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第26話

 リュカの涙が止まったのはしばらく経ってからのことだった。  落ち着いたところで公園の近くの食堂で軽い食事をとり、ブランとミハイルとは「また近いうちに会おう」と最後は笑顔で別れた。  そしてリュカとジークは今、ブランが用意してくれた家の前にいる。 「えー、うわー……まだ残ってたんだな……」  ジークが驚いたように呟いた。  それは以前二人が一緒に住んでいた森の中の小さな家だった。  ノースフェルト基地があった場所は、建物はすべて取り壊されて茶色い土に覆われた更地になっている。だけど北側の森は手つかずで、その中に建てられたこの家もまた以前と変わりはないように見えた。  鍵を開けてドアを開く。二年以上も家を空けていているので中は汚れているのだろう……と覚悟をしていたが、部屋の中はよく掃除が行き届いていた。だが以前置いていた家具などは根こそぎ撤去されてしまったようだ。 「……何もないな」  部屋の中を見回しながら、渋い顔でジークが言う。 「家を用意してもらっただけでありがたいよ」 「確かに、それもそうだな」  家具はないが、竈には修理の手が入っていて、薪があればすぐにでも使える状態だった。 「明日は買い物にいかなくちゃいけないな。皿とか鍋とか……細かいものを買いに行こうか」 「うん。それよりも……リュカ」  台所の棚を開けて確認していると、ジークがぴたりと寄り添ってくる。密着して肩を抱かれ、思わずリュカは身体をぴくりと震わせた。 「ジーク……?」  くるりと半回転され、見つめ合う形になる。かぁっと頬が火照り、リュカはおろおろと視線を彷徨わせた。 「あれ? もしかしてリュカ照れてる?」  顔をのぞき込まれながら笑われ、図星を突かれたリュカはぐっと声を詰まらせた。  捕虜になっていた約二年ものあいだ、二人は同じ部屋で生活をしていた。だがお互いに怪我もしていたし監視の目もあったので、恋人同士のような甘い雰囲気になるのは難しかった。だから急に二人きりになって、どう振る舞っていいのかわからなくなってしまったのだ。 「リュカ……可愛いなあ。こっち向いて?」  大きな手に簡単に向かい合わせにされてしまう。リュカは唇を尖らせた。 「可愛いだなんて言わないでくれ。……俺は男なんだぞ」 「男とか女とか関係ないよ。それに可愛いもんは可愛いの」  睨みつけながら言うと、赤い目を煌めかせてジークが楽しそうに笑う。その笑顔を見ていたら、男の矜持も建前もすぐにどうでもよくなってしまった。  くすりと笑うとジークが目を細めてリュカの頬に触れた。出会ったころから変わらない、真摯でまっすぐな目が注がれる。 「リュカに触れていいか? ずっとそうしたかったんだ」  ストレートな言葉に思わずくすりと笑いが漏れ出る。 「もちろんだ。……どうぞ気が済むまで存分に触ってくれ」  このときを待ちわびていたのはリュカも一緒だ。  ジークが顔を傾け、何度もついばむようにキスを落としてくる。子どもの戯れのような軽いキスを交わし、手足を絡めるようにして昔リュカが寝室にしていた部屋に向かう。ドアを開けると、そこには大きめのベッドが置かれていた。 「テーブルはないけどベッドはあるのか……」  ブランらしいなと感心していると、ジークはリュカの身体を抱きしめベッドに押し倒した。 「ごめん……俺、今日は我慢できないかも……」  悩まし気に眉を寄せてジークが言う。その言葉と熱い視線に、背筋がぞくっとした。 「いいよ……おいで」  両腕を広げて愛しい恋人を誘うと、ジークは着ていたシャツを振るい落とすように脱ぎ、リュカに伸し掛かってきた。大きな身体に押しつぶされながら、唇を塞がれる。 「ん……ん……」  ジークはリュカの上唇を舐め、下唇を吸い、優しくリュカの唇をあやしながらも、そのあいまにリュカの服を剥ぎ取っていく。ゆったりと甘やかされるような口づけに、身体の芯が痺れるような充足感に満たされる。  だが着ているものをすべて脱がされると、心臓が鼓動が早くなり、まともにジークの顔を見ることができなくなってしまった。日差しはだいぶ翳ってきたものの、窓から差し込む夕日で部屋の中は明るい。頬が羞恥でじんわりと熱くなってくる。  