3 / 5
第3話
「待たせてすまない。コーディライ公爵家が主、エディセレン・コーディライだ」
恐縮さに勢いよく立ち上がる両親と、しかし落ち着き払って穏やかに立ち上がるマリアノワとリリアナ。ゆっくりと礼をすると「座ってくれ」との言葉をいただき、再び椅子に腰かける。
「堅苦しい話はあとにして、食事をしながら談笑しようではないか」
公爵が右手を挙げると、食事が運ばれてきた。視界までも楽しませてくれる美しい料理は、もちろん味も美味しい。
「あっ、」
隣で声がしてサッと横を見るとリリアナがちょうどフォークを落としてしまっていた。
マリアノワはそれを見て瞬時に代わりのフォークを差し出し、手を挙げて「失礼致しました」と代わりのものをいただく。
「……ありがとう、お兄様」
「大丈夫だ」
小さな声で泣きそうになりながら言う妹に、マリアノワはただ微笑むだけである。
彼女の粗相は全てこちらが受け入れればいいのだ。何一つ問題ない。
しかしこの時マリアノワもリリアナも、誰も気がついていなかった。
マリアノワが妹の犠牲となっていたことを、エディセレン公爵が見ていたことなんて。
そうして顔合わせという名の食事を終え、両親が緊張で汗を噴き出しながら公爵と話をしている。
「う、うちの娘と、婚姻いただけるなどとは、なんと、なんという光栄なこと──!」
父がそう言って、リリアナが恥ずかしげに微笑む。そんな姿を、公爵は黙って見ている。
「──リリアナ嬢」
「っ、は、はい!」
しかしある時、低いテノールの声が名前を呼んだ。
「貴女は私の代わりに『死ね』と言われ、その通りにする覚悟があるか」
「──え?」
ともだちにシェアしよう!

