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第27話 捜し人

 その次の日。  俺たちは町で聞き込みを行った。 「この町でエルフを見かけたことはないですか?」 「エルフ? いや、南の森の中に集落があるけどここまでは来ないからなぁ」  と、露店の店主は首を傾げた。  そのほか、レストランやお店、井戸端会議中の女性たちにも声をかけたが、エルフの情報は得られなかった。 「エルフ……昔、王都のあたりでほら、勇者の一行の中にいた方が住んでいたという話は聞いたけどねぇ。エルフは人嫌いだから本当かどうか」  そう証言したのは、役所の女性だった。 「エルフを探すなら、南の森の手前にある町に行った方がいいんじゃないかしら。あの町ならエルフと交流があるし」  と教えてくれた。  やはり南の町に行くしかないらしい。  情報収集しつつ、俺は図書館にも足を運んだ。  オメガバースや月狼について何かわからないかと思ったが、何の情報も得られなかった。  やはりそう簡単に情報は得られないか。  夕方前に宿へと戻り、サーシャと情報交換を行った。 「やっぱり南に行けと言われますよねぇ」  と言い、サーシャは腕を組む。 「えぇ。でも目撃情報はないんですよね。南の町に本当にいるのかどうか」  そう言って、俺は肩をすくめる。  本当にこの国にいるのかもわからないしな。  リュート。  どんな外見なのかもわからないし、いったいどこに住んでいるのだろうか。  人間である俺からしたら、エルフなどきっと同じに見えるだろう。  明後日にはここを出て南の町を目指そう、という話になり、夜を迎える。 「あの、本当にいいんですか、同じ部屋で」  もう寝る準備を終えている、という状況で、サーシャが不安げな顔を見せてベッドの横で立ち尽くした。  そんな彼に、俺は笑いかけて言った。 「大丈夫ですよ。今は発情期じゃないですし。次はまだ先、なはずですから」  発情期は通常、三か月に一度だ。個人差はあるだろうが、一か月でくることはないと思う。そんな兆候もないし。  サーシャは不安な表情を崩さないまま、下へと視線を向けて首を振る。 「確かに匂いはあまりしないですけど」 「でしょう? だから同じ部屋で寝ましょう。お金は有限ですし。この先何があるかわからないから」  そう言って、俺は彼の腕にそっと触れて微笑みかけた。  すると、びくん、と身体を震わせて、サーシャは戸惑ったように視線を泳がせる。 「カミル……さん」 「それに、何かあった時のためにも同じ部屋の方が安心ですよ」  何か、がなんなのかはわからないが。  サーシャは、ふっと笑い、 「そうですね」  と頷く。 「貴方を守ると、約束しましたし」  そう、自分に言い聞かせるように呟いたサーシャと視線が絡む。  口を一瞬開いた後、サーシャは下を俯き、 「えーと、あの……おやすみなさい」  と言い、すっと離れていく。  なんだかサーシャの様子がおかしいような。  あの発情期の時のことをずっと気にしているのかな。  当たり前か。  同意があったとはいえ、本能のままに関係を持ってしまったのだから。  去る背中に、俺は声をかける。 「おやすみなさい、サーシャさん」 「はい、あの……ランプ、消しますね」  そう言って、サーシャは部屋を照らすランプの台へと近づいた。    次の朝。  朝食を終え、部屋でこれからのことを話していると扉を叩く音がした。  思わず警戒していると、サーシャが扉を開けて対応する。 「客? 俺たちに?」  という声が聞こえてくる。 「はい。あの、エルフを捜している一行がいると思うが会わせてほしいと言っていまして」  そんな声が聞こえてくる。  俺たちがエルフを捜していることは、宿の人たちに聞き込みをしたから知られている。 「じゃあ、下に行きますね」  と言い、サーシャがこちらを振り返った。 「俺たちに会いたいと。もしかしたら何かわかるかも」  期待に目を輝かせるサーシャ。  俺はクロハを抱きかかえ、サーシャのあとをついて部屋を出た。  この手の宿には必ず一階にレストランがついている。  そこに行くと、グレーのローブを着た青年がひとり、座っていた。  短い金色の髪に、緑色の瞳。  そして、僅かに香る匂い。  オメガだ。  サーシャを見ると、彼は不思議そうに首を傾げていた。  腕の中のクロハも、くんくん、と鼻をしきりにヒクヒクさせている。 「すみません、エルフを捜しているのは俺たちですが……」  サーシャが遠慮がちに声をかけると、彼は立ち上がり、値踏みするように俺たちを見つめた。 「俺はアベルと言います。なぜエルフを捜しているんですか?」  彼の声は警戒しているように聞こえた。  何者だろうか。俺たちに会いに来るということは、何か知っているのか? 「はい。俺はサーシャ=シュバイク。こちらはカミル=スピラ。彼は勇者と旅をしたハイナーの孫になります」  そうサーシャが言うと、アベルは俺の方をいぶかしげに見てくる。 「貴方が?」 「えぇ。俺の祖父は勇者と旅をしたハイナーです。今、祖父の足跡をたどる旅をしていて、それでエルフのリュートがこの国に滞在していると耳にしたのです」 「なるほど……そういうことか」  そう、アベルは呟き腕を組む。  この男は、リュートを知っているのか?  しばらくして、彼は先ほどよりは柔らかい顔で俺たちを見て言った。 「エルフを捜している者たちがいると耳にして、何かと思えばそういうことでしたか。それなら一緒に来てください」 「一緒に?」 「えぇ。リュート様の元に案内いたします」  まさかあちらから見つけに来るとは。  興奮したのか、サーシャは嬉しそうな声を上げた。 「準備してきます!」  と言い、彼は俺の方を振り返ると、 「行きましょう!」  と腕を掴んだ。  出かける準備をし、俺たちはレストランへと戻る。  俺たちを見たアベルは、クロハを一瞥し、 「それもですか?」  と、警戒した声で言う。 「えぇ。大事な子なので」  そうサーシャが答えると納得していない様子でアベルは頷き、 「わかりました……とりあえず、参りましょう。馬車を待たせていますので」  と告げ、俺たちに背中を向けた。

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