手元にあった掛け布でさりげなく身体を隠そうとしていると、自分の服を脱いでいたジークに気づかれ、手首を抑えられた。 「隠さないで、リュカ」 「でも俺、すごく痩せたし……お前みたいに綺麗な身体をしていないから」  リュカの上に戻ってきたジークは相変わらず素晴らしい肉体をしている。対してリュカは長引く地下牢の生活で筋肉と肉が落ち、骨ばかりのみすぼらしい身体だ。  ジークはふっと笑うと、そっとリュカの頬を優しく撫でた。 「綺麗だよ。リュカは昔も今も、たまらなく綺麗だ……」  労わるように指が唇の形をなぞり、近づいてきた唇が重なる。初めは羽のように、そして徐々に重たくなっていく口づけを与えられ、リュカは自分から口を開けた。すぐにジークの大きな舌が入り込み、絡まり合う。  深い口づけを交わしながら、ジークの手が胸元に伸びてきて、つんと立った乳首を摘ままれた。 「……ん」  きゅっきゅっと指で捩るように摘ままれると下半身にじんわりとした熱が溜まっていく。背中を丸めたジークが、赤く色づき始めた粒に舌を伸ばした。押しつぶすように舐め上げられ、乳輪ごと唇に吸われる。 「……ぁ……あっ」  リュカは背中を逸らせて喘いだ。そうすると胸元をジークの唇に押し付けるような形になってしまう。嬉しそうに小さく笑ったジークが、最後に甘く歯を立てて口を離す。  さんざんなぶられて乳首は真っ赤になり、まるで実った小さな果実のようだ。 「ああ、こんなに赤くなって……それにこっちも」  ジークの視線がリュカの下半身へを向けられる。  そこはすでに赤く勃ちあがり、先走りで濡れそぼっている。ふっと性器に熱い息を吹きかけられ、リュカは甘い期待でぶるりと震えた。 「あっ、ジーク……」 「ふふ、ちょっと待ってね」  ジークはそう言うと、脱いだ服から小さな小瓶を取り出した。 「何だ、それは?」 「んー、これ? ブランから貰った」 「ブランから?」  なんでそんなものを……と分からなかったが、小瓶の液体を性器の上にまぶされ、リュカはようやく意味を悟った。 「あ……そ、そんな使い方……!」 とろりとした液体が性器に絡みつくように滑り落ちていく。  伸びてきたジークの手のひらにゆっくりと先端を撫でられ、リュカは熱い息を吐いた。  くちゅりくちゅりとあやすように撫でられ、敏感な先端の穴を指で穿られる。とぷりと先走りの粘液とオイルを混ぜるようにして、指で作った輪が茎を何度も撫で擦る。 「……あっ……ああ……!」  直接的な刺激にたまらない快感が押し寄せ、リュカは激しく身もだえた。  ジークは何度もオイルをつぎ足し、リュカの会陰から小ぶりの二つの実、そして窄みの周辺をたっぷりと濡らしていく。  そして粘度が高い液体を纏った指が、そっと窄みを撫でつぷりと身体の中に入ってきた。 「……ぁ……ぅ……」  途端に強張る太ももを、ジークがもう一本の手で労わるように撫でてくれる。 「きつい?」 「……大丈夫……だ」  リュカは細く長く息を吐きながら言った。  軟禁生活をしていたときは暗闇に隠れるようにベッドの中でキスを交わしたり、お互いの手を使って果てるくらいのことしか出来なかった。後孔に触れたのも数えるほどだが、指一本程度なら問題ない。  くちゅりと粘ついた水音が響き、ジークは何度も液体をつぎ足しながらも丁寧に身体を拓いてくれる。やがて太く長い指が一番感じるところに触れた。  びくん、と身体を揺らしたリュカの耳元で、ジークが呟く。 「ほら、ここがリュカの好きな所だ……」  ジークの甘い囁きに、リュカは顔を真っ赤にして首を振った。 「そんなこと……ぁ…………言うな……」  ジークの意地悪な指は身体の中の膨らんだ悦点を執拗にいたぶる。こりこりと指で揉みこまれると、びりびりとした快感が腰骨のあたりに溜まっていく。 「……あっ……あ……」  いつしかリュカは、足を大きく広げ、腰を浮かせて気持ちのいい場所にジークの指先を押し付けるようにしていた。  一度抜けたジークの指が今度は二本になって戻ってくる。柔らかく濡れた粘膜が、ジークの指にしゃぶりつくように痙攣しているのが自分でも分かった。 「あー……リュカ……すごい気持ちよさそう……」 「んっ……ん……」  胎の中で荒れ狂う快楽を放出させたくて自分の性器に指を伸ばすと、「だーめ」とジークに遮られた。 