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第17話 宿で

 道中、何事もなく俺たちは王都へとたどり着く。  王都は今までの町とは違い人の数ががぜん、多くなる。  そして王都は入るのに手続きがいる。 「……ソリトス皇国出身の戦士がなぜここに?」  サーシャの持つ通行証を見た警備兵の声が、冷たく響く。 「ここから何か月も離れている国の人間がこちらに何の用が?」 「奈落をめぐる旅をしております。モンスターが住まう奈落は、この大陸に五か所、あるでしょう。それで今回はブリューエ地方にある奈落を冒険しておりました」 「……変わったやつだな」  警戒の声で言い、警備兵は俺の身分証を確認する。 「医術師?」 「はい、医術に関する調査のために王都へ参りました。その護衛のため、彼についてきてもらっているのです」  そう俺が答えると、警備兵は目を細めた。  たぶんまだ、警戒をしてはいるのだろう。  警備兵が言うように、遠く離れた国の戦士が放浪しているといわれたら信じがたいだろう。軍事力などの調査のため、と疑われても仕方ない。 「……面倒は起こすなよ」  そう告げて、警備兵は俺たちに書類を返した。 「おい、つぎ!」  と言うので、俺たちは馬車を下り馬をひいて門をくぐった。 「まず拠点を決めましょう」  と言い、サーシャは馬をひいて人がたくさん行きかう大通りを進んで行った。  王都であるし、旅人も多いので宿屋はすぐに見つかった。  最初に泊まった宿よりもずっと大きいその宿は、「リーフィルの宿」という名前で、三階建てで部屋数も多そうだ。 「長期の滞在となるのですが」 「長期、とはどれくらいでしょうか?」  受付で問われ、俺とサーシャは顔を見合わせる。  どれくらい、だろうか。俺の調べ物にどれくらいかかるのかしょうじきわからない。 「一週間くらい、でしょうか」 「かしこまりました。前金はこちらになります。長期滞在の場合三日おきに一度ご精算していただく形になります」 「わかりました」  馬のことも頼み、俺たちは上階へと案内される。  長期滞在者は三階の部屋を利用することになっているらしい。  食事は宿にあるレストランを利用してもいいし、外に食べに行ってもいいそうだ。 「風呂は一階に大浴場がございます。洗濯はお受けしますが有料となりますのでよろしくお願いいたします」  と告げ、案内の者は去っていく。  部屋はかなり広い。  大き目なベッドがふたつ並び、大きな窓の向こうには、夕焼けに染まる王都の街並みがよく見えた。  荷物をおろし、俺は窓に近づく。  王都は久しぶりだ。ここには国内唯一の、医術師の学校がある。  とりあえずアルファとオメガの事を知るのなら学校に行くのがいいだろう。  あとは図書館か。  オメガバースの研究がどれほど進んでいるのか、田舎の町では入る情報が限られていたから全然わからない。  一週間で時間が足りるだろうか? 「一週間で、時間、足りますかね」  そんな問いかけが背中から聞こえてくる。 「俺は、勇者の事を調べるために町の人から話を聞こうと思います。以前にもここには立ち寄りましたが、早く貴方に会いたかったから全然聞き込み、してないんですよね」  と、笑いを含んだ声でサーシャが言った。  真実を告げればそんな調査、しなくて済むのに。  俺は心の中に生まれた彼への同情心を、ぐっと抑え込み、振り返らず頷き答えた。 「俺は、医術師の学校と図書館に行くつもりです。調べたいことがあるので。そこで情報を集めて、できれば他の国でも情報を集めたいと思っています」 「医術の事でしたよね。それに、俺も同行してよろしいですか?」  やはりそういう話になるか。  医術と治癒魔法は違うものだし、そもそも治癒魔法は伝説にちかい存在だ。  一般的にはそんなものはない、ということになっているはずだが……  研究としてはどうなっているのだろうか。  胸に痛みを感じつつ、俺は窓の外を見つめたまま答えた。 「わかりました」 「よろしくお願いします!」  そんな嬉しそうな声に胸を締め付けられ、俺はぎゅっと、拳を握った。

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