる。指先が敏感な部分を刺激し、昨夜の余韻を呼び覚ます。 「レオン……朝から、激しいな」 「あなたが、こんなに綺麗だからです」  レオンの声は低く、熱を帯びている。指が巧みに動き、アシュレイの身体を再び溶かしていく。 「私の痕を、今日一日……感じていてください」  執着を孕んだ囁きと共に、レオンの唇が再びアシュレイの唇を奪う。公の場では完璧な距離を保つ聖騎士。  しかしこの部屋の中では、抑えきれない愛と独占欲を、素直にアシュレイにぶつける。アシュレイは、そんなレオンを受け入れながら静かに微笑んだ。  ——均衡は保たれている。その内側で甘く激しい熱は、まだ消えていない。

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