「なんで……いきたい……」 「一回出すと後で大変だから」 「あとで……?」  それはこれから挿れてくれるということだろうか。  そう思うと胎の中がきゅうと甘く疼いた。同時に想像してしまう。指でもこんなに感じるところを、ジークのもので擦られたら、どれほど気持ちがいいだろう……。 「……あぁ……ぁっ、ジーク……もう……挿れてくれ……っ」 「もう少し。怪我させたくないんだ」  情欲の籠った目でリュカの下半身を凝視し、息を荒くしながらもジークはそんなことを言う。  いまやリュカが後孔に含まされている指は三本だ。 「もう、いいから……」  これでは一人で達してしまう。リュカは身体を震わせながら、ジークに腰に手を伸ばした。 「さみ……しいんだ……早く……もっと近くに……来てくれ」  猛々しく反り返っているジークの性器に触れる。  そこは燃え滾るように熱く、たっぷりと濡れていた。先端を手のひらで覆っただけで、手の中の性器はびくびくと震え、先端の小さな穴からはとろりと先走りが溢れ出す。ジークが眉を寄せた。 「リュカ……! お願いだから煽らないでくれ……ちゃんと準備しないとリュカが辛いんだ」 「……ん」  こんな状態になっているのに、自分のために必死に耐えているジークが愛おしい。 「がまん……しなくていいから……早く……来て……」 「だから……煽るなって言ってんのに……っ」  ジークは泣きそうな顔で叫び、リュカの足を左右に大きく割り開いた。たっぷりと濡れたジークの性器の先端が、さんざん弄られてひくひくとわななく窄みにあてられる。  ぬるりと何度か擦り付けた後、ずっしりと重く熱い塊が入り込んでくる。   「あっ……!」  ゆっくりと押し込まれ、左右に大きく広げられた足が震える。  十分な準備がされたので裂けるような痛みはない。だがみっしりとした肉茎を体内に埋め込まれていくのは、息が止まってしまいそうなほどの圧迫感だった。 「……あ、あっ……う……」 「リュカ、息、して……」  ジークも苦しそうだ。リュカは必死に息を吸い、吐き出す。  じりじりとジークが侵入してくる、雁首を超えるとやや楽になった。リュカが息を吐きだしたタイミングで一気に奥まで突き入れられる。 「――っ――!」  身体の奥まで貫かれる衝撃に、リュカは目を見開いた。リュカの薄い粘膜は限界まで広げられ、それでもジークの性器をぎちぎちとたえ込んで離さない。 「……っ、すげえ、絡みついてくる……」  ジークが背中を震わせ、気持ちよさそうに息をつく。リュカは苦しい息の中で、ジークの顔を見あげた。 「きもち……い……?」 「ああ」  小さくジークが腰を揺らめかせた。最初は衝撃に強張っていた内壁も、あやすような刺激にだんだん馴染み、柔軟にジークの雄を受け入れている。 「……あっ、あ……あ」  小刻みだった動きは少しずつ大きく速くなっていく。  中ほどにある膨らみを嵩高い雁首で押しつぶされるとだめだった。信じられないほどの快感が腰骨から伝わってきて、勃ち上がったリュカの性器からはだらだらと白濁交じりの先走りが流れる。 「リュカ……リュカ……」  太ももを抑えるようにして、ジークが体重をかけてくる。交わりが深くなり、円を描くように奥を捏ねられるように抉られる。リュカは口を大きく開いて喘いだ。 「俺のだ、俺だけの、リュカだ、ぜんぶ……っ」  ジークがリュカの足を抱え込み、真上から叩きつけるように奥の粘膜を抉ってくる。 「あっ……ああっ……ああっ……」   高い声が止まらない。  ジークが顔を寄せ、口を塞いでくる。分厚く大きな舌が遠慮なく口腔を舐めまわし、リュカは必死にジークの舌を追いかけた。  上も下も深く繋がっている。その実感に、心がいっぱいになる。 「好きだ……っ、リュカ……」  口づけを解いたジークに言われ、その瞬間、胎の中に溜まっていた快感が頭のてっぺんまで一気に駆け上がった。 「あ、ああっ、だめだ、もう――」  リュカの勃ち上がった性器がどくんと脈打ち、白濁が弾ける。 「――あ――……っ」  ぴゅぴゅと精液が飛び出るのと同時に後孔が締まる。ジークがぐっと息を詰めた。 リュカの身体の中で、ジークの肉茎がおののき、身を捩るように震えている。 