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第13話 食事
ウィンナーやサラダ、バゲットにスープを用意する。
魔獣には何をあげたらいいのか正直わからないが、ハムを用意して皿にのせ、食卓に置くとクロハは目を輝かせて椅子に腰かけ、その皿を見つめた。
すぐにがっつかないだけの理性はあるらしい。
涎を流しながら、クロハは俺とサーシャの顔を交互に見る。
その様子を苦笑して見つめ、サーシャは言った。
「食べていいよ、クロハ」
そうサーシャが言い終える前に、クロハはハムにかじりついた。
俺たちも食事を始め、バゲットをちぎる。
「あの、カミルさん」
「なんでしょうか」
「この子も旅に連れて行っていいですか? さすがにおいてくるわけにもいかないですし、子供のようだし。でも近くに親のようなものはいなかったですし……」
と言い、俺の様子を伺うようにじっと、俺を見つめてくる。
あの奈落にいるモンスターはそもそもあの奈落から出られないはずだ。モンスターたちは奈落の魔力に縛られているため、あそこから離れられない。
だからこの魔獣は奈落から生まれたモンスターではないだろう。
では何ものだろうか。それは正直興味深いことだった。
「どうみても犬ですし、喋る事さえ除けば誰も咎めはしないでしょう」
そう俺が答えると、サーシャはぱっと明るい顔になる。
「ありがとうございます。ちょっと捨ててくるには忍びなくて」
捨てる、という言葉に反応したのか、クロハがばっと顔を上げ不安げに耳を垂らした。
「サーシャ、クロハ、捨てる?」
しょんぼりとした様子で呟くクロハに、サーシャは必死にぶんぶんと首を横に振った。
「そんなことしないよ、クロハ! 大丈夫だから、一緒に俺といよう」
そう言って、サーシャはクロハの頭を撫でた。するとクロハは気持ちよさげに目を細める。
まるっきりペットだな。
俺は注意深くクロハを観察する。
その身体からは魔力を感じる。だけどそんなに強いものではない。
ほかは本当にただの黒い小犬だ。首輪をした方がいいかもしれない。
いったいどんな秘密が、この小犬にあるんだろうか。
いますぐ身体中を調べたいが、この子は怪我をしているのでぐっとこらえた。
一緒に旅をするのなら身体を調べる機会、いくらでもあるだろう。
クロハは与えたハムを食べきり、目を輝かせてこちらを見た。
「おかわり! もっと!」
と言う。
どうやら片言でしか言葉は喋れないらしい。
「何が食べられる?」
そう尋ねると、クロハは目を泳がせそして、カラになった皿を見つめたあと尻尾をばたばたとさせて言った。
「肉!」
「野菜は」
俺の言葉に、クロハは沈黙して何度も目を瞬かせる。
これはたぶん、食べられるけど好きじゃないのだろう。
でも、栄養を考えたら野菜も食べさせた方がいいんじゃないかと思う。
俺は立ち上がりクロハの皿を持ってキッチンへと向かい、それにゆでた野菜とハムをのせる。
これなら食べるだろうか。
そう思いつつ俺はその皿を持って食卓に戻りそして、クロハの前に皿を置いた。
するとちょっと不服そうに俺を顔を見る。
なんだか睨んでいるようにも見えるが……俺はそれを無視することにした。
そんな顔をされても知ったことではない。
「食べられるなら食べなさい」
そう、厳しい口調で言うと、クロハはしぶしぶ、と言った様子で皿に口を近づけた。
俺が、ノエルに襲われて二週間ほどが過ぎた。
看護師は見つかったし、家の片づけもすませた。
最初は家を売ることを考えたが、それは周りに止められてしまった。
「戻るところは必ずあった方がいいですよ」
そう、ニルスやアマンダ、サーシャまでにも言われ、俺は彼らの申し出を受け入れ家財道具の処分も最低限に済ませた。
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