7 / 10

第7話

 しばらくすると侍従が戻ってきて、エディからの「構わない」という言葉を受け取った。  場所は彼の執務室。いつの間にか帰っていった家族を寂しくも感じながら、時間となり、彼の執務室を訪ねる。  彼はデスクに腰掛けたまま、ジッと資料を見つめていた。  ローテーブルに用意されているお菓子には見向きもしていない。 「エディセレン公爵……エディ、様、」 「……エディで構わない。どうした」 「召し上がらないのですか。あの……甘味が好きだとお聞きして、それなら、共に召し上がれるかなと、思ったのですが」 「……誰から聞いた」 「……」 「まあいい。確かに俺は甘いものが好きだ。だが今は少し我慢している」  資料から顔を上げた彼は、困ったように眉間に皺を寄せている。 「体型に問題が出たら困る」 「え?」 「……俺は公爵ではあるが、国王陛下やこの国に何か問題があった時、剣を取らなければならない。だから……甘いものばかり食べて動きが鈍くなってはいけないのだ……」  マリアノワはその重責を感じ、この少しのお菓子ですら我慢しないといけない彼を、少し可哀想に思えた。  行儀が悪いかもしれないが、カップケーキを手に取ると、それを持って彼のすぐそばに寄る。  不思議そうに顔を上げた彼。  スカイブルーの瞳と視線が絡む。 「半分こ、しましょう?」 「……半分こ?」 「はい。それくらいなら、きっと問題ありませんよ」  そう言ってカップケーキを差し出せば、彼はおずおずと手を伸ばしてきて、すんの所で手を止めた。 「……一口食べたら、止まらない気がする」 「じゃあ私が半分に割っちゃいます」  そうして半分に割り、それを彼の口元まで持っていく。 「これって、不敬になりますか?」 「……夫夫なのだから、問題ない」  そういった彼は、マリアノワの手首を掴むと、その手にあるカップケーキに齧り付いた。  まさかの彼の行動にドキドキして、思わず一歩退く。  彼は満足そうに口元を緩めていた。  恐れられている公爵なのに、どこか子供のように見えて、マリアノワも思わずフッと表情を和らげたのだった。

ともだちにシェアしよう!