「……ぁ……ぅ……」  どくん、どくん、と精液が注ぎ込まれる感触に、リュカは唇を震わせた。  ――ジークが、中に……。  リュカはジークの身体に強く抱き着いた。ジークの逞しい腰に足を絡め、一滴も漏らさないとばかりに自分から浮かした腰を擦りつける。 「リュカ……っ」  先端を押し付けるようにして最後の一滴まで注ぎ終わると、ジークは大きく息を吐き、ゆっくりと性器を引き抜く。そして言った。 「リュカ……もう一回……してもいい?」 「え……?」  驚いてジークの下半身を見ると、さっきたっぷりと射精したはずなのに、まったく萎えていない。 「お前――」 「お願い、リュカ……もう一回」 「あ、待って」  大きな手が伸びてきて、ぐったりと力を抜いていたリュカはあっという間に身体を転がされ、四つん這いの格好を取らされた。すぐにぬるっと後孔に大きなものが潜り込んでくる。 「……ん――……っ」  リュカはシーツを掴んでその衝撃に耐えた。さっきの体勢よりも身体の奥深くまでジークが入ってきて、胎の奥がびりびりと痺れる。 「ジーク……っ、深い……だめ、だめだ……」  一突きだけで簡単に達しそうになる。それなのにジークはリュカの小ぶりな尻を撫でまわし、揉みしだいてくる。中と外から蕩けた内壁をもみくちゃにされ、リュカはあまりの快感に背中を大きく逸らした。 「いい? リュカ、気持ちいい?」  腰を激しく打ち付けながら、ジークが荒い息で聞いてくる。 「いい……いいっ……ジークの、気持ち、いい……っ」 「リュカ……っ」  ジークの腰つきが一層激しくなった。パンパンと肌同士がぶつかる音に、ぐちぐちと粘ついた厭らしい音が混じる。  太ももが痙攣し、上半身を支えていられなくなって崩れ落ちてしまう。ジークは細いリュカの腰を両手でつかみ、尻だけを高く上げながらも遠慮なく腰を打ち付けてくる。  ひと際奥を突かれた瞬間、ぎゅうと粘膜が痙攣した。 「あああ―――!」   リュカは身体を硬直させた。陰茎の先からぼたぼたと精液は噴き零れる。  それでもジークの動きは止まらない。ゴツゴツと亀頭で粘膜の奥を叩く。そのたびに何度も快感の波が押し寄せてきて、リュカの性器の先からはとろとろと液体が零れ続ける。 「あ、あ、あ……ああ、まってっ……いってる……いってるから……」 「リュカ……ごめんっ」  ひと際奥を叩かれるように突かれ、リュカの粘膜がはげしく痙攣した。 「あ――あ――……」  ジークの性器を含んだ粘膜が、しゃぶりあげるような動きをするのが自分でも分かった。耐え切れないようにジークが呻く。 「くっ……」 中に埋め込まれていたジークのものが大きく震え、二度目とは思えないほどの大量の精液をたっぷりと注ぎ込まれる。  はあはあと身体をふるわせながら射精を終えたジークは、リュカをベッドに仰向けに転がし、そして足を持ち上げた。そして注ぎ込んだ精液が漏れ出る後孔に、未だに勃ち上がり続ける性器を押しつける。  リュカは驚いて顔を上げた。 「え……? ジーク……?」 「ごめん……リュカ……収まらないよ。どうしよう……」  ジークが眉を下げてリュカの顔を覗き込んできた。まるで子供のような顔だ。  愛しさが募り、リュカは重い腕を持ち上げてジークの頭を撫でた。  身体は限界だったが、受け入れたいと思った。これほどまで欲してもらえるのが嬉しい。ジークがもっと欲しいのはリュカも同じだった。 「いいよ、ジーク……おれを、ぜんぶ……あげるから……」  ――ジークをもっとくれ。  リュカが掠れる声で言うと、ジークは泣きだしそうな顔をした。  「リュカ……っ」   身体を抱きしめられながら、一気に猛ったもので串刺しにされる。 「――ああっ……っ!」 「リュカ、好きだ――愛してる……!」  ジークは愛の言葉を惜しげもなく叫びながら、激しく腰を打ち付ける。  身体をがくがくと揺らされながら、リュカも必死に叫んだ。  ジーク、好き。  大好き。  愛してる。  ジークが応えるように、力の限りリュカを抱きしめてくれる。抱きしめ返した大きな身体が大きく震え、そして身体の一番奥に、熱い奔流が注ぎ込まれる。  その瞬間ふっと気が遠くなり――リュカは真っ白で温かな世界の中へと放り込まれた